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欲 1

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地鳴りを起こし刃を交える主の楽しそうな姿を尻目に先を急いだ。
だが、コチラも一筋縄ではいかないようだ。
何かが自分の後をついて来ている。

(・・・)

ヒュッ__

と風が吹く音が聞こえた方向を盗み見るが姿はない。
だが、今度は反対の木から葉が擦れる音に違和感を感じた。

「チッ・・・」

確実について来る影に足を止める。
眼をしかめ、刀を構えて気配を探る。
先ほどまで感じていた空気が背後から素早い速度で向かってくる。
振り向いている暇はなく、かろうじて避けると、地面に突き刺さるクナイが二本黒光っている。

「誰だ。」

クスクスと笑いながらふざけた声が聞こえるだけでその姿は見当たらない。


―――誰でしょう?・・・


不気味に響く笑いが、冷静だった精神を危うくするようで、警戒心が増す。
左右前後を確認するが、見えないその姿にじわじわと苛立つ気持が湧きあがる。
精神を研ぎ澄まし、周囲の気配を感じる中、背後巳の方角から僅か地を掘るような音がした。

瞬間だ。


自分の真下から何かが這い上がってくる土の揺れ、気配を察知し前方に飛び上がる。

「くッ__」

それと同時、現われた人の手に危うく捕まれそうになった。

「お前・・危ねぇなあッ!!」

現われた腕に向かって刀を振り下ろす。
一閃、本気で殺すつもりの一振りをソイツは僅かの差でかわし、即座に、棒手裏剣を打ってきた。

(掠めただけか・・)

避けられた一振りをとっさに上空へ翻し、その風圧でかかって来る手裏剣を払う。
決めたと思われた一撃を避けられ驚きはしたが、まだ自分の間合いに忍びの姿があったのを逃しはしない。

「――ハァッ」

目の前を軽業で移動する忍に向かい、素早い踏み込みから一直線に突きを繰り出す。
周りにいた足軽どもは簡単に吹き飛ばされてゆくが、忍はそうはいかなかった。
この技の隙である空中へと、当たる寸前地面に着いた片足を使い舞い上がったのである。
忍は技の途切れた隙を伺っていたかのように、逃げるのみならず、無数のクナイを投げつけてきた。

「チッ・・・」
「見つけられちゃった〜」

トン、とあれ程高く飛び上がっていた忍びは音もなく着地する。
現われたのは橙の髪を持った女。
戦場に女を見たのは珍しい事で、表情には出ていなかったものの心中では驚いていた。
その上、中々に用心深い。
クナイを刀で避けたは良いが、自分の周りはマキビシによって囲まれており、簡単に動きはとれなくされていた。

「面倒だなぁ、・・・なぁ、女」

ンフフフ、と含みのある笑いで女は妖しげに顔を微笑ませた。
紅の地に金と銀の糸が美しく菊の花を描き、流れる流水が風雅を演出している質の良い着物に身を包んでいる。
その派手ながら、上品な着物に身を包んだ美しい女にこの場はとても不釣り合いのように見えた。
そして挑んでくるかのように見せていた女は、手に持っていたクナイをしまい地に膝をつく。

「真田忍軍が頭、猿飛佐助。・・・貴殿を独眼竜伊達政宗公が家臣、片倉小十郎景綱殿とお見受けいたします。」

女は頭をたれ、礼を尽くす。
その姿を見ればわかるが、本当に身を守るものは殆ど身に着けていないようだ。
美しく結われていたであろう髪を手櫛で解き、先ほどの打ち合いでついた頬の傷を手の甲で拭った。

「女が忍びの頭か、・・まぁ、お前なら納得だな」
「片倉様は、面白い方ですねぇ」

フフフ
女が口を開けて笑うのを恥じるかのように、口元に手の甲を当て、またも含み笑う。
その動きに髪から簪と櫛が落ち、それほど長くはない橙の髪が風になびく姿に眼を奪われる。

「恐れながら、忍びの世界は男も女も関係ございません。力こそが全ての世界故」

その瞳に戦でよく見る色を見つける。

(何とも興味深い女だ。)

よくよく見れば、着物から覗く肩は、木の葉で切ったのだろう、所々切り傷が赤く線を作りこの距離だと赤くはれたのがよく見えた。
また、派手な一戦に土埃が舞い、最初目にした美しい着物も泥に塗れ鈍い色を見せる。
忙しなく動く内に裾から大きく覗いた白い脚は何処かで打ちつけ、青く変色している箇所を見つける。
観察する目が下へ降りて行ったところで視界に入ったのは、草履も履かず、泥に汚れた白い足袋が擦れてボロボロになり血が滲む足だ。

これから殺し合いをしようと言う姿ではないだろう。

「そんな形でテメェの言う「力」は証明できんのか」
「「そんな形」だろうと、証明できてこその世界に住んでおります」

そんな汚い薄汚れた形をしていても、美しく背を伸ばし佇む女の姿は弱さを欠片も見せない。
女が顔を上げ、微笑んだ。
その笑にはなんの感情も感じられない瞳だけがギラリと光り輝いており、相手が中々の兵だというものが解る。

「此度は主より、これ以上の前進を阻止せよとのご命令。・・・行く手、阻ませて頂に来ました。」

女と舐めて掛かると痛い目を見ると言いたいのか。その笑顔が、嘲笑を含んだ笑いに感じる。

「成る程。」

刀を構えなおし女に向き合う。
女も体制を変え、何時でも此方に踏み込めるような構えである。

「お前も面白い女だ」

隙の無いその姿は正に標的を捉えた獣。
獣の美しさを持ったしなやかな女だ。

「このような姿で申し訳ありませんが、ここで術を解いている暇は与えて頂けない様なので・・・」

どこから出したのか、片手に忍者刀もう片方では手裏剣を弄びながらゆっくりと歩くように脚を前に出した。
それに合わせて、こちらも大きく一歩を踏み出す。

「かかって来いよッ」
「猿飛佐助参るッ!!」

女が飛び上がり俺に闘志を剥き出しにして向かってくる。

政宗様の天下統一を邪魔する者は女も男も関係ない。
己の命は政宗様のもの。

ただ、望めるものならば、己が心底欲するものは二つだけ。

命の限りを賭け戦える相手と
持ちうる限りの計略を測り測られ戦える機会を求めるのみ

それさえあれば、この世にあって最高の人生となるだろう
それをこの女に求めてみようか


命と知略を巡らせた最高の戦を





END

作品名:欲 1 作家名:タカ