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バベルタワー

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 水谷は雨の日が嫌いだ。その理由の半分以上をうまくまとまらない髪が担っている。朝、しとしとという雨だれの音で目が覚めると、その時点で学校に行く気が失せる。鏡なんて見たらなおさらだ。牛丼でいうところの徳盛……みたいなボリュームで、髪がもっさりうねっている。いつもの分け目はたった一晩で密林の奥に消え、水谷はまずこのジャングルを森くらいまで剪定しなければならない。
 そんな爆発髪型も一度風呂に入って頭を洗い、乾かしたほうが幾分手懐けやすい、が、なぜだか雨の日は普段の倍くらい寝起きが悪い。たいてい取るもの取らずで何とか準備をし、朝食を無理矢理口に詰め込まないと間に合わない時間になっている。流暢に朝風呂に入る暇なんてない。これがふたつ目の理由。
 おさらいすると、雨の日の水谷の髪型は盛大に膨れ上がっており、しかもギリギリに起きるからそれを直すこともできないのだ。
 それらを踏まえ、雨の日の水谷の朝をたどってみよう。雨が降っている日は原則として自転車で登校することは禁止されている。けれど歩いて行く時間はないので、「朝早いしバレないバレない」と片手で傘を差し、猛スピードで漕いでゆく。すると傘の中で発生した上昇気流がさらに水谷の髪をとんでもなく面白い形にしてしまう。
 栄口いわく「失敗した綿アメ」がなんとか朝練に間に合ったとしてもまだ受難は続く、帽子を被らなければいけないからだ。そして練習によって汗をかくので全自動で髪型が変化する。ユニフォームを一旦脱ぐ頃の水谷の髪型は阿部いわく「しなびたナスのへた」みたいな形状になっている。こうなってしまうともう手の施しようがないことは15年間の経験から実証済みだった。
 だからそんな雨の日が続く梅雨なんて、水谷にとっては地獄の日々である。願いがもし叶うのなら梅雨のない北海道に引っ越したい。それか梅雨の始まる6月をすっ飛ばし、日差しが肌を焼く7月になってくれても全く厭わない。大歓迎だ。それくらい6月を嫌っている水谷だが、少しだけ、少しだけこの季節を好きになることもある。
作品名:バベルタワー 作家名:さはら