かぐたんのよせなべ雑炊記
×月×日 ヅラ子★(2)
ベス子の諜報活動の結果を受けて、ミーもようやく目が覚めたの! ミーったらどんだけ余裕ぶっこいてたのかしら、もはやゆーちょーに写メ誤爆ってる段階じゃないってね!
よぉし、こーなったらトッ込み直接行動あるのみよ、気になる作戦名はズバリ、〜現役女子高生住み込みメイド探偵は見た! よっ!! ババーーーン!!!
つーコトでさっそく先生の家に合法的に住み込みに来たんだけど……、おかしいな、ドコにも見当たらないのよメイド募集の張り紙が。しょーがないから先生にチョクでトッ込んで訊ねたら、――ウチはメイド募集はやってません、特に必要ないですから、ってズガーーーン!!!! リサーチ不足!!! でもヅラ子メゲないっ! 合法が無理なら非合法で屋根裏に住み込みよっ! 我ながらガッツだわっ!!
ねー、それにしたってメイドは必要ありませんって先生自分じゃ絶対ゴハンとか作れないじゃない? あの人天才だけどド天然だから。往々にして生活能力ってモンに欠けてんのよねー、昔は何人かいた内弟子が雑用全般やってたみたいだけど、先生がちょいちょいやらかして投獄されるモンだから、とばっちり恐れてみんないなくなっちゃったし。唯一残党のアイツにマメに家事ができるとも思えないし。
先生、それじゃゴハンはぜんぶ外食か店屋物ですかって聞こうとしてたら、――先生できました、って、似合わねーかっぽう着つけたアイツがもこもこふわふわのナベつかみでナベ持って現れて、先生も先生でさもアタリマエみたいに良かったら君も食べていきますか、って、そんで出てきた料理がよ、……びっ、びーふ?すっとこどっこいすとろがのふ? んもーっ、舌噛みそうな名前だわッ見たトコ牛タン煮込みしちゅーってトコかしらね! てゆーか、どゆコト? フツーにうまいんですけどっ!! だってアイツ、ふだん家庭科の時間1マキシミリアンだって動こうとしないのよっ!? たいていの男子は見ろや俺のこのカレイなフライパン捌き、将来イクメン有望株だろ、女子の前でいいカッコしようとして結果散らかすだけ散らかしてアイツうっぜー!!呼ばわりされんのがオチなのに! そーね、そういうときポイント上がるのは黙々と地味に片付け担当やってる職人気質の子ね! もっとも、そういうことに自分で気付けるってことは逆に細かすぎたり神経質すぎたりして将来結婚できない男になる可能性もなきにしも非ずってところが判断の難しいトコロかしらね! ……それはおいとくとして、ともかく料理ってのは皿盛って食卓に出しゃオワリってモンじゃないのよ! 遠足と一緒よ! 使い終わった用具と台所、原状回復するまでがワンセットだっつーの! んで、
――えっと〜、ちょっとお水おかわりに……、のフリしてミーこっそりお勝手覗いてみたワケよ。なんたってメイド探偵ですから!! 覗き見専属特権っ! そしたらなんと、ウッソでしょォォォ!!!!! 案の定のぐっちゃぐちゃじゃねぇのよコレが! ちゃあんと三角コーナーまでキレイに片付いてんの! シンクとか思いっきしキラッキラしてて、その脇にコップに入れた野の花なんかがそっと飾ってあったりして、――ええええええ!!! なっ、何これこわいッッッ!!!!! 怖すぎるッッッ!!!! あまりの恐怖にカラダが戦慄して、あやうくびーふなんちゃらぜんぶ吹いちゃうところだったわ!
よろよろしながら壁伝いにようやっとで部屋に戻ったら、またまたセンセがニコニコしながらミーに言うわけよ、なんでも、先生の話によると、アイツ専業主夫志願なんですって! 今度こそミーお水吹いちゃったわよ!! どーゆー図太い神経してんの?! このご時世にとんだ甘えよ! どんだけ勝ち組気取りだっつの!! 希望無き格差社会、民衆の疲弊を憂い憤慨するミーの隣で先生はつらつら続けたわ、
――私の言動が少々アブナイばっかりに今は非常勤講師の身の上ですけど、いずれ正式採用されて、そしたら海辺に白いぶらんこのある白い小さな家を買って(もしくは借りて)でっかい白いわんこを飼うのが夢だって、そんで子供は普通が取り得の男の子と元気でよく食う女の子ひとりずつ、コウノトリがキャベツ畑に埋めに来たところをソッコー掘り返しに行きましょう先生!って、あの子真顔で言うんですよ〜、……やーっだもう、センセイはきゃっきゃしながら小袖でミーを力任せにばしばし叩いたわ。すっごく痛かったけどミーは必死でガマンしたの、だって、
――ねーっ、あんな半眼地蔵菩薩みたいなカオして(カオはどーでもイイじゃないスか先生、とでも言いたげなカオをしていたわ拳握ってふるふるしてあのときのアイツ、あー思い出したらおかしーったらないわッ)根はすごい ろまんちすと☆ なんですよあの子! かわいーでしょう?!
(……?)
――んっ? ミーは思わず首を90度傾けたわ。実際にはその半分くらいしか曲がってなかったと思うけど。そりゃ90度曲がったら折れちゃうものねー。で、それはそれとしてどーしていつも最終的には先生のノロケ話になるのかしら、微熱が出てきたミーは先に休ませてもらいます、そそくさと場を退散して屋根裏に引きこもることにしたの。いろいろ想定外だらけだったし、今日はこのままおとなしく寝ることにするわ。おやスイミー★
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作品名:かぐたんのよせなべ雑炊記 作家名:みっふー♪