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かぐたんのよせなべ雑炊記

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「……団長の作品は、何とゆーか、とにかくパッションだけは感じるんですけどねぇ……」
――ものすごく前向きに好意的に捉えて超前衛的と言いますか、ゴツイ手にデミタスカップを持て余すようにOBさんが言った。
「技巧に走って魂のこもらない作品よりはいいですよ。技術というのはいくらでも向上の余地があるんですから」
エスプレッソの香りの余韻を楽しむように先生が言った。
「だといいんですがねぇ……」
――そーゆーレベルじゃないんだなコレが、心の内にため息をついてOBさんは思ったが、敢えて口には出さずさらりと話題を変えた。
「私もね、寝食忘れて部活に打ち込んで、単位足りずに何度も留年したあげく二浪してまでようやく入った美学校でしたけど、そこでもう、周りとのレベルの差に愕然としちゃってね、」
カップを片手に、OBさんはふふふと肩を揺らした。
「……これが最後の絵だと思って、海辺の公園にキャンバス立ててね、そしたらたまたま通りがかったあの人が、――いいね、俺は好きだな!って、そんで私が描いていたものとはまるっきり違うテーマを、ものっそ自信満々、胸張って言うんですよ、いちいち訂正すんのもなんだかなーって、そもそもそうして他人に伝わらない絵を描いてる自分の力不足なんだし、……つまりはそーゆーことだよな、なんかもーどーでもいーやーって、――ハイそーです、って、したら団長ニッカー!って笑って、いやー俺たち気が合うなー!って、以来ズルズル腐れ縁ですよ、」
「どんな出会いにも意味はあるものですよ」
カップの中身を見つめて先生がしみじみ言った。
「私もそう思うようにしてますけどね、」
OBさんはハハハと笑って小ぶりなカップに残りのエスプレッソを啜った。


+++

「……というワケなのさ、」
定休日のカウンターにどっかと陣取り、学ランおさげにーちゃんはひたすらひとりでしゃべり倒していた。合間合間ににんじんフレッシュも要求した。
ヤツが扉蹴り倒して店に入って来るまで、ひとり傷心に鍋を磨いていたマスターは、いい加減うんざり眉を顰めた。
「そこで俺は作戦変更することにしたってわけ、」
――おかわり! にーちゃんがグラスを突き出した。
「……。」
そろそろ空気読んで帰ってくんないかな、マスターは思きしガンくれてやったが効果はなかった。グラスの中の氷をカラカラ振ってにーちゃんは言った、
「あのヒトさー、おっさん好きはどーにもガチっぽいから、で、代わりにアンタ落とすことにした!」
「ハァァ?!」
マスターの眉間にたちまち深い縦皺が刻まれる、――どーゆー寝言だこんガキゃぁ、せめて寝言は寝てから言え!
「いやーっ、楽しみだなーっ、ダンナに浮気されちゃさすがにセンセも焦るだろ、」
仏頂面のマスター(ダンナ、というところだけちょっと反応した)をびっしと指差してにーちゃんはけらけら笑った。
「……。」
――だから人を指で指すな! 緩みかけた頬を慌てて戻してマスターの表情が取って付けたように険しくなる、カウンターに身を乗り出すとにーちゃんは言った、
「でー、さいしゅー的にはアンタらおっさん二人でぴっちぴちの若い俺を取り合ってボロボロにやり合う、っつー展開にもっていきたいワケよ、」
――そいつを高みの見物さっ!
(……。)
きゃっきゃ笑ってるヤツを前に、マスターは頭痛がした。実に信じがたいが、どうやらヤツは本気らしい、本気で己の筋書き通りに事を進められると、さっそく今日一回失敗してるくせに。
「つかホイ早くにんじんフレッシュ!」
「……。」
悪びれなくグラスを突き出すにーちゃんに、……しかしこいつのこの根拠のない自信、いったいドコから湧いて出てんだろ、若いアホって本当にオソロシイ、呆れを通り越して哀れにさえ思うマスターであった……(あー早く先生帰ってこないかな)。


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