二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
みとなんこ@紺
みとなんこ@紺
novelistID. 6351
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

Hey Mr.travellin' Man

INDEX|1ページ/16ページ|

次のページ
 
*




カタタン、カタタンと。
規則的な振動が伝わってくる。同じ調子で揺られていれば、何故か睡魔に襲われてくるのは何故だろう。
ともすれば自然と眠気に襲われそうな陽気の中、傍らからの不穏な空気に、彼はようやく視線を上げた。
「・・・・・・。」
辺りには如何とも言いがたい硬質な空気が流れている。
主に一人の人物から発される不機嫌オーラのせいで。
ほとんど殺気に近いそれに、その一角に近寄る者はいない。
そういえば先ほどまで通路を挟んで対岸にいたはずの家族連れが、いつの間にか2つほど奥の座席に移動している気がする。普通にしていればこちらへ視線が届かない辺りだ。
…どちらかというと、その発生源の視界に入らないくらいの距離、とも言えるかもしれないが。
まだ座席が空いているタイミングでよかったな、と。まぁ、あんまりのんびり構えている場合でもないかもしれないが。
その発生源の射殺さんばかりに気合の入った視線を一身に浴びていた男は、そういえば車中の共にと旅立ち前に頂いたものがあったな、と思い出す。
ごそごそと取り出した小振りなオレンジを目前に差し出してやれば、いきなり現れた鮮やかな色に目を奪われたか、一瞬視線が逸らされ、
「あんた…っ!もが」
ち。
どうやら余計怒りを買ったようだった。
しかし結果として子供の口を塞ぐという大役を果たしたオレンジから手を離し、「迷惑になるからもう少し静かに出来るかね」と大人は鷹揚に言い切った。
「もごー!」
「ははは、さすがに何を言ってるか判らないなぁ」
「むぎー!!」
「もう汽車は走ってるからねぇ、流石に表には出れないな」
小振りとは言え、結構な大きさのオレンジで容赦なく子供を黙らせた大人は、無駄に爽やかな笑みを浮かべて実にすんなりと受け答えしている。
いつもの事なので、何を言っているのか予測が着くだけなのかもしれないが。
「…あの」
「何かね、アルフォンス君」
「たぶんそれ以上は限界かと…」

パン!

その声に重なるように、至近距離から耳慣れた音が。
しかし弟が、あ、マズイと思った瞬間に、動いたのは男の方が先だった。
何をしようとしたかは知らないが、何かの錬成を発動させようと合わせた手の上から更に手を覆って、動きを封じてしまった大人が、覗き込むようにして笑っている。
発動しようにも手を抑え込んでくる男の力は存外強く、エドワードは一つ舌打ちをした。手を合わせられないようにするとかはままあったが、流石にこの封じ方は予想外だった。まぁ手を取られても別の手段で反撃すればいいか、と体勢を入れ替えようとした矢先、エドワードは一端動きを止めた。
覗き込んできていた男の目が、割りと真摯なものだったからかもしれない。
「…すまない。今はちょっとここであまり目立つのはまずくてね」
謝るからここは引いてくれないか。
とても謝っているようには見えない調子だが、一応本気では言ってるっぽい。

・・・というか、何か、あるっぽい。

む、と押し黙ったエドワードの沈黙を了承と取ったか、男はそっと手を離すと何事もなかったように席に着く。
言いたいことは多々あれど取りあえずは途中まで思い浮かべていた構築式を霧散させて手を引くと、エドワードは眉を潜めたまま、無言で座席にもたれ込んだ。
「・・・覚えてろよ」
一つ、釘を刺す事は忘れずに。




作品名:Hey Mr.travellin' Man 作家名:みとなんこ@紺