こらぼでほすと 襲撃1
情報網の整備が完全ではない。つまり、探索が確実ではないという事実は、如何ともし
がたいものだ。だが、ロストして、すぐの今なら、どうにかなるという確信もある。協力
者に新しく名を連ねた相手は、世界中に完璧な情報網を持っている。それに依頼すれば・
・・・と、ティエリアは考えた。
けれど、相手には、それについてきっちりと拒絶された。
「もちろん、協力は惜しまないと申し上げました。けれど、私くしどもが協力するのは、
あなたがたの生命を脅かす場合にのみ有効ともお伝えしたはずです。」
「だから、今、アレルヤはっっ。」
「問題はないと申し上げておきましょう。・・・・彼は生きています。そうでないなら、
こちらから救助しております。」
「つまり、あなたは所在をご存知だということですか?」
相手は慌てていない。おそらく、ロストの瞬間から所在を追跡させているのだろう。そ
の情報だけでも渡して欲しいと頼んだが、これも拒絶された。
「所在は、あなた方でお探しください。」
「なぜ、情報の開示をしない? ラクス・クラインっっ」
「それは、あなた方、CBがするべきだと判断するからです。私たちは、あなた方の活動
については一切、援助はいたしません。あなた方の生命の危険にのみ対処する。アレルヤ
の所在は、もちろん把握しておりますが、私たちから申し上げることはしません。それを
探して奪還するのは、CBの活動です。・・・・・それから、この件に関して、くれぐれ
もロックオンに伝えることはなさいませんようにね、ティエリア。」
アレルヤをロストしたという情報は、そのうち、彼の耳にも届くだろう。今すぐ、ティ
エリアが泣きつくような真似をしたら、確実に、それを奪還しようとCBの活動に参加し
ようとするのは目に見えている。今の状態で、そんなことをさせるわけにはいかない。そ
れに、彼は、すでにCBから外れて、こちら側にいるのだ。
「しばらく接触させません。」
はっきりと歌姫は、そう宣言して、その通信を切った。ロックオンは、しばらく別荘か
ら避難させておこう、と、そちらの手配の通信を入れる。
怠け者であることが仕事であるロックオンは、別荘で、ラボの手伝いをしていた。とは
いっても、午後から夕方まで、管制ルームに詰めているぐらいのことだ。これといって離
発着がなければ、ぼんやり画面を眺めているだけという非常に暇な仕事である。
今日もいつものように、そこで新聞を読みながら、だらだらとしていたら、携帯端末が
鳴り出した。相手は、三蔵だ。
「はい、ロックオンです。」
『よおう、久しぶりだな、ママ。』
「この間まで、そちらにいたじゃないですか。何か?」
『おまえ、暇なんだろ?』
「ええ、まあ。」
『じゃあ、本堂の掃除を手伝ってくれ。・・・・そろそろ、大掃除しなきゃならねぇーん
だ。虎には借り出す許可は貰ってる。』
そういうことなら、問題はないんだろう。しばらく、別荘に引き篭もっていたから、気
晴らしにもなるので、ロックオンのほうも、「いいですよ。」 と、二つ返事で引き受け
た。刹那たちは、CBに戻っているから、世話をする必要もないし、あそこには悟空がい
るから、そういう意味でも楽しい。世話好き貧乏性なおかんとしては、何か世話してやれ
る者が居ることが、一番楽しいのだ。以前、三蔵が本山に仕事で戻った時にも、悟空の世
話をさせてもらったから慣れたものだ。掃除ぐらいなら、軽い運動だし、いい運動になる
な、とか考えていたりする。
じゃあ、頼んだぜ、と、携帯を切って、三蔵はタバコに火をつけた。その横手には、ト
ダカが並んでいる。
「これでよかったのか?」
「ええ、しばらく預かってください。ラボのほうに出入りされると困ることが発生した。
・・・・それに、彼は勘がいい。別荘にも置けない。」
トダカが唐突に、寺まで遠征してきて、そのように依頼した。別に三蔵としては、家事
能力抜群のロックオンが来てくれるというなら、逆に有難いことだから、こちらも二つ返
事で了承した。
「ママが邪魔か?」
「いや、子猫たちが泣きついてきそうだと、ラクス様が・・・・」
それだけで、三蔵もなんとなく事態は把握した。療養しているロックオンに泣きつかれ
たら、以前のように動くだろうことは、あの性格からも伺える。だが、そんなことをした
ら、また何ヶ月か寝込む事態になるだろう。日常生活を送る分には、問題はなくなったが
、以前のような活動が可能なまでの回復はしていないからだ。
で、まあ、あの親猫というのは、そういうことは、さらっと無視して動こうとする性格
