こらぼでほすと 来襲2
店へ向かうにしては、普段着のふたりに、スメラギのほうは、おや? と、首を傾げる。だいたい、ホストクラブなんてものは、着飾ったイケメンが多数、いるものだと認識しているからだ。それに、寺の人間で、バイトでホストをしているという悟空にいたっては、どう見ても未成年だ。
「本当に、ホストクラブ?」
「ええ?」
「だって、あなたたち、普段着だけど? 」
「店で着替えるんだよ。心配しなくても、豪華なハンサムがいるって。なあ、悟空? 」
「まあ、見た目なら、どれもハンサムだよな。たぶん。」
性格的に、ということになると、いろいろ問題のあるのが目白押しだが、見た目だけなら豪華だと思う。だいたい自分の保護者だって黙っていれば、綺麗という形容詞をつけてもらえるが、喋るか酔うかすると、退かれるタイプだからだ。
「うーん、前に、出張ってくれた人たちは、そうだったわね。」
「俺と刹那の代わりをした人は、全員居るよ。」
タクシーを捉まえつつ、ロックオンが、そう説明する。見た目には、普通のホストクラブだが、中身は普通とは程遠いのが、吉祥富貴だ。一台が、目の前に停車すると、悟空には助手席へ乗るように誘導して、スメラギを後部座席の奥へ座るように勧める。
ここいらは、フェミニストらしい心配りだ。彼女のほうも、それに従って乗り込むと、行き先を悟空が告げて車は走り出した。
「なんで、サルがいやがらねぇーんだ?」
ちょっと遅れてきた三蔵が、事務室に現れて、八戒に尋ねる。いつもなら、すでに、来ていて、おやつだの軽食だのを、キラと一緒に食べている時間だ。
「ママニャンとお客をエスコートしてんだよ。あんた、会わなかったか? 」
「ママの関係者の女か? 」
お客だって容赦はない。三蔵は、コートを脱ぎつつ、悟浄の言う相手を口にした。
「それだ。ここで遊ぶんだとさ。それで、ママニャンが連れて来ることになってんだよ。そろそろ来ると思うぜ。」
「おい、ママが相手するのか? あいつ、飲んだら即、倒れるぞ?」
「飲ませませんよ。そんな危険極まりないこと、するわけがないでしょう。なんでもいから、三蔵、着替えてください。その格好で接客するつもりですか? 」
世間話に移行しそうなので、八戒が会話に入る。真っ白な袈裟は、三蔵の本職の正装だから、それで接客なんかやらない。さっさと着替えろ、という指示だ。うぜぇと八戒を一睨みして、三蔵も控え室に向かう。
そろそろ出迎えの準備をするか、と、悟浄が立ち上がる。今回の客は、八戒の出番はないだろうから、席を離れるのは自分だけだ。
「うぉーい、ナンバーワン。仕事すんぞー。」
控え室で、おやつを食べているキラを呼んで、店オモテに出る。ハイネと鷹は、すでに入り口付近に陣取っていて、準備万端の状態だ。
「僕も、ご指名ありなの? 悟浄さん。」
奥から、キラもすったかたぁーと走ってくる。指名がないので、とりあえず全員が並ぶことになる。そこから指名してもらって、後は、指名されたホストのほうで接客してもらうことになるのだが、今回は、それに鷹とハイネがなるように、エスコートをさせることにはなっている。だが、さすがに、ナンバーワンが並ばないのは、どうよ? と、悟浄はキラを呼んだのだ。
「たぶん、指名されないだろうけど、ナンバーワンは顔出ししとけ。」
「わかった。シン、レイ、ふたりも並んで。それから、アスランもっっ。あれ? 八戒さんは? 」
「うちのはいいだろ? 」
「ダメダメ、ナンバースリーまでは並ぼうよ。」
店のトップは、キラだが、その下は、三蔵と八戒が拮抗している。他のものは、出勤したりしなかったりだから、どうしてもトータルすると、この常勤のふたりに負けるのだ。
「ナンバーシックスまでいるんだから、いいって。」
トップスリー以下は、鷹とハイネ、悟浄が、うごうごとしている状態だ。虎は指名されることが少ないし、他はバイトだから、こういう陣容になる。
「えーーーーゴールドフィンガーのご指名があったら、どうするの? 」
「それなら呼べばいいさ。ほら、三蔵も来たから、これでいいって。」
派手なスーツに着替えた三蔵もやってくる。まあ、ここいらが居れば、店の体裁は整っている。わたわたしているうちに、扉がカランコロンと音をさせたので、全員が営業用の笑顔になる。
「やっほーお客さんだよー。」
先に入ってきたのは、悟空で、扉を開いて、お客様を迎え入れる。
「いらっしゃいませ、スメラギ様。ようこそ、吉祥富貴へ。お待ち申しておりました。」
