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前世だとか解らない!

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真田の旦那が、電波を受信しちゃった。
そろそろかな、とは思っていたから、俺様は別にそのことには驚かなかった。
寧ろ、まだか今かと、期待とも恐怖ともつかない感情で受験勉強の集中を乱していたくらいだから、いっそ落ち着いたくらいだ。
がらん、と衝撃に槍を取り落とした姿をきっと俺様はずっと忘れないだろう。
ただ、周囲を見渡し、俺様を見つけて「・・・戦は、もう無いのか・・?」と不思議げに口を開いたことに驚かされた。
俺様や武田の将たち、何よりお館様が前世と変わりなく周囲にいるということで、今生と前世との区別がつきにくくなっているらしい。
元からアレな言動ではあったけれど、あの時代がかった喋り方は、幼い頃にホームステイしていた外国人の音楽家が時代劇にハマって、一緒にあの言葉遣いを憶えてしまったのだとかで対外的な言い訳は一応立ってたんだけど。
・・・更に混乱を極めてしまっているあれでは、まるっきり電波男と指差されても致し方ない有様だ。
「伊達ちゃんにはどーしたもんかな~?」

どんっ。
ばさばさばさっ。

「・・・あ・・。」
足元に、集めたのだろうノートがぶちまけられていた。
「わ、ごめん!」
廊下を歩きながら悩んでいて、誰かとぶつかってしまったのだ。
急いでしゃがみ、かき集めながらちらりと目線を上げる。
と、一瞬だけ、俺様は全身硬直してしまった。
即座に、より速やかに丁寧にノートを集める。
ああ、折角三年生まで無関係でいられたのに、関わってしまった・・・。
「・・・ううん、いいの。市が、悪いの・・・。」
しゃがみこんでゆっくりと白い手がノートをやはり集めている。
伏せられた睫が長く、白い面はただ下を俯いてノートばかりを見ている。
「いや、俺様も考え事してたから注意散漫だったし!ほんっと、ごめんなさい!!」
ダラダラと俺様は冷や汗を掻きながらノートを集める。
どうやら男女別に分かれていたらしく、さりげなく、比較的遠くに散らばっている男子のノートを集めていく。
「・・・あなた、いいひと・・?」
手間取りそうな遠くのノートばかりを集めているのを見て、そう思ったらしい。
「や、ふつーだよ。ていうか、本当に俺様のせいだと思うし。」
「・・・普通は、みんな・・市のせい・・・。」
「・・・あー。ちょっとのんびりやさんみたいだもんね。」
俺様は、どういったものか、と言葉を選びながら呟いた。

ぶつかった相手は、織田市という、一年生のときからチェックを入れていたヒトだった。
目立たないから一年の時には、伊達ちゃんすら存在に気付かなかったが、電波受信をしちゃってるみたいなヒトだった。
性格は生まれ変わったからと言って変わらない。それはきっと誰でもそうらしい。
おっとり、のんびり、悪く言えばトロくてイライラしそうで自虐的な、所謂いじめられっこのステレオタイプだ。
問題は、むかーしと同じで、その気も自覚も無いのに毒電波を発してしまうところだった。
俺様はコノヒトを初めて見たとき、満開の桜が明るい中で、ぞわりと背筋を粟立てた。
そのとき脳裏には、入学早々に絡まれたという噂が思い出されていた。
その絡んだ相手が翌日から学校を休んでいたという話も。
相手は一週間くらいで復学していたから、そのときは軽くで済んだらしい。
げっそりと頬をこけさせた姿は、どんな悪い風邪にかかったんだと評判になった程度だった。
が、こればっかりは前世の記憶に感謝して、俺様は中学時代の織田市をなんとか調べた。
・・・結果は惨憺たるモノで、不登校児、引きこもり、精神科に通ってるらしいという噂の学生が、10人を超えた。
どれもこれも、イジメから助言から織田に絡んだからだと、地元では有名な話だった。
穏やかに、楽しく蔭りの無い高校生活を過ごしたかった俺様は悩んだ。
悩んだ挙句、第一に決めたのは、まずコノヒトに関わらないこと。
そして、コノヒトが毒電波を発さずに済む環境を整えることだった。
西にイジメの噂があれば、騒動を起こしてそれどころじゃない状況にし。
東に嫌がらせの算段があると聞けば、かっこ悪いと周囲に軽蔑されるようにし。
なんだかんだで教師に情報をリークしちゃ、注意してもらうようにした。
結果、教師からは良い情報屋として秘かに評判を得て、他の生徒の噂まで遣り取りするよう頼まれたりした。
今じゃ歴とした取引相手である。対価は情報。
テスト問題なんかは流石に無理だけど、学校での評価基準だとか、予算配分の都合だとか、教師間の仲だとか。
図書の予算配分が大目だと聞いた年には、伊達ちゃんと二人でここぞとばかり司書にたくさん要望を出しておいて、ほぼ全てのリクエストを受け付けてもらっちゃったりした。

「どうした、市?」
「・・あ、浅井くん・・・。」
上から声をかけられて、二人同時に顔を上げれば、男子生徒が一人、眉を顰めてこちらを見ていた。
浅井長政である。
俺様にはちょっとだけ、むっつりとした顔と対照的に、仄かに口元が緩んだ白い顔が見えた。
「・・・あの、ね、その・・・」
要領得なく説明しようとする様子を遮って俺様は口を挟む。
「いやー、俺様がぶつかっちゃったからノートぶちまけちゃって。ごめんね、浅井君、待ち合わせでもしてたんだ?」
「そうだ。遅いから迎えに来たぞ、市。ノート提出にいつまで時間をとっている。」
口調は居丈高だが、別に責めているつもりは無いのだろう。
不思議なことに、それは言われている方にも伝わっていて。
「・・・・・ごめんなさい・・心配かけて・・・。」
と、はにかんだ。小動物のような可愛らしさだった。
「な、何を言う!心配ではない!もう少し機敏になれと、」
「あーはいはい。ほら、ノートもこれで集まったし。二人で届けてらっしゃいな。」
幸か不幸か、浅井は目立った生徒に分類される。
自然、伊達ちゃんを通して知己ではある。
だからこそ、少し砕けた態度で接してこの場の解散を促した。
今生でも寄り添いあう二人は、仲の良い友人として周囲に認識されている。
まあ、毎日一緒に校門を出て行っているんだから当然だ。
イジメや何かが起きそうなとき、相手が誰であろうと構わず、この男は正義の使者よろしく、必ず強引に介入してくる。
丸め込まれることも多いようだが、厄介というか面倒なことには変わりない。
そんな男がいつもボディガードよろしく一緒にいるので、自然、毒電波が発生するような環境は少なくなった。
二年生のクラス替えで俺様の意見を採用してくれた学年主任バンザイ。
穏やかで幸せな青春時代サイコー。・・・狡っからい自覚は俺様にもあるけど。
「・・・ありがとう・・ええと・・」
「猿飛だ。猿飛佐助。騒動ごとを起こすのが好きな男だ。悪ではないが、あまり関わらん方がいいぞ。」
「何ソレ!イベントが好きなだけだよっ!?」
冷ややかーに紹介とも言えない説明をされて、俺様は思わず立って声を上げた。
そりゃ、伊達ちゃんと生徒会がらみで益体も無いイベントを起こそうとしちゃ教師陣と歯を剥きあったりしてるけど、そんな疫病神みたいな紹介ってないじゃない!!
「・・・浅井くんの、お友達・・?」
「んーと、知り合い?」
「知らん。」
作品名:前世だとか解らない! 作家名:八十草子