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マッチ売りの〇〇

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パチ、パチと断続的な軽快音でアーサーは目を覚ました。瞬間に視界に飛び込むオレンジ色の異世界。
うそだろ・・・!?
炎が、古くて薄い木板に触手を伸ばそうとしているのが見える。天井に、壁に、床。アーサーは飛び起きて、初めてシーツにも触手が及びつつあったことに気づき戦慄した。
「あ」
逃げようとした矢先に気付いた。兄と父は、どうした?
「くそっ」
2階を回り、兄達を。1階を回り、父を捜した。
そして、疑いようのない事実を突きつけられる。
―あぁ。俺は、欠片も愛してもらえていなかったんだな。
どこかで、何かが崩れた音がした。それは焼け落ちた柱か?それとも・・・
表玄関は既に炎で包まれていた。異常なまでの燃え方だった。おそらくはここが火元だろう。裏玄関の方は、幸運にも扉が残されていた。しかし、天は無情にもアーサーの目の前に燃え盛る天井をくり抜いて落としてみせた。
「はっ・・・ふざけんな」
我に還れば、口の中が煙の苦みで満ちていることに気が付いた。これだけの煙があれば一生物を食べなくても生きていけるかもしれないな、と馬鹿げた考えに自嘲した。空気で死ぬか、炎で死ぬか。神様、家族にも愛されなかった俺を少しでも憐れんでくれるのならばせめて―。
くらりと視界が揺れる。どうやら神には愛情を注いでもらえるらしい・・・。
「ダメ。神様なんか信じないで、アーサー」
倒れかけたアーサーの体を支えた何者かが、鋭い口調で言った。
「あ?なんでいるんだよ、てめぇが」
「神様は偽善者。現に、お前を手に入れるために手段を選ばなかった。あの時マッチの火は確かに消えてたのに!」
「いみ、分かんねぇよ・・・」
「いいよ、分かんなくて。それより、もうすぐ流れ星が迎えに来る。アーサー、俺と一緒に来て」
男は、目を閉じかけたアーサーを抱きよせた。
「俺のところにおいで。お前が望む形で永遠に愛することができるのは俺だけ。絶対に一人になんかさせないよ」
アーサーは、震える瞼を懸命に開いた。
仲が悪かったとしても、血のつながった家族に見殺しにされたという事実。心を抉った、残酷な現実。それだけが悲しくて切なくて、辛い。傷を埋めてくれるのならば、例えそれが藁でも―。
「泣かないで、アーサー。お前が後ろを向いているのが、俺には一番辛い」
「な、んで・・・みんな俺を捨て、たん、だ?」
途切れることなく涙が落ちて。
「大丈夫、もう二度と捨てられることはないよ」
「痛かった、辛、かった。・・・何もかもが、冷たくて・・・」
熱気に焼かれている体が、寒気に震えた。
男は、花の香りを纏った掌をアーサーの頬に置いた。アーサーの視線が、体温に動揺して彷徨う。
「・・・俺と一緒に来るね?アーサー」
こくり、と頷いた。



かわいいアーサー。
俺が一生、神様から守ってあげる。
作品名:マッチ売りの〇〇 作家名:したたらず