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ファズ

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 こうして思い返してみると、自分はいつも何かに守られているような気がする。「おまもり」とは心の拠り所だ。大切な人の象徴。かつては母がくれた、そして兄と揃いだったアミュレットこそがその「おまもり」の役目を果たしていた。だが、今はどうか。
 男はコインを強く握り締めて、掌を開いてもう一度そのコインを見る。コインは相変わらず白い光を受けて、鈍く光っている。その様子に満足そうに口元を歪めて、指先でコインを撫でた。それはあたかも、待ち人を愛しむような、優しい仕草であった。
 やがて彼は懐にコインを仕舞うと、さっさと立ち上がり歩き出した。付近に随分凶悪な悪魔の気配が漂っている。いつでも愛刀を抜けるように構えながら、彼は心中で考える。
 今までは、散々無茶をした。そこには自分が圧倒的な力を持っているという確証があったから、という理由もあったが、自分には失うものが何もなかったからこそ、時に命さえ落としかねない真似も平気でできていたのだ。
 だが、今は違う。今は自分を待つ者がいるのだ。できることならば、生きて再び会いたい。何より彼に、これ以上失う哀しみを味わわせたくはなかった。あの身を切られるような哀しみだけは・・・・。自分勝手に出ていった癖に大層なことを、と彼の人は嗤うだろうか。
 背後の気配が襲いかかってくるよりも僅かに早く、彼は愛刀を抜いた。この世界での彼の闘いは、まだ始まったばかりである。

 −了−
 

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作品名:ファズ 作家名:柳田吟