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かぐたんのよせなべ雑炊記

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センセイのてつがくかふぇへようこそ☆(4)



「――それで、」
カウンター席の端っこにちんまり腰を下ろした二人(?)連れに、これまでの客とは幾分様子の違う、やや詰問口調に先生が訊ねた。
「延々今までここに居座っていた以上、何か理由があるのでしょう。話してくれますね?」
「――……、」
するとロンゲのにーちゃんはこれ見よがしに大仰な溜め息をついてみせ、着物の膝に拳を丸めていかにもしおらしく頭を垂れた。
「悩みというのは、デバガメし損ねた上に、無銭飲食の好機を逸したということです……」
「……、」
隣のゆるキャラ着ぐるみもしょんぼり肩を落として同調する、
「帰れ!」
腕組みに仁王立ちして聞いていたマスターが、青筋立ててげらうぇい! 扉を指差した。
「……あっハイすぐ帰ります帰ります、」
ヘコヘコ頭を下げながら揃って席を立とうとした二人の退路を遮って、
「ダメですよ」
にっこり笑って先生が言った。
「わかりませんか? それこそ木圭くんの作戦勝ちです」
――相変わらずぼんやりさんですね、まっそこがかわいーんですけど、先生は小袖の袂でくすりと口元を覆った。
「……はっ?」
眉間に縦皺を寄せたままマスターは首を傾けた。ジジジジ……8ビットの回路が繋がるまで待つこと数秒、
「でめぇ!」
マスターはブッ飛んでいくとロンゲのにーちゃんのこじゃれた襟巻きをギリギリ万力で締め上げた。
「うぇい! うぇいうぇいうぇいっ!!!」
にーちゃんは性懲りもなく怪しげなげーこく語を操った。真顔なのに、真顔だからこそ余計に腹が立つのは生まれつきの彼の仕様だろうか。可哀相に。
「ヘイユー、己のミステイクをぷっとおんザしぇる(貝?)、私を責めるのは筋違いというものだぞ、まずは自分のトンチキさをドンブリいっぱい恥じたまえっ」
着ぐるみが次々出すフリップ通りににーちゃんがもっともらしく棒読みに説教する、マスターはキッと振り向くと着ぐるみの抱えたフリップをまとめて膝で叩き割った。容赦なき夜叉の眼光に怯えた着ぐるみはすぐにヒヨった。迷いもせずにマスター側に寝返った。
「――ふむ、」
さもありなん、様子を見ていた先生が小袖の手を上げてマスターに宣言した、
「三対一というのはヒキョウですから、私が木圭くん側につきます」
「――先生っ!」
劣勢に曇っていたにーちゃんの表情がたちまちパァァと喜色満面、勝気の彩に塗り替えられる。
「はっ、はァァ?!」
――どーゆー理屈ッスか、意図を測りかね、マスターは混乱した。闇雲に掻き毟った天パがこんがらがる。アシスタントの着ぐるみがサッとクシを差し出した。マスターはヤンキースタイルにカッコつけてクシを入れた。ぐぎぎぎ、もつれた天パにクシが通らない。――ばきぃ! 限界強度を超えてクシが折れた。
「だぁッ!」
マスターは怒りに任せて折れたクシを床に投げ付けた。跳ね返ったソレがあわや着ぐるみの急所を掠めた。
「!!!」
――どうして、私はたった今しがた、貴方に永遠の忠誠を誓った懐刀ですのに……! 絶望した着ぐるみは再度逃亡、サイドチェンジを図った。状況はこれでまた三対一となった。
「あっじゃあ、今度は俺があっち側に……」
ロンゲのにーちゃんがいそいそ陣を移ろうとした、
「だかましい!」
マスターはどヤンキー顔でにーちゃんにガンをくれた。
「……君は下がっていて下さい、」
――ひっ、ヒドくねヒドくね? 涙目のロンゲにーちゃんを庇うように先生が一歩前に出た。マスターははっと息を飲んだ。
「後ろの二人は関係ありません、ただの見届け人です。勝負はあくまで私と君のサシです、遠慮はいりません、かかって来なさい」
マスターを真っすぐ見据えて先生が言った。静かな、けれど闘志を秘めた口調だった。
「――どうして、」
言葉もなく、立ち尽くすとマスターは青ざめた。――わからない、一体どこからどう歯車が狂ってしまったのか、愛し合う(←ちゃっかり設定)二人が何故にこうして敵味方、命を賭してデュエラなければならないのか。……どうせこの世に神も仏もありゃしない、惨酷な気まぐれ堕天使のハナクソチェスが支配する、
「――できませんッ……!」
マスターはその場にがっくりくずおれた。先生が深い息をついた。
「……見損ないましたよ」
構えを解いた先生がつかつかとマスターの前に歩を進めた。項垂れていたマスターが顔を上げる。先生は小袖の袂に震える拳を握り締め、淡い色の唇を噛み締めるようにして言った、
「私を頃して俺も氏にますっ! 君ならよゆーのアドリブでそれくらいカマしてくれると信じていたのに……!」
「――先生ッ!」
――あああそっちかーーーーっっっ!!! マスターは悶えて天パを掻き毟り、スイマセンでしたっ、俺はとんだ未熟者ですッ、床を蹴って立ち上がるとドサマギでガバと力任せに先生の身体を抱き締めた。
「……わかってくれればいいんです、」
――ひっくひっく、啜り上げるマスターの背を抱いて、優しく先生が言った。
「……。」
――……ヨシ今がチャンス! ロンゲのにーちゃんと着ぐるみはそろりと忍び足に店を出ようとした、
「お待ちなさいっ!」
先生の厳しい声が一人と一匹の動きを制した。
「いいんですか? ここからがいいトコですよ?」
「――えっ」
思いもかけぬセンセイの言葉に、マスターは天パまで真っ白になった。
「……はぁ、」
――うっわぁ、このヒト目がマジだっちゃ、髪に隠れて見えないけどっ、先生の揺るがぬ透視眼力にさしものロンゲのにーちゃんも引き攣った愛想笑いを浮かべるばかり、
「たっ、足りない分はまたこんどっ」
ちゃりんちゃりんちゃりーん、僅かばかりの小銭を置いて逃げるように場を去った。スタコラサッサと着ぐるみも思いのほか俊敏な動きで後を追う。
「最後まで見ていけばいいのに……」
マスターの背に腕を回したまま、つまらなそうに先生が言った。
「ねぇ?」
振り向いてマスターに同意を求める。マスターはまだまっしろに固まっていた。先生がくすりと息を漏らした。
「……じょーだんですよ、」
「――、」
小首を傾げた先生の言葉に、ようやっとマスターは解凍された。……えーうそまじで、二度まで貰い損ねたおまじないの距離まであと●センチ、髪を透かして先生の含み笑いがくすくす揺れる、
――先生、やっぱりアナタはボクのMAHO使いです、カウンター席を照らすライトの下で、……そーいやそんなドラマもあったなァ……、ふやけた頭にマスターは思った。


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