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牙を立てるその日まで

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白衣を着た人物から遺伝子操作を行われたクローン人間のような存在だと聞かされ、あり得ないスピードで自我が育つうちにはもう成人した体を持っていた。それが俺だという。サイデリックドリームズという型番を押されて暗い密室で過ごしていた記憶と、真白の部屋に俺と新羅とセルティがいて、彼がしてやったり顔で自由だよと声をかけられた記憶。それが恐らく自分の出生にまつわる数少ないエピソードだ。


しかし自分にとって、そんなのどうでもいいし今があればそれでいい。
新羅の部屋で見た写真の中の、セルティと新羅に囲まれ困った顔で笑う竜ヶ峰帝人という少年に本能が疼いた。一目で見て、これ俺のだな、と頭で考えていたのを覚えている。

「新羅、どうしても欲しいヤツがいんだ」

そう言った後の俺の顔を見た新羅がため息をついて、獰猛な顔はそっくりだね、と言っていた。





傍にいる人は静雄さんのようで、静雄さんではない。
とても似ているけれど、別の人だ。ホストのような軽い雰囲気を持った人だけど、彼は自分に優しく色のある男性だった。煙を吹かせる動作は変わらないのに、ふ、と吹かせた後で口の端を上げて雄々しく微笑むこの人にどうしてだか言い知れない色気を感じる。同性だというのに、こんなにも違うものか。僕が頬を掻いて、少し落ち込んでしまうと、彼はすぐに気がついて気にするなとでも言うように頭を撫でてくれる。


すごいなあ、と思う。
きっと彼は女性に好まれやすいのだろうとも。
そう考えたときにふと胸が痛んだが、僕は気がつかないふりをした。


「今日はロールキャベツです。キャベツ安かったので」

「おお。肉はちゃんとあったか」

「はい。安売りの・・豚ですが」

「構わねぇよ」


デリ雄さんというこの静雄さんによく似た人は、四ヶ月程前から新羅さんの頼みにより同居している人だ。静雄さんとの直接の関わり合いはあるような無いようなで新羅さんはごまかしていて、セルティさんが何だか遺伝子操作だのクローンだの騒いでいたが、当の本人は少し笑った後で僕によろしくと言ったのを覚えている。


静雄さんとデリ雄さんは未だに遭遇したことがないらしい。
そうなのも、デリ雄さんは僕の家から一歩も外へ出ようとしないからだ。気が滅入らないのか聞いてみても、ここは居心地が良いから、と誤魔化されるだけ。


監禁しているようで僕の方が気分が悪かった。
なので週に二度か三度ほど散歩を一緒にしているが、時間帯は深夜のみ。それも誰もいないような時間で、僕とデリ雄さんは夜の住宅街をふらりと散歩する。最初の頃は強く誰もいない時間がいい、と言ったデリ雄さんに首を傾げたが、それもそのはずだ。
静雄さんとうり二つのデリ雄さんが人の多い時間帯に歩きでもしたら、臨也さんや見知らぬ不良やチーマーたちなどに襲われるかもしれない。


デリ雄さんの腕っ節は静雄さんと同様強いはずだ、と新羅さんは言っていたけれど、デリ雄さんは静雄さんにも迷惑がかかるし、強いから無闇に振るうわけにもいかないだろと笑っていた。彼は自制ができるらしい。静雄さんとは違う心の強さである。


静雄さんが自虐的な精神を乗り越えた後の容認された力による強さと優しさを持つならば、デリ雄さんはその雰囲気に似合わずの少し茶目っ気のある紳士的な優しさと飄々と支える強さを持っているようにも感じた。



「デリ雄さんが来てもう四ヶ月ですね」

「早いもんだ」

「ええ、本当に。でも、ほんと僕びっくりしたんですよ。静雄さんとうり二つだったから、デリ雄さん」

「まあ出生に関しては俺は本当によく知らないから、新羅にでも聞いてくれると有り難ぇな。っつっても、今更放り出されても、ちぃっと困るんだけどよ」

「放り出すなんて、そんな」

「帝人はいィー子だ」

「わ、ちょ、デリ雄さん!子供扱いですか!」

「悪ぃ」

「悪いと思ってませんよ、ね・・・!」


妙に語音をのばして、デリ雄さんは僕の頭を撫でる。
僅かに犬歯を見せて笑うその姿に、本当に静雄さんとは違うんだなあと感嘆せざるをえない。


最近ではデリ雄さんと静雄さんの違いもはっきりついて、デリ雄さんの持つ独特な雰囲気に飲まれそうになることもある。どうにも色気のある人なのだ。ふとした言葉で顔を赤くさせられることも稀ではない。
最初は静雄さんと対比するようにして、どう接していいのか分からなかった。だけど、デリ雄さんは気さくで軽々と僕に対しての壁を取っ払い、兄のように接してくれる。今まで一人っ子だった身にとっては少々くすぐったいが、それがどうにも嬉しかったから受け入れないわけにもいかなかった。


「野菜はもやしで」

「なるほど。もやしか。帝人だな」

「それ聞き捨てなりません」

「安心しろ。もや・・ああ、いや、帝人は美味しくいただいてやるよ」

「デリ雄さん笑った顔、ちょっと怖いですよ・・・!僕はもやしじゃありませんからね!」




作品名:牙を立てるその日まで 作家名:高良