GUNSLINGER BOYXⅢ
「まったく、ああいう悪趣味な人間観察は良くないですよ」
公社が用意したホテルの一室。
帝人くんは俺の髪を拭きながら不機嫌そうに言った。
こころなしかいつもよりも拭き方が乱暴な気がする。
「ごめんごめん。でも、どうしても気になってさ」
義体の生前を知っているらしき人間には極力関わらず赤の他人のふりをするのが鉄則だ。
堂々と振舞い知らないふりをしていれば大体の人間は他人の空似ですましてしまうものだ。
だれも死人が生きているだなんて思わないし逆に自分の記憶の方を疑う。
まあ、もしも機密がばれればその人間を始末してしまう場合もある。
それでもあの金髪の少年に近づいてみたのは俺の『人間観察がしたい』というどうしようもない性分と帝人くんの生前の知り合いとやらと話してみたかったからという理由による。
しかし帝人くんの機嫌は今になってもすこぶるナナメなままだ。
「帝人くんは、『死ぬ前』の自分のことって気になる?」
「・・・なりません。知りません、そんなの」
帝人くんの手の動きが止まり、代わりに後ろから抱きついてくる。
その体はわずかに震えていた。
「僕には臨也さんだけです・・・・・・」
「帝人くん・・?大丈夫?」
「・・・・怖かったです・・・あの人のこと見てると、何か、別の自分が僕の中にいるみたいな変な感じがして。いつもの夢、みた時みたいに。」
そんなの、いらないのに、知らないのに、どうしても悲しくなるんです。
帝人くんはそう言って俺にしがみついたまま離すさなかった。
あの金髪少年のように、いつか君が俺のことを置いて逝く日がくるんだろうとは言えなかった。
さよならなんて言う自信、俺には無い。
作品名:GUNSLINGER BOYXⅢ 作家名:net