なので、「体調はいいんだ。」 とかなんとか言って、子猫たちのフォローをするのは、
三蔵にも予想できる。
「ママに心配かけるなって脅せばいい。」
「脅すと、おそらく、刹那君が暴れそうだろ?」
トダカはおかしそうに肩を震わせている。一番甘えん坊な黒子猫は、親猫を隠されたら
、それを取り戻すべく暴れるだろう。あの黒子猫の機体だけは、組織で修理されて稼動で
きるというのも問題だったりする。
「子猫たちが、親猫に頼れないということを認識してくれれば、それからならバレてもい
いんだ。こちらから、あちらへの通信は、彼の認証コードではできないようにしてある。
」
「あの性格を直すクスリってぇーのは、ないもんか? トダカさん。」
「ないだろうねぇ。でも、あれが、彼のいいところでもあるんだよ。可愛いだろ? 」
トダカの言いように、三蔵は、ちょっと呆れて、それから苦笑する。三蔵と、あまり変
わらない年齢の親猫だが、どっか精神年齢が低いところがある。青いというか、思い込み
が激しいというか、自分がどうにかしなきゃと思うのだ。仲間が全員年下だから、一番年
上の自分が指揮を執らなければならないと、今でも思い込んでいる。もちろん、現役マイ
スターだった時は、それが正しい態度だったが、今は違う。リタイヤしてしまったのだか
ら、彼には指揮を執る権利もない。それはわかっていても、他のマイスターに泣きつかれ
たら、やってやろうと考えてしまう。それで、親猫の体調を崩すことが明白でも、それを
親猫は見て見ぬ振りするのだ。それが、トダカには可愛い態度に映るし、三蔵も、しょう
がねぇーと苦笑するところだ。
「まあ、いいさ。俺はママが来ると楽が出来るからな。」
「本当にこき使わないでくれよ? 掃除には、うちのものを遣るからね。」
「ああ、そこまで鬼じゃねぇ。」
秋に体調を崩してから、回復するまで三ヶ月近くかかった。それは三蔵も知っているか
ら、無理させるつもりはない。ようやく春になって日常生活に支障がないまでに回復した
ところだから、のんびりさせておくつもりだ。本堂の掃除も、それほど大事ではない。た
だ春になって大陸からの黄沙が飛んでくるから、それを拭くだけのことで大掃除というわ
けでもない。
「うちに呼び出しても、滞在してもらう用事がないからね。たまに、私の相手もして欲し
いから、途中で借り出すつもりだ。」
がたいものだ。だが、ロストして、すぐの今なら、どうにかなるという確信もある。協力
者に新しく名を連ねた相手は、世界中に完璧な情報網を持っている。それに依頼すれば・
・・・と、ティエリアは考えた。
けれど、相手には、それについてきっちりと拒絶された。
「もちろん、協力は惜しまないと申し上げました。けれど、私くしどもが協力するのは、
あなたがたの生命を脅かす場合にのみ有効ともお伝えしたはずです。」
「だから、今、アレルヤはっっ。」
「問題はないと申し上げておきましょう。・・・・彼は生きています。そうでないなら、
こちらから救助しております。」
「つまり、あなたは所在をご存知だということですか?」
相手は慌てていない。おそらく、ロストの瞬間から所在を追跡させているのだろう。そ
の情報だけでも渡して欲しいと頼んだが、これも拒絶された。
「所在は、あなた方でお探しください。」
「なぜ、情報の開示をしない? ラクス・クラインっっ」
「それは、あなた方、CBがするべきだと判断するからです。私たちは、あなた方の活動
については一切、援助はいたしません。あなた方の生命の危険にのみ対処する。アレルヤ
の所在は、もちろん把握しておりますが、私たちから申し上げることはしません。それを
探して奪還するのは、CBの活動です。・・・・・それから、この件に関して、くれぐれ
もロックオンに伝えることはなさいませんようにね、ティエリア。」
アレルヤをロストしたという情報は、そのうち、彼の耳にも届くだろう。今すぐ、ティ
エリアが泣きつくような真似をしたら、確実に、それを奪還しようとCBの活動に参加し
ようとするのは目に見えている。今の状態で、そんなことをさせるわけにはいかない。そ
れに、彼は、すでにCBから外れて、こちら側にいるのだ。
「しばらく接触させません。」
はっきりと歌姫は、そう宣言して、その通信を切った。ロックオンは、しばらく別荘か
ら避難させておこう、と、そちらの手配の通信を入れる。
怠け者であることが仕事であるロックオンは、別荘で、ラボの手伝いをしていた。とは
いっても、午後から夕方まで、管制ルームに詰めているぐらいのことだ。これといって離
発着がなければ、ぼんやり画面を眺めているだけという非常に暇な仕事である。
