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お姉様にはお見通し

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のどかな田園風景がどこまでも続く。春蒔き小麦を収穫する人影がぽつりぽつりと黄金色の波から顔を覗かせていた。
「おーい、お茶の時間だよぅ!パン焼いてきたよ!」
ばいーんという擬音とともにショートボブの巨乳が目の前を揺れる。にんまりとしつつ人影がのっそりと立ち上がった。
「ああ、もうそんな時間かよ」
ギルベルトは汗を拭きながら、空を見上げた。

「うめうめぇ!やっぱウク姉ちゃんは胸もいいけど料理もうめえな!」
「ギルちゃんもありがとねえ。うちのコンバイン壊れちゃって」
「去年もそんなこといってたじゃねーか!いつ直るんだ?」
「うーん、お金ないしねえ」
「…後で俺様が見てやるよ」
「うわあ、本当?ありがとねえ、ギルちゃんはほんとうに優しい子だよねえ。
パンもう1個いる?」
「食う」
俺は愛する家族と引き離され、現在、北の大男の管轄にある。美しい街も奇妙な建物と銅像のせいで本来の色を失った。俺様の国はもう俺様のものじゃない。
はーっと抜けるような秋の空を眺めつつ、俺は一息ついた。

「ほんとうにありがとうね、ギルちゃん…」
彼女は改めてという風にこちらを向いた。
「ふあ?何だ」
「うん…イヴァンちゃんのこと」
「イヴァンがどうかしたのか?」
「ギルちゃんがこっち来てから、なんだか楽しそう。この前、会った時にね、笑ったの」
そういうお前も嬉しそうだな。胸がゆれるゆれる。俺様役得。そんなことは顔にはださねえけど。
「あいつ、いつもにこにこしてるぜ」
「表面はね、笑ってるけど本当はたぶん違うから」
「…やっぱウクライナもあいつの姉なんだな」
「迷惑ばっかりかける姉だけどね」
「迷惑なのは貴様の方だ、ギルベルト!」
突然ぬっと背後から現れたのは、氷のような美貌を持つあいつの妹だった。
「うわあああ!べ、ベラちゃんかよ…超びびったぜ!!!」
「なんだ、ベラちゃん、どうしたのお?あ、手伝いにきてくれたの?ありがとねえ」
「違う、姉さん。私はこの糞野郎に話がある」
その目がぎらりと光る。この目を同僚のあいつは「ベラちゃんの瞳は北極星のように美しい」とうっとりと語るけれど、俺様は絶対認めない。
「くそって…」
「いい加減に兄さんから離れて、ここから出ていけ。兄さんは私のものだ」
絶対零度の雰囲気が漂う。下手なことを言うと隠しナイフが飛び出してきそうだ。ここは慎重に刺激せずに朗らかに。
「相変わらずだな、ベラちゃん。っていうかさ、俺出て行きたいのはやまやまなんだけど、俺の一部はあいつのもんだし」
「お前の一部が兄さんの一部、兄さんの一部、兄さんの…」
ぶつぶつと在らぬ方を見ながらつぶやき始める。
「おーい、ベラちゃん?大丈夫?」
「だいたい貴様、モスクワに来たら必ず兄さん家に泊まって何をしている?」
「だって泊まれっていってきかねーし、衛星国の弱いところだろ。命令には忠実にな」
とりあえず、食いかけのパンは食べてしまおう。水筒の水を喉に流し込む。
「夜な夜な兄さんの部屋で何をしている?」
吹いた。盛大に吹いた。汚いとか言わないでくれ、不可抗力だ。
ウクライナは微笑んでいる・・・。
「っていうか、おまっ何でそんなこと知ってんだ!あいつの家には立ち入り禁止食らってるだろ!」
「五月蝿い!!!黙って聞かれたことだけ答えろ!」
目が血走っている。怖い。元軍事国家だって怖いものは怖い。女の恐ろしさはフリッツ親父とともに痛いほど味わってるからな!
「…ただ仕事手伝わされたり、煙草や酒飲んだりしてだべってるだけだぜ?」
「本当か?」
近い、顔が近い。
「まあ、飲み過ぎてそのまま寝ちまうこともあるけどな。こっちの酒は 酔いがまわるのがはやいぜ!あー、ビールを浴びるほど飲みてえ!!」
「本当だな?」
「マジだって!親父に誓って嘘はついてねえぜ!」
そういうと、ようやくベラルーシは顔を離した。ふっと隣のウクライナに告げる。
「わかった。邪魔してごめんなさい、姉さん」
「あらあ、もう帰るのお?」
この姉ちゃんのゆとり具合が俺にはわからねぇ。さすが姉。
「これ以上居たら、姉さんに手伝いを頼まれそうだから」
さらりと乱れた長い髪を撫で付けると、踵を返した。背後から姉が声をかける。
「よくわかったわねえ、ベラちゃん?じゃあまたね!」
ぶんぶんと腕を振るうと同時にばいーんという不思議な音が響いた。
豊満な胸も揺れるのだ。


「うふふ、嘘はいわないものねギルちゃんは?」
「何だよ、その顔」
まさにによによした顔で、ウクライナはパンの入った籠を差し出した。
「いいのいいの、さあ、残りも持って行って?」
「こんなに一人で食えねえよ」
「一人じゃないわ、二人分よ?ギルちゃん」

作品名:お姉様にはお見通し 作家名:ゆう