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escada

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 水谷が欲しい物を考えている間、オレはかなりそわそわしていた。てっきり即効欲しい何かを言うと思っていたのに、水谷は口ごもり、黙り込んで考え事をしてしまう。
 じれったいけれど、水谷がオレから何かもらうことを考えているときは、その頭の中で少なからずオレのことを考えているのだろうと思うと何だか嬉しい。オレはこの状態が嫌いじゃない。むしろ水谷の中で居場所を得たような気がして好ましいぐらいだ。
 「……ほんとに春になっちゃうね」
 「だよねぇ」
 願い事はいつか打ち明けられる日が来るのだろうか。その時水谷が欲しい物が何なんて検討もつかないけど、何だって叶えてやりたい。
 「……オレ結構うざくね?」
 「そんなことないよ、よく考えて決めてくれたほうがオレも嬉しいし」
 「栄口はやさしいなぁ……」
 今日もオレと水谷はそういう些細な約束事で繋がっている。
作品名:escada 作家名:さはら