veil of darkness
「覇王・・?」
折れるほど強く抱きしめていた少女に話しかけたが、返事はなかった。はっとして顔を覗き込むと、白い肌は病的に青ざめ、目は閉じられていた。恐らくこの次元に二体も精霊を呼び出したことで気を失ってしまったのだろう。ヨハンは体を捻ってダーク・ガイアを見上げた。ガイアは覇王の命令しか聞かないのだろうか。
そんなことを考えていた時だ。不意にガイアの腕がぶれて、がくんと地面に引かれる力を再び感じた。覇王が意識を飛ばしたことでガイアが存在できなくなったのだ。また引力に従って落ち始める時、しかし今度はヨハンにも準備はできていた。
「レインボー・ドラゴン!!」
意識は驚くほどに鮮明だった。さっきまで、呼びかけてもあんなに返事がなかった虹の竜は、その純白の姿をマンションの棟の間にとぐろを巻くように現出させる。激しい風が吹き、窓ガラスが何枚も、それこそ薄氷のように割られていった。
(ここで没決定)
作品名:veil of darkness 作家名:つづら