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こらぼでほすと 襲撃1

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 自分の保護者は、すっかり、このママの家事能力を気に入っていて、何かと呼び出して

滞在させる。今のところ、ママのほうも子猫が帰ってこないから、理不尽な呼び出しにも

応じてくれている。なんていうか、もう、清々しいほど夫婦なノリになっていたりする。

年も近いからなのか、どこかでウマは合うらしい。
「学校はどうだ? 」
「まだ、よくわかんねぇー。一年は、教養課程とかあって結構、高校みたいだ。」
「ふーん、そういうもんなのか。」
 俺、勉強はからっきしだったんだよなあーとロックオンは苦笑している。今日のお茶は

本堂だった。三蔵が、仏像の埃を拭っているので、そちらで小休止になっている。
「麦茶は作らなかったのか? 」
「ペットボトルの緑茶なら冷やしてますよ。」
「じゃあ、それ。」
「はいはい。」
 本堂の前で、一服やっている腐れ坊主様は、いきなり冷茶を所望する。まあ、片づけを

していたから喉が渇いているのだろう。俺が、と、悟空が引き返す前に、ロックオンが踵

を返している。
「サル、おまえも手伝え。上のほうは任せるぞ。」
「おう、わかった。」
 こういう場合に、如意棒は便利だ。ひょいっと伸ばして立てかけたら、そこを登れば簡

単に天井付近まで到達できるからだ。菓子器に入っている煎餅をばりばりと食べつつ、の

んびりと境内を見渡す。あれから三ヶ月ほど経った。そろそろ、子猫たちの一匹が降りて

くるだろう。そうなったら、ママは、そちらの世話に戻ってしまう。
「なあ、さんぞー。そろそろ、刹那が降りてくるんじゃないのか? 」
「いや、降りてこねぇーな。しばらく、ママは、うちで独占するから、美味いもんが食え

る。」
「忙しいのか? 」
「忙しいらしい。」
「ふーん、意外だな。」
 悟空にしてみたら、忙しかろうがなんであろうが、刹那は顔を出すだろうと予想してい

た。心配で心配で、倒れたと聞かされたらすっ飛んできた刹那を見ているから、そういう

もんだろうと思っていたからだ。
「あいつらは、これから本気で戦争するんだからな。そう、簡単に降りて来られる道理は

ねぇーんだよ。ママの前で、その話題は避けろよ、サル。」
「わかってる。」
 悟空には、今回のことは話していない。また、我侭で呼び出したと思わせてある。本当

は、会わさないために、ここに滞在させているなんて、わかったら、悟空は刹那の味方を

するだろうからだ。
「お待たせしました。」
 わざわざ、冷茶用の茶器に、それを移して運んできたロックオンに、三蔵は礼もなく無

言で茶器へ手を伸ばす。
「桜餅も食べるか? 」
 ほら、と、新しい皿を悟空にも差し出す。春らしい桜餅が、ふたつ、そこにはある。
「ロックオンは? 」
「俺はいい。おまえが食べな。」
 もう少し早く呼び出してもらったら、ここの桜も見られたんだけどなあ、と、桜の木へ

目を遣っている。すっかりと青葉になった桜は、それはそれで新緑が美しいのだが、花は

終わっていた。
「そういや花見には来なかったな? ママ。」
「ええ、ちょっと具合がよくなかったんで。」
 季節の変わり目というのが、かなり厄介だと苦笑している。寒暖差があると体調がよく

ないらしい。
「あと、大雨の前って脱力感がひどいんですよ。・・・気圧と寒暖差がネックですね。」
「そら、難儀なこったな? 」
「まったくです。・・・こればかりは完治するようなもんじゃないので慣れるしかないん

ですがね。」
「具合悪い時は、寝てろよ。」
「ええ、ナマケモノでいさせてもらいます。悟空、そういう時は、ヘルプしてくれ。」
「うん、わかった。今はいいの? 」
「ああ、これぐらいの気候だと、身体が楽なんだ。俺の故郷は、こういう感じなんだよ。


「アイルランドは、こっちの春みたいなもんなのか。」
「こういう気候の感じだ。・・・・そのうち、案内できるといいんだけどな。」
「いいなあ。そのうち、みんなで行こうよ。キラも行きたいって言うだろうしさ。」
 そのうちにな、と、ロックオンは少し遠い目で微笑んだ。刹那たちが、無事に戻ったら

、と、その顔に書いてある。やっぱり、心配なんだろうな、と、悟空も桜のほうに目をや

る。あまり、世界情勢に興味のない悟空でも、新たな連合が作られたことぐらいは把握し

ている。それが、何事もなく平和を運んでくれたら、刹那たちは動かなくて良いのだが、

実際、そういうもんじゃないんだろうな、とはわかる。キラたちは、二度、大きな大戦を

乗り越えている。つまり、平和にはならなかったということだ。

・・・でも、そのうち、キラたちみたいになるんだよな。・・・・

 たぶん、刹那たちも、キラたちのように自分たちができることが終わったら、こちらに

戻って来る。そうなったら、もう、戦うこともなくなるだろう。
「なあ、なあ、ロックオン。俺、晩飯に春雨サラダが食いたい。」
「それ、酢で作るほうか? それとも、マヨネーズ? 」
「どっちもいいなあ。」
「二種類な。わかった。」
 それまで、せいぜい、自分の世話で気を紛らわしてもらおうと、悟空は内心で考えて笑

っている。それほど長い時間ではないだろう。そう願いたい。
作品名:こらぼでほすと 襲撃1 作家名:篠義