「……××くん」
言おうとして急に視界が真っ白になった。ああ、もう目覚めてしまうのか、そう思考する中にまぎれて、
「俺はいつまでも君を待っているから!」
叫ぶように発せられる声が耳に残った。
夜になればいつでも会えるのに。
しかし、次はもうこなかった。
それ以降、どんな風に寝てもおりはら いざやに会うことはなかった。愛すると言った瞬間に会えなくなってしまった。
時は流れ、帝人は上京した先池袋の町で夢の彼。折原臨也と出会うことになるのだが。彼からは帝人と話した記憶がゴッソリ抜けているようだった。それならばいっそ忘れてしまえばいい。そう考えもしたが、思えば思うほど。会えば会うほど。声を聞けば聞くほど。夢でしか会えなかった彼がこの世に実在し自分を認知しているのだと理解すればする程折原臨也のことが好きになっていた。
あのときの「愛するよ」は同情からの言葉だと思っていたのに。実際の彼に関われば、男同士だと分かっていてもそれを払いのけ上回る程の愛が帝人の内に鬱積した。
結果。竜ヶ峰帝人は折原臨也を愛し。晴れて付き合うことになったのだ。
もう彼など、どこの誰とも分からない呼び方など。しなくていい。胸を張って愛おしい人。
「臨也さん。愛しています」