今日もいつものように、そこで新聞を読みながら、だらだらとしていたら、携帯端末が
鳴り出した。相手は、三蔵だ。
「はい、ロックオンです。」
『よおう、久しぶりだな、ママ。』
「この間まで、そちらにいたじゃないですか。何か?」
『おまえ、暇なんだろ?』
「ええ、まあ。」
『じゃあ、本堂の掃除を手伝ってくれ。・・・・そろそろ、大掃除しなきゃならねぇーん
だ。虎には借り出す許可は貰ってる。』
そういうことなら、問題はないんだろう。しばらく、別荘に引き篭もっていたから、気
晴らしにもなるので、ロックオンのほうも、「いいですよ。」 と、二つ返事で引き受け
た。刹那たちは、CBに戻っているから、世話をする必要もないし、あそこには悟空がい
るから、そういう意味でも楽しい。世話好き貧乏性なおかんとしては、何か世話してやれ
る者が居ることが、一番楽しいのだ。以前、三蔵が本山に仕事で戻った時にも、悟空の世
話をさせてもらったから慣れたものだ。掃除ぐらいなら、軽い運動だし、いい運動になる
な、とか考えていたりする。
じゃあ、頼んだぜ、と、携帯を切って、三蔵はタバコに火をつけた。その横手には、ト
ダカが並んでいる。
「これでよかったのか?」
「ええ、しばらく預かってください。ラボのほうに出入りされると困ることが発生した。
・・・・それに、彼は勘がいい。別荘にも置けない。」
トダカが唐突に、寺まで遠征してきて、そのように依頼した。別に三蔵としては、家事
能力抜群のロックオンが来てくれるというなら、逆に有難いことだから、こちらも二つ返
事で了承した。
「ママが邪魔か?」
「いや、子猫たちが泣きついてきそうだと、ラクス様が・・・・」
それだけで、三蔵もなんとなく事態は把握した。療養しているロックオンに泣きつかれ
たら、以前のように動くだろうことは、あの性格からも伺える。だが、そんなことをした
ら、また何ヶ月か寝込む事態になるだろう。日常生活を送る分には、問題はなくなったが
、以前のような活動が可能なまでの回復はしていないからだ。
で、まあ、あの親猫というのは、そういうことは、さらっと無視して動こうとする性格
なので、「体調はいいんだ。」 とかなんとか言って、子猫たちのフォローをするのは、
三蔵にも予想できる。
「ママに心配かけるなって脅せばいい。」
「脅すと、おそらく、刹那君が暴れそうだろ?」
トダカはおかしそうに肩を震わせている。一番甘えん坊な黒子猫は、親猫を隠されたら
、それを取り戻すべく暴れるだろう。あの黒子猫の機体だけは、組織で修理されて稼動で
きるというのも問題だったりする。
「子猫たちが、親猫に頼れないということを認識してくれれば、それからならバレてもい
いんだ。こちらから、あちらへの通信は、彼の認証コードではできないようにしてある。
」
「あの性格を直すクスリってぇーのは、ないもんか? トダカさん。」
「ないだろうねぇ。でも、あれが、彼のいいところでもあるんだよ。可愛いだろ? 」
トダカの言いように、三蔵は、ちょっと呆れて、それから苦笑する。三蔵と、あまり変
わらない年齢の親猫だが、どっか精神年齢が低いところがある。青いというか、思い込み
が激しいというか、自分がどうにかしなきゃと思うのだ。仲間が全員年下だから、一番年
上の自分が指揮を執らなければならないと、今でも思い込んでいる。もちろん、現役マイ
スターだった時は、それが正しい態度だったが、今は違う。リタイヤしてしまったのだか
ら、彼には指揮を執る権利もない。それはわかっていても、他のマイスターに泣きつかれ
たら、やってやろうと考えてしまう。それで、親猫の体調を崩すことが明白でも、それを
親猫は見て見ぬ振りするのだ。それが、トダカには可愛い態度に映るし、三蔵も、しょう
がねぇーと苦笑するところだ。
「まあ、いいさ。俺はママが来ると楽が出来るからな。」
「本当にこき使わないでくれよ? 掃除には、うちのものを遣るからね。」
「ああ、そこまで鬼じゃねぇ。」
秋に体調を崩してから、回復するまで三ヶ月近くかかった。それは三蔵も知っているか
ら、無理させるつもりはない。ようやく春になって日常生活に支障がないまでに回復した
ところだから、のんびりさせておくつもりだ。本堂の掃除も、それほど大事ではない。た
だ春になって大陸からの黄沙が飛んでくるから、それを拭くだけのことで大掃除というわ
けでもない。
「うちに呼び出しても、滞在してもらう用事がないからね。たまに、私の相手もして欲し
いから、途中で借り出すつもりだ。」
作品名:こらぼでほすと 襲撃1 作家名:篠義