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THW小説⑤ ~全て遠き理想郷~

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コンコン
今度は,大人しめのノックが聞こえた。
「はい」
「碧風さん,私です。入ってもよろしいですか?」
ジンさんだ。
「どうぞ」
「失礼します」
ガチャ
ジンさんは,トレイにマグカップを二つのせている。
「碧風さん,コーヒー持ってきましたよ。ミルクたっぷり砂糖あまあまの。どーぞ。」
「ジンさんwww 俺,怪我人なんだけどww」
「あれ,碧風さんならあのぐらいなんでもないですよね?」
にっこりとほほ笑むジンさん。
「あ・・そうですよねwいただきますw」
もしかしたら,ジンさんも怒っているのかもしれない。
・・・なんだか怖いなぁ。
そう思いながら,チラチラと澄ました顔でコーヒーをすすっているジンさんをチラ見する。
「あぢっ!!」
・・・俺,猫舌なのに,この熱いコーヒー。
確定だ。
ジンさんは怒っている。
「あれ?すいません,熱かったですか?」
ジンさんがニコニコと微笑みながら,吹き出したコーヒーをタオルで拭いてくれる。
・・・読めない。
この青年が全く。
「あの〜・・・ジンさん。怒ってますか?」
「ええ。」
やけに,あっさりと白状した。
「わかりましたよ,すいませんでした。」
一応,ペコリと頭を下げる。
「・・・碧風さん。わかっているなら,ちゃんと言葉で反省してください。どこが悪かったですか?」
まるで,子どもを叱る先生のようだ。
「え・・っと,命令違反?」
自信がなくて,疑問形になる。
「・・・違いますよ。」
「え〜?」
うーんうーんと首をひねる俺。
それを見て,ジンさんは苦笑する。
「聞きましたよ,隊長との話。」
「・・・流石ジンさんですね。」
「ええ,窓の外から。」
・・・ここは,二階なんですけど。
「多分,隊長も同じ理由で怒っていると思いますよ。はっきり口に出さなかったですけどね。」
「へ?」
なんだろう。
なんで怒ってるんだ?
俺が甘いからじゃないのか?
「碧風さん」
コトリ,とジンさんがマグカップを置き,俺の両手を,ジンさんの両手がつつむ。
「自分を,大切にしてください。」
ジンさんの瞳は,真摯そのものだ。
「貴方の理想は,とても立派です。隊長はああ言ってましたが,私は是非,それを実行していただきたい。」
ギュッと力をこめられる。
「ですが,貴方が死んでしまっては,元も子もないんですよ。おわかりですか?」
諭すような,ジンさんの顔。
「・・・うん,わかった。ありがとう。」

・・・それでも。
それでも,俺は,傷ついている者が居れば,前に飛び出るだろう。

そんな表情を読み取られ,ジンさんはフッと寂しげに苦笑し,立ち上がった。
「今日はゆっくりお休み下さい。今日,私,作戦行けませんでしたけど。次は,碧風さんチェックしてますからね。覚悟してくださいw」
「うわ〜,おっかねぇ。ジンさんのチェックきびしそ〜!」
わざと,おどけてみせる。
「・・・冗談言ってられるのも,今のうちですからね。私,本気だしたら,怖いんですよ?」
ぞっとするような顔でそんなことを言う。
「はいはい,自重します」
「・・・約束ですからね。」
パタン,と静かに扉を閉める。


“全て遠き理想郷”
それを成し遂げた歴史上の人物も,英雄も,誰も居ない。
だが,それを信念とすることは,間違っているのだろうか。
・・・俺はそうは思わない。

・・・絶対,やってやる。

俺は,強い決意とともに,まだジンさんの温もりが残る,両手を握りしめた。



                        2011.02.20