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前世だとか解らない!

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「冷たいなーもう。まあ、お友達って言うほど仲良くないけど。名前で呼んだりしないし。」
と、気付く。
「そういや、そっちも名前で呼ばないね?」
「・・・だって・・市には、浅井くんは一人だから・・・」
はてな?と首を傾げる俺様に、やはりまた、要領得なく説明をしようとするが、それより先に浅井が言った。
「織田の家には他に兄弟が居て、そやつらとも私は付き合いがある。逆に市は、浅井の家では、私とだけ付き合いがある。私は女兄弟ばかりだからな。」
「ああ、なるほど。」
と、俺様が納得していると織田君がノートを抱えて立った。
「・・・じゃあ、ありがとう・・・猿飛くん・・」
ぺこり、と短髪の頭だけで小さくお辞儀をして歩む姿は二人一緒だ。
「仲がいいんだからなーもう。」
ちょっぴりアテられたような気がして、俺様は頬を掻いた。
生まれ変わって、男同士の友情を築いちゃってる姿は何だか羨ましい。
夫婦だったころより、健全さがあるような気がするのだ。
多分、電波は受信しちゃってるんだろうに、それはそれと割り切って一緒にいるみたいな。
「そうだよねー。旦那だって、割り切るべきかどうか、多分悩んでるんだろうし。」
大半の、皆が通る道がそこだ。
迎合して、今生にまで過去を持ち出すのは不健全だ。
だって他の生きてるヒトにはそんなの関係ない。
けど、前世を全て、関係ないと否定するのは、どうしたって心が嫌がる。
だったら割り切ることが肝要で。
でも、どうやったら割り切れるのか、解らなくて。
「大体、旦那の場合、割り切る必要すらないもんね。何にも変わらなくて。俺様の場合は逆だったけど。」
そう、俺様の場合は、前世を関係ないと言い切ってしまえたから、こんがらがった。
冷静に、今の生活に何にも関係ない、と分かってしまっていたから。
だから今更に、昔の関係性が現在の関係に関わってしまって異物を排除したくなったのだ。
そのくせ、心は昔も今も慕わしいヒトを求めて。
けど、結局は昔の関係も今の関係も変わらない。
少なくとも、旦那に関しては変わらないのだ。
例えば、伊達ちゃんと仲良くなったのは、今生の関係で。
でも、旦那と昔のような関係を築いたのは、間違いなく今の猿飛佐助で。
「どっちにしたって今の生き方が大事なんだから、割り切ることが大事なんだけどねー。ほんと、旦那どうしよう。」
あの人に関して言えば、多少の電波っぷりしか問題が無いような気がする。
いや、それはそれで、他の今生の人には迷惑だろうけど。
困ったなー、と俺様は懲りもせず悩みながら歩いて、今度は伊達ちゃんにぶつかった。
入試直前なのに学校に呼び出された、ちょっとピリピリした伊達ちゃんに叱られながらとりあえず、やっぱまだ旦那が昔を思い出したことは内緒にしよう、と俺様は決めた。
作品名:前世だとか解らない! 作家名:八十草子