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僕は一日で駄目になる

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 天井だの毛布だの自分の腰だの、そんな些細な違いはこの際どうだっていい。問題は僕の横になぜか水谷が寝ているということだ。恐る恐る毛布をめくってみると僕も水谷も何も身につけていない事実に驚愕する。
 なんで?どうして?が次から次へと湧き上がる頭の中を整理できないまま、すでに起きている僕の様子に気づいた水谷が目を覚ましてしまった。
「お…おはようございます」
 脈絡もなく敬語を使うのはやめてくれー。
「なんで俺ら裸なわけ?」
 水谷の寝ぼけ眼が一瞬にして開かれた。そのまま毛布の上を左へ右へ巡り、元の位置へ戻ったあと、変な声を出して毛布へとめり込んだ。
「うっわぁー、覚えてないんだぁ〜…」
「えっ、ちょっと、水谷?」
 どっから記憶ない?と聞かれたので素直に、飲みなおした店で水谷がトイレ行ったあたりまで、と出した答えに水谷はまたさっきの変な声をあげた。複雑そうな顔が何かを告げようとして口ごもった内容を、言って欲しいような欲しくないような。
 水谷はしばらくうんうんと唸っていたけれど、何かをあきらめたかのように前髪をかき上げ、深くため息をついた。
「ならいーよ…」
「おいおい一人で納得すんなよ」
「俺風呂入っけど、栄口先入る?」
「いや、後でいい」
 水谷は裸のままバスタオルだけを手に持ち、風呂場へ消えてしまった。ベッドの上に取り残された僕は改めて現状を顧みることとなる。掛け布団が足で蹴られたのだろうか、奥のほうに追いやられていた。ベッドの周りにはさまざまなものが散らばっている。水谷のシャツやら下に着ていたTシャツやらが全部裏返しで脱ぎ捨ててあり、それと僕のスーツの下、水谷のジーンズ。元々散らかっていた部屋と相まり、まるで世界の小さな縮図を見せられているようだ。
 あとはもう、これ以上余計なものを見てしまうのが嫌だったので目線を枕元へ落とした。しかし、そこで最も目にしたくない現実を見てしまった。包装も中身もその役目を終えてしまえばゴミになるってわかっているけれど…生々しすぎる。
 つまり、僕と水谷は…。
 想像するのはものの1秒でやめた。水谷から真実を聞くまで変な杞憂はしないことにしよう。
 縦に細長い1Kのアパートの奥のほうから水谷がシャワーを浴びている水音が聞こえる。風呂から上がった水谷にどういう顔をすればいいんだろう?何を話せばいいんだろう?身に覚えなんてまったく無いのに。
 とりあえず僕は、身に着けるべきワイシャツと下着を探しもぜず水谷の部屋のテレビをつけた。
 そういう小さな現実逃避ぐらいさせてくれたっていいじゃないか。これから控えているのは多分、僕に二度と酒なんて飲まないと決心させてくれる事実だろうから。
作品名:僕は一日で駄目になる 作家名:さはら