こらぼでほすと 留守番9
これ、運んでくれ、と、いつも通りの朝定食が、お盆に載せられる。ちゃんと、悟空の弁当も製作されていて、今は、冷ましているところらしい。
「なあ、キラは? 」
「ああ、あのさ、しばらく、キラと俺が刹那の代わりだからさ。キラが、刹那ごっこするんだって。」
黒子猫みたいに、ひっついていれば行動は制限できるし、世話をしていれば気が紛れるだろうと、悟空とキラは相談した。悟空は、昼間は学校だから、キラが、その間、『刹那ごっこ』をすることになった。ということで、昨晩、キラは泊まったのだ。ちなみにキラのダーリンのほうは、着替えやらのことがあるから、帰宅した。午後前には戻って来ることになっている。
なんだかよくわからない、と、ロックオンは首を傾げているが、スルーするつもりだ。いちいち、天然電波のやることを真剣に考えていたら疲れる。
「そっちはわかった。今、ここには、何人いるんだ? 」
「えーっと、キラと俺とさんぞーとハイネとロックオンさんで・・・五人だな。」
「アスランは? 」
「昨日は帰った。午後ぐらいに来るはずだ。」
「刹那ごっこはいいけどさ、俺、あそこの新婚カップルに挟まれるのは居た堪れないな。」
「あーまーキラのことだから三日坊主だと思う。」
「三日ならいいさ。三蔵さんは起きてるのか? 」
「うん、今、朝のお勤めしてるから、すぐに来る。洗濯機回してくるよ。」
「ああ、いいよ。後で、まとめて俺がやるから、おまえさんはメシ食いな。」
保護者がいなかった時と同じように、きちんとした食事が湯気を立てている。そんなに動いていいのかなあ、と、思いつつ、とりあえず食事に手を出す。しばらくして、三蔵が居間に入ってきて、「ごらぁー」 と、一喝したところをみると、まずかったらしい。
「おはようございます。なんですか? 朝っぱらから。」
「誰が動いていいって言った? おまえ、二日ほどはナマケモノモードのはずだろうが。」
「はいはい、悟空を送り出したら、一休みします。」
ちっっ、と、舌打ちしつつ、高僧様は卓袱台の前に腰を下ろす。すかさず、味噌汁とごはんが運ばれて、新聞を広げつつ、まず、朝のお茶なんか飲んでいたりする。お茶を飲み干してから、食事に手をつける。
「ママ、おまえも食え。」
「はい。今日の味噌汁は俺が作ったんですが、味はどうでしょう? 」
「お? ・・・・まあ、こんなもんだろ。」
「よかった。じゃあ、このぐらいの味付けで。」
「おう、それから納豆は毎日でいいぞ。朝から豪華すぎやしないか? 」
「けど、悟空は育ち盛りですからね、ちゃんと栄養は摂取させないと。」
「そうだな。」
・・・なんか、うちに親父とおかんがナチュラルに存在してんだけど・・・
しばらく、このメンバー構成になるわけだが、ロックオンが別荘のほうへ戻ることになって、一番困るのは三蔵ではないだろうか、と、密かに悟空は危惧した。
実際、その事態になって、なんでもやってくれるロックオンがいないことに慣れるのに難儀したのは、悟空の予想通りだった。
「引き篭もりでもあるまいし、たまには、うちに来いっっ。・・・何? ラボだと? そんなものより、うちのほうが大変なんだよ。・・・ああ? てめぇーが、悪い癖をつけたんじゃねぇーか。・・おう、わかりゃいいんだよ。」
というような、まったくロックオンには罪がないのに、高僧様の呼び出しに度々応じる羽目になってしまった。
で、まあ、悟空のほうも、おいしいものが食べられるから、ママが来てくれるのは大歓迎だったりはする。
作品名:こらぼでほすと 留守番9 作家名:篠義