欲 2
人を殺める男であるから。
それが、忍の役目。
真田の全ての忍びを統べる自分の役目である。
「このような姿で申し訳ありませんが、ここで術を解いている暇は与えて頂けない様なので・・・」
もう暗器はない。
最後に残った忍者刀と手裏剣を弄びながらゆっくりと前に出た。
男の立ち姿に無意識に腕が震えた。
(余裕ぶっこいてられんのも今のうちだ)
「かかって来いよッ」
叫ぶ男相手に飛びかかり間合いを一気に詰める。
狙うは先手。
「猿飛佐助参るッ!!」
旦那が求めるのは親方様の御上洛。
そして、それに最後まで付き従う事こそ旦那の喜び。
それを果たすためなら、人殺しなど何度しようが厭いはしない。
忍の心は必要ない。
自分のすべては主である真田幸村の為にだけある。
武田の天下統一に邪魔なモノは旦那の手を煩わせるまでもなく、全て排除する。
それが旦那の、真田忍軍の長としての役目だ。
END