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こらぼでほすと 来襲2

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 騒がしい店とは裏腹に、事務室のほうで、八戒とロックオンは経理の仕事を静かにしている。今のところ、それすらロックオンの仕事ではないのだが、送れ、と、スメラギに命じられたから時間潰しをしている。整理のついた領収書と請求書をホルダーに日付別に入れていくという単純作業だ。
「八戒さん、二日酔いの漢方薬って、すぐに出来るものですか? 」
「ええ、調合して冷凍しているので、それを煮出すだけですよ。必要なんですか? 」
「できれば、いただけると有り難いです。」
 じゃあ、すぐにやっておきましょうと厨房に赴く。それを飲むのは、スメラギなんだろうと思っていたが、戻ってきて、トダカが叱っているのを目にして、考えは改めた。
「飲んだら、どうなるかわかっているんだろ? 」
「・・はあ・・・でも、付き合うことにはなると思いますんで。」
「ウーロン茶で相手すればいい。」
「そうもいかないんですよ。」
「どうして、そう、自分から貧乏くじを引きたがるのかなあ、きみは。」
「いや、まあ、元々、俺が飲み相手でしたからね。以前は、同じくらいの酒量だったから問題はなかったし、こっちも酔ってると、あの人の言うことも耳から素通りだから落ち込まないし、それで。」
「今は、そうもいかないだろ? 」
「だから、八戒さんの漢方薬を貰っておこうと・・・」
「それは、即効じゃないんだ。」
「でも、効きますからね。一晩、聞けばミス・スメラギも気が紛れる。それでいいんじゃないですか? 一応、俺はビールで相手をするつもりです。」
「そういうのは、ここで晴らしてもらえばいいと思うんだが? 」
「いや、さすがに言えないことが多いですよ。」
 つまり、送るというのは、その愚痴に付き合うことも含まれているらしい。なるほど、と、八戒も苦笑する。さすがに、組織内のことは守秘義務があるから、ここでは愚痴れない。その部分を解消させるのが、ロックオンの役目であるらしい。とはいえ、飲んだら二日酔いで、ふらふらするのが判明しているので、トダカも叱っているのだろう。
「ロックオン、スメラギ様のお相手は、一日ですか? 」
 トダカとロックオンの間に入るように、八戒が口を挟む。
「まあ、今夜限りだと思います。」
 スメラギだって休暇で降りているのだから、愚痴ってばかりでは気は晴れない。たぶん、自分の行きたいところへ移動する。
「それなら、明日の朝に、うちの宿六を送迎に貸してあげますよ。それで、スメラギ様を宿泊しているホテルまで送り届ければよろしいでしょう。」
「いえ、勝手に帰ると思いますから。」
「ですが、どうせ、あなたのところへドクターを搬送することになるから、手間は一緒です。トダカさん、しばらく預かってくださいますよね? 」
「ああ、もちろんだ。」
 トダカと八戒の意見は同じであるから、ふたりして、そう同時に頷く。その様子に、判っていないロックオンは、はい? と、首を傾げている。
「午後前に、うちの宿六を寄越しますから、そのつもりでいてください。」
「はあ、いや、そういうことなら俺が送りますって、八戒さん。」
「送れるものなら送ってください。・・・・あのクスリで復活できる程度で済むといいですね? ロックオン。」
 大丈夫ですよ? と、笑って返事しているロックオンに、トダカと八戒は内心でため息をついていた。どう見繕っても、明日、ロックオンはダウンしている。男の意地で、スメラギを送り出すまでは、平気な顔ができるかもしれないが、そこが限界だ。しばらくは、トダカのところで養生すればいいだろう。寺では、鬼畜坊主がこき使うから、ゆっくりできない。トダカ家なら、うだうだしてトダカの話し相手をするぐらいだから、動くという程のことはないからだ。


 そろそろお帰りだぞ、と、ハイネが事務室に呼び出しに来た。八戒からは、いつぞやと同じエグイ色の液体が詰まったペットボトルを、それから、トダカに頼んで出してもらったスメラギが好きそうな酒の入った紙袋を手にして、ロックオンは立ち上がる。
 店の玄関で、陽気にはしゃいでいるスメラギを引き取った。だが、まだ、素面に近い状態だ。
「あら? 送迎係は着替えてないのね? 」
「そう硬いこと言いなさんな、ミス・スメラギ。その代わり、いい酒を仕入れておいたからさ。」
「うふふふふ・・・よくわかってるじゃないの。さあ、第二ラウンドっっ。」
 元気に陽気にスメラギは手を挙げて宣言している。はいはい、と、ロックオンは大人しく従う。武力介入前も、こんなだったから慣れた光景だったりする。
「また、いらしてくださいね? スメラギ様。」
 代表するように、キラが送り出して挨拶する。
「ええ、気に入ったから、地上に降りる時には、お邪魔するわ。ハイネ、フラガさん、また、よろしく。」
 ご贔屓に、と、ハイネが手を振り、鷹が、「次回は、ディープに酔わせるよ? 」 と、挨拶する。タクシーに、ふたりが乗り込んでしまうと、鷹が、「おいおい。」 と、ハイネとキラに声をかけた。
「あれ、まずいんじゃないか? ママが食われそうだぞ? 」
「別にいいんじゃないの? どっちも大人なんだし。」
「え? スメラギ様に、ママは食べられるの? ママなのに? 」
 天然電波の大明神様の意見というのは、電波だから気にしてはいけない。はいはい、キラにはわかんなくていいから、と、鷹が促して店に戻る。
「ああ、そういう意味の危険はないらしいぜ。どっちかというと、クラブのママと愚痴りたい客という感じだ。」
 一仕事終えた鷹とハイネがカウンターで飲んでいる悟浄と合流すると、悟浄のほうが口を開いた。
「なるほど、チーママお持ち帰りで、愚痴ってパターンか。・・・貧乏くじ健在だなあ、ママニャン。」
「しょうがないんじゃないか? CBは、年齢層の幅がない組織だから、聞き役も同年代なんてことになるんだろう。」
 やれやれ、と、トダカもため息を吐きつつ苦笑する。
「ママの性格からして、弱ってるのをおいしく頂くとかやりそうにもないしなあ。」
「それさ、毎日、顔を合わせる相手とやると気まずいだろ? 鷹さん。」
「そうか? 俺、マリューの弱ってる時を狙ったけどなあ。」
「・・・それを堂々と言えるのが、鷹さんだとは思う。というかさ、あんたら、その前からデキてたカップルなんだろ? その場合は、意味が違うだろ? 」
 明け透けな会話を展開していたら、背後からハリセンで、ハイネと鷹、悟浄が張り飛ばされる。
「てめぇーら、未成年の前でやるなっっ。」
 この店には、未成年がわんさかいるので、さすがに、これだけ明け透けだと夢見る未成年たちには毒だ。
「僕も、弱ってたけど、あれは、こういうものなの? アスラン。」
「え? うーん、どうかなあ。俺のもムウさんのと同じだと思うんだけど。」
 もちろん、客がいないのでキラとアスランも聞いているわけで、そんな会話になってくる。
「そういう方法って、やっぱ卑怯なんだ。」
「いや、悟空、そうじゃないんだ。弱ってるから元気づけるっていう感じでさ。」
「うん、まあ、よく眠れたよね? あれは。」
「ごらぁーーーっっ、キラっっ。もう喋るなっっ、おまえはっっ。」
作品名:こらぼでほすと 来襲2 作家名:篠義