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こらぼでほすと 襲撃5

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ソレスタルビーイングに、王留美から連絡が入った。内容は、「ロックオンは重篤で、情報漏洩の依頼は不可能。」 だったから、スメラギもフェルトもティエリアも驚いて慌てた。
「重篤? 重篤って・・・この間、ぴんぴんしていたのにぃ? 」
 一番最後に顔を合わせているスメラギが、素っ頓狂な声をあげた。フェルトは、じんわりと涙を浮かべているし、ティエリアも二の句が告げない。
 まさか、エージェントがウソの報告をしてくるとは思えない。ティエリアは、また体調を崩したのだろうと思ったのだが、重篤といわれるほどの崩し方というのが心配だ。
「スメラギ・李・ノリエガ、フェルト・グレイス、たぶん、ロックオンは大丈夫だ。大方、何かで無理をして寝込んでいるに違いない。」
 だが、ここで、他の二人と同じように動揺するわけにはいかないのが辛いところだ。
「・・・・そうよね・・・・回復が遅いって言ってたから、そういうことよね。でも、これでアレルヤの情報は奪取不能ということになった。・・・ヴェーダが完全に使えれば、すぐにでも特定できるっていうのに、口惜しいわ。」
 ヴェーダは完全に使えないということはなかった。ある程度は使えるのだが、百パーセント使えるということはない。誰かに掌握されているのは間違いのない事実で、重要な部分はシャットダウンされてしまっている。
「使えないものを悔しがっても仕方ない。何か他の方法を考えよう。・・・・とりあえず、アレルヤの生命の危機はないというのは確定しているんだ。」
 『吉祥富貴』側から、なんのリアクションもないのは、そういうことだ。だから、アレルヤは生きている。それに、これだけ時間が経過してしまったら、情報も消されているから、追跡自体が困難になってしまった。もう慌ても、どうしようもない段階だ。じっくりと探すしかない。
「・・・ロックオンは、本当に大丈夫なの? ティエリア。」
「フェルト、そちらは問題ない。・・・・そうだ、きみが訪問するというのは、どうだろう? 」
 フェルトは長いこと、休暇を取っていない。それに、ロックオンにとっても妹みたいに可愛がっていた相手だ。降下して逢いに行っても、フェルトなら遮られることはないはずだ。
「わかった。行ってくる。そして、必ず、ロックオンにアレルヤの居場所を教えてもらう。」
 ひとりでは、滅多に地上に降りないフェルトだが、自分で役に立つなら、と、頷いた。
「いや、ロックオンの様子だけ見てきてくれ。情報漏洩のほうは頼まなくていい。・・・・むしろ、アレルヤの不在は気取られるな。」
「え? 」
「体調を崩しているロックオンに、そんなことを伝えたら、無理してでも、俺たちの欲しい情報は手に入れてくれるだろうが・・・・余計に具合は悪くする。だから・・・」
 わかっちゃいるのだ、ティエリアも、今のロックオンに諜報活動なんてさせられるはずがない。それでも動ける状態なら、多少の無理をしても情報を確保してほしかった。アレルヤがいないから、余計に、そう思っていた。だが、それで、さらに具合を悪くさせるのは、ティエリアだってやりたくない。
「こちらから、ラクス・クラインに連絡して、きみを逢わせてくれるように頼んでみよう。ただし、アレルヤに関する一切の依頼はしないという条件になるだろうから、そうしてくれ。」
「そうね、ラクス・クラインなら、その条件なら接触させてくれるでしょう。ねぇ、フェルト。もし、ロックオンがぴんぴんしていたら、こっそり伝えてくれるかしら? あなたとロックオンが協力するなら、どうにかなると思うの。でも、本当に具合が悪いのなら、何も言わなくていいわ。・・・こういうことならいいでしょう? ティエリア。ロックオンが、組織の一員であるなら、それぐらいの依頼は妥当だと判断するわ。」
 ロックオンが一時リタイヤだというなら、地上でのミッションは指示できる、と、スメラギは考えた。
「それで結構ですが、ほぼ無理だと申し上げておきましょう。あの人が寝込んでいるとしたら、本当に具合が悪いはずだ。」
「でも、この間は元気にしていたわよ? 」
「だらだら日常生活を送っている分には問題はない。あなたが降りた時は、ちょうど体調が安定したのだと思います。」
 とりあえず、ラクス・クラインに連絡を、と、ティエリアは、フェルトに指示を出す。だが、繋がらない。通常回線でなく、緊急通信でも、相手からの応答はない。こちらからの連絡は、すべて切られているらしい。
「場所はわかっているんだから、勝手に出向いてはダメなの? 」
「ラボまで、フェルト1人では無理です。」
 ラボは、特区内ではないから、そこまでの移動手段が必要になる。王留美に、再度、依頼すれば、それはどうにかなるだろうが、直接では逢わせてもらえない可能性が高い。上手くいかないな、と、ティエリアが考え込んでいたら、刹那が戻って来た。ようやく、エクシアの調整が終わったらしい。
「どうした? 」
「ロックオンが寝込んでいるんだ。」
 まだ、刹那には、アレルヤロストを伝えていなかった。だから、そちらではなく、ロックオンのほうを先に伝えた。
「また、無茶をしたんだろう。キラたちが、どうにかしてくれる。気にするな。」
 そして、刹那は、こんな調子だ。親猫の体調不良というのは、毎度のことだから、いちいち気にしない方向になっている。以前なら心配で、すっ飛んでいたのに、えらい変り様だ。だが、ティエリアには、その動かない表情の中に、微妙な揺らぎがあることを感じる。本当は心配しているのだ。
「それだけじゃない。アレルヤをロストした。」
「何? 」
「アレルヤの所在は、キラたちが把握している。だが、その情報の開示は拒まれた。ついでに、ロックオンとの接触も禁じられている。」
 ここまでの経緯を話したら、刹那は、ぎろっとティエリアを睨んだ。余計なことをした、という非難の目だ。
「なぜ、キラに直接、尋ねない? 」
「なに? 」
「それなら、直接、キラに尋ねればいいことだ。いちいち、ロックオンを動かすな。」
「だが、連絡が通じないんだぞ? どうやって尋ねろと、きみは言うんだ。」
「降りて、ラボに行けばいい。どうせ、キラはラボにいる。そんなことはわかっているだろう。」
 元々、刹那はエクシアの調整が終わったら降下するつもりだった。世界の変革を、その目で確かめておきたいと思っていたからだ。降りたら、一端、親猫の顔を見て、出かけるつもりだったのに、その計画が崩されたのでも怒っている。
「だから、フェルトに、それを。」
 ついでに、ティエリアの混乱ぶりも理解している。以前のティエリアなら、組織の安全のためなら、ロストしたアレルヤを殺してでも機密は守れ、と、エージェントに指示したはずだ。無事に奪還したいと思っているのはわかるし