鉄の棺 石の骸3
残りの三皇帝、ホセとプラシドが地上からルチアーノに呼びかける。ルチアーノがZ-oneで遊び始めてかれこれ三十分は経っている。
「私は疲れていませんから、まだまだ大丈夫ですよ。君たちも私に乗ってみますか?」
「えっ……ちょっ」
瞬く間に、三人ともZ-oneの手のひらに収まった。
「ほら、この通り」
「Z-one、あまりお戯れは……」
「……っ」
ホセが苦言を呈したが、彼もプラシドも満更ではないようだ。三人はすぐに大人しくなった。
「Z-one、腕は大丈夫なのか?」
「君たち全員分の体重なら、楽々運べます」
「百人乗っても大丈夫ー?」
「……そこまで手のひらの面積広げるとなると、バランスが取れなくなりますよ」
「巨大ロボットを作って、フライング・ホイールをコックピットに取り込むのは?」
「プラシドも、たまには面白いこと言うんだねー! ひゃははは」
「たまにはとは何だ、たまにはとは」
「合体は、男のロマンだな。儂にも覚えがある」
ふよふよと浮いていたZ-oneが、ぴたっと動きを止めた。
「もしかして、「君たち」、ロボットアニメも好きですか……?」
三人は顔を見合わせ、ルチアーノが叫んだ。
「Z-one、何で知ってるのー!?」
「それはまあ、君たちの創造主ですから」
旅の餞別代わりに、今度三人に合体マシンのプレゼントでもしてやろう。
Z-oneは頭の中で早速ホイールの設計図を組み始めた。
Z-oneは大好きだ。Z-oneの話す英雄伝説も好きだ。でも「彼」のことは……。
ロボットとなった今も、アポリアは思う。
何故、人類は彼の言葉を聞き入れなかったのか。
何故、人類は彼を信頼してくれなかったのか。
何故、人類は彼に己を捨てさせたのか。
不動遊星なんて、大嫌いだ。
Z-oneを苦しめる英雄など、この手でうち滅ぼしてやる。
跡形もなく、この世から消えてしまうがいい。
――だがZ-one、君はそれを望まない。
(END)
2011/2/26