鷹とハイネが、恭しくお辞儀して、スメラギの両側に並んで、手を差し出す。やあーん、すごーいっと、スメラギは、ご満悦だ。背後には、ロックオンがいて、ゆっくりとエスコートされるスメラギに苦笑して、扉を閉めた。
ホールまで、やってくると、「ご指名は? 」 と、鷹が尋ねる。
「そうね、あなたたちでいいわ。・・・・それから、ロックオン、私が帰る時は送りなさいよ。案内だけして消えるのは、ダメ。」
背後に控えているロックオンにスメラギは振り返って、人差し指を突きつける。
「はい、承知いたしました。どうぞ。ごゆっくりなさってください、お客様。」
もちろん、ロックオンも営業用の顔で、恭しくお辞儀する。そうなるだろうと思っていたから、気にしない。付き合いも、そこそこ長いので、そこいらのことは、ロックオンにもわかっている。騒いで陽気に飲んで、後は自分の担当になる。スメラギの言葉に、トダカは、ちょっと眉をぴくっと反応させたが、わずかのことで、ほとんどわからない。
「あら、そんなの最初から決定してるわ。うちのマイスターたちを牛耳ってるのは、実質、ロックオンだもの。」
鷹とハイネの言葉に、けらけらとスメラギは簡単に了承した。地上待機をする場合、どうあろうと刹那は、ここにやってくるのは、スメラギでなくても判ることだ。地上に降りたがらないはずのティエリアだって、ここには定期的にやってくるつもりらしいことは、先の二ヶ月にも及ぶ地上待機でも判明している。
「そう言ってもらえると助かるなあ。ママニャンさあ、子猫たちが心配で仕方ないんだよ。だから、たまにでいいから、こっちへ来させてやってくれよ? スメラギさん。」
「ええ、私が、どうこう言わなくても勝手に来ると思うから、そちらは大丈夫。それより、ハイネ、新しいのを用意してくれない? これ、もう終わりよ? 」
すでに、空になりつつあるワインの瓶を振って、スメラギがオーダーする。元から飲兵衛の彼女は、ワインの一本二本では酔うことはない。
「カクテルは、どう? スメラギさん。俺のお勧めを受けてくれるかな? 」
「強いのならオッケーよ、鷹さん。」
「じゃあ、神風を。」
鷹は、カウンターの向こうにいるトダカにサインする。もう酔わせてもいいだろうと、強いカクテルをリクエストした。シンとレイが、それに見合うおつまみを運んでくるし、キラが、ちょこっと挨拶程度に、やってきたりして、かなり派手に騒がしいことになっている。
「本当に、ホストクラブ?」
「ええ?」
「だって、あなたたち、普段着だけど? 」
「店で着替えるんだよ。心配しなくても、豪華なハンサムがいるって。なあ、悟空? 」
「まあ、見た目なら、どれもハンサムだよな。たぶん。」
性格的に、ということになると、いろいろ問題のあるのが目白押しだが、見た目だけなら豪華だと思う。だいたい自分の保護者だって黙っていれば、綺麗という形容詞をつけてもらえるが、喋るか酔うかすると、退かれるタイプだからだ。
「うーん、前に、出張ってくれた人たちは、そうだったわね。」
「俺と刹那の代わりをした人は、全員居るよ。」
タクシーを捉まえつつ、ロックオンが、そう説明する。見た目には、普通のホストクラブだが、中身は普通とは程遠いのが、吉祥富貴だ。一台が、目の前に停車すると、悟空には助手席へ乗るように誘導して、スメラギを後部座席の奥へ座るように勧める。
ここいらは、フェミニストらしい心配りだ。彼女のほうも、それに従って乗り込むと、行き先を悟空が告げて車は走り出した。
「なんで、サルがいやがらねぇーんだ?」
ちょっと遅れてきた三蔵が、事務室に現れて、八戒に尋ねる。いつもなら、すでに、来ていて、おやつだの軽食だのを、キラと一緒に食べている時間だ。
「ママニャンとお客をエスコートしてんだよ。あんた、会わなかったか? 」
「ママの関係者の女か? 」
お客だって容赦はない。三蔵は、コートを脱ぎつつ、悟浄の言う相手を口にした。
「それだ。ここで遊ぶんだとさ。それで、ママニャンが連れて来ることになってんだよ。そろそろ来ると思うぜ。」
「おい、ママが相手するのか? あいつ、飲んだら即、倒れるぞ?」
「飲ませませんよ。そんな危険極まりないこと、するわけがないでしょう。なんでもいから、三蔵、着替えてください。その格好で接客するつもりですか? 」
世間話に移行しそうなので、八戒が会話に入る。真っ白な袈裟は、三蔵の本職の正装だから、それで接客なんかやらない。さっさと着替えろ、という指示だ。うぜぇと八戒を一睨みして、三蔵も控え室に向かう。
そろそろ出迎えの準備をするか、と、悟浄が立ち上がる。今回の客は、八戒の出番はないだろうから、席を離れるのは自分だけだ。
「うぉーい、ナンバーワン。仕事すんぞー。」
控え室で、おやつを食べているキラを呼んで、店オモテに出る。ハイネと鷹は、すでに入り口付近に陣取っていて、準備万端の状態だ。
「僕も、ご指名ありなの? 悟浄さん。」
奥から、キラもすったかたぁーと走ってくる。指名がないので、とりあえず全員が並ぶことになる。そこから指名してもらって、後は、指名されたホストのほうで接客してもらうことになるのだが、今回は、それに鷹とハイネがなるように、エスコートをさせることにはなっている。だが、さすがに、ナンバーワンが並ばないのは、どうよ? と、悟浄はキラを呼んだのだ。
「たぶん、指名されないだろうけど、ナンバーワンは顔出ししとけ。」
「わかった。シン、レイ、ふたりも並んで。それから、アスランもっっ。あれ? 八戒さんは? 」
「うちのはいいだろ? 」
「ダメダメ、ナンバースリーまでは並ぼうよ。」
店のトップは、キラだが、その下は、三蔵と八戒が拮抗している。他のものは、出勤したりしなかったりだから、どうしてもトータルすると、この常勤のふたりに負けるのだ。
「ナンバーシックスまでいるんだから、いいって。」
トップスリー以下は、鷹とハイネ、悟浄が、うごうごとしている状態だ。虎は指名されることが少ないし、他はバイトだから、こういう陣容になる。
「えーーーーゴールドフィンガーのご指名があったら、どうするの? 」
「それなら呼べばいいさ。ほら、三蔵も来たから、これでいいって。」
派手なスーツに着替えた三蔵もやってくる。まあ、ここいらが居れば、店の体裁は整っている。わたわたしているうちに、扉がカランコロンと音をさせたので、全員が営業用の笑顔になる。
「やっほーお客さんだよー。」
先に入ってきたのは、悟空で、扉を開いて、お客様を迎え入れる。
「いらっしゃいませ、スメラギ様。ようこそ、吉祥富貴へ。お待ち申しておりました。」
鷹とハイネが、恭しくお辞儀して、スメラギの両側に並んで、手を差し出す。やあーん、すごーいっと、スメラギは、ご満悦だ。背後には、ロックオンがいて、ゆっくりとエスコートされるスメラギに苦笑して、扉を閉めた。
ホールまで、やってくると、「ご指名は? 」 と、鷹が尋ねる。
「そうね、あなたたちでいいわ。・・・・それから、ロックオン、私が帰る時は送りなさいよ。案内だけして消えるのは、ダメ。」
背後に控えているロックオンにスメラギは振り返って、人差し指を突きつける。
「はい、承知いたしました。どうぞ。ごゆっくりなさってください、お客様。」
もちろん、ロックオンも営業用の顔で、恭しくお辞儀する。そうなるだろうと思っていたから、気にしない。付き合いも、そこそこ長いので、そこいらのことは、ロックオンにもわかっている。騒いで陽気に飲んで、後は自分の担当になる。スメラギの言葉に、トダカは、ちょっと眉をぴくっと反応させたが、わずかのことで、ほとんどわからない。
「あら、そんなの最初から決定してるわ。うちのマイスターたちを牛耳ってるのは、実質、ロックオンだもの。」
鷹とハイネの言葉に、けらけらとスメラギは簡単に了承した。地上待機をする場合、どうあろうと刹那は、ここにやってくるのは、スメラギでなくても判ることだ。地上に降りたがらないはずのティエリアだって、ここには定期的にやってくるつもりらしいことは、先の二ヶ月にも及ぶ地上待機でも判明している。
「そう言ってもらえると助かるなあ。ママニャンさあ、子猫たちが心配で仕方ないんだよ。だから、たまにでいいから、こっちへ来させてやってくれよ? スメラギさん。」
「ええ、私が、どうこう言わなくても勝手に来ると思うから、そちらは大丈夫。それより、ハイネ、新しいのを用意してくれない? これ、もう終わりよ? 」
すでに、空になりつつあるワインの瓶を振って、スメラギがオーダーする。元から飲兵衛の彼女は、ワインの一本二本では酔うことはない。
「カクテルは、どう? スメラギさん。俺のお勧めを受けてくれるかな? 」
「強いのならオッケーよ、鷹さん。」
「じゃあ、神風を。」
鷹は、カウンターの向こうにいるトダカにサインする。もう酔わせてもいいだろうと、強いカクテルをリクエストした。シンとレイが、それに見合うおつまみを運んでくるし、キラが、ちょこっと挨拶程度に、やってきたりして、かなり派手に騒がしいことになっている。
作品名:こらぼでほすと 来襲2 作家名:篠義