「……臨也さん」
反射的に臨也は肩を縮こまらせ目をつむる。
ぽすん。
「泣かないでくださいよ」
ゆっくりと、帝人の小さな手が臨也の頭を撫でる。小さな子供にするように、よしよし。と言いながら撫で続けている。
臨也は帝人にぎゅっと抱きついた。
「……もっと」
「ふふ。仕方ないですねぇ」
帝人の胸に頭を押し付ける。温かい。顔の向きを変えて耳を押し付けるとゆっくりとした帝人の鼓動が聞こえてきた。
このまま眠ってしまいそうだ。
「……臨也さん」
「うん」
「臨也さん」
「うん」
「愛していますよ」
「うん」
「……いざやさ……ん」
「うん」
「……」
「帝人くん?」
顔を上げると青い瞳が本当の海のようになっていた。
泣いていた。
「みっ、帝人くんっ!?」
頭にあった帝人の手は目の上で止まる。手を仰向け瞳を隠す。
「みないで……くだ、さい……」
手で隠しきれない、伝う雫は止まることがない。
(あっ……)
瞳が手で閉ざされたことで帝人の痛痛しく腫上がった頬が目立った。
「帝人くん、ごめんね……」
「許しますよ!」
「だったらなんで、泣き止んでくれないの……」
どうしたらいいか分からずに先ほどまで頬を殴りつけていた手で優しく触れる。
「そんなのっ!」
嗚咽交じりの声だった。やはり泣き止んではくれない。
だが、瞳を覆い隠す手は消えた。
想像に反して帝人は嬉しそうに目を細めて。
「臨也さんも、僕のことを愛してくれたからに決まっているでしょう」
たまらない。いとおしい。いとおしい。いとおしい。あいしたい。このこをあいしたい。全て受け入れて愛したい。そうして同じように愛して欲しい。
「みか……ど、くん」
「なんですか」
「俺も、俺も、愛しても、いいのかな……」
「今までも愛してきましたよね」
「それで、それで、帝人くんに……」
「……」
青い瞳がじっと見つめてくる。一呼吸置いて意を決して。
「俺は、帝人くんに、愛されてもいいのか、な……」
刹那、無表情になった帝人は、臨也の頭を思い切り引き寄せて唇に唇を押し当てた。
顔が離れると帝人は華のような笑みを浮かべ
「当たり前じゃないですか。最初から言ってますよ。僕は臨也さんを愛していますって」
「帝人くんっ!」
キスを落とした。自分から、帝人のふにふにの唇に。腫上がってしまった頬に、瞼に、愛らしいおでこに。
「愛してるよ。帝人くん」