コールドタイフーン
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並盛の恭弥のもとを訪れた骸は、執務室の扉を開けた途端、赤と蒼のオッドアイをぱちぱちと瞬かせた。
「こんにちは、いらっしゃい、骸」
にこ、と微笑んで先に挨拶をしたのは、彼の仕えるべきあるじでもある綱吉。
「…こんにちは、姫君」
反射的に挨拶を返したが、手にしていた仕事用の書類が入った封筒はばさりと床に落としてしまった。
「ほら、恭弥にいさま。骸が来てくれましたよ」
綱吉が呼びかければ、書類に目線を落としたままこくりとひとつ恭弥が頷く。
「…………」
「骸、封筒落としたよってにいさまが」
「あ、ああ、そうでした」
言われて慌てて封筒を拾い上げる。
中身をぶちまけないで良かった、と頭の片隅だけで思う。
「…………」
「何の用事か、って」
「ええと、はい。今度黒曜に新しく進出してくる企業のことで、恭弥君に相談が」
「…………」
「不穏な動きでもあるの？って」
「まあ、どことなくきな臭い感じがしたので、ちょっと恭弥君の意見を聞いてみたいと思いまして」
顔を上げた恭弥が、ぴん、と片眉を跳ねさせる。
「…………」
「まさか教団関係じゃないだろうね、って」
「いえ、そうではなさそうなんですが……あの、姫君？」
「なぁに、骸？」
ことん、と小首を傾げた綱吉に、骸はなんと言って尋ねれば良いものかと迷う。
「お聞きしても、構いませんか？」
「うん、良いよ。なに？」
「どうして、その…恭弥君との二人羽織みたいな状態に、なっているんですか？」
そう、綱吉は執務机に向かって座っている恭弥の、膝の上に座っているのだ。
でもって、恭弥は綱吉の肩に顎を乗せた状態で、書類にサインを入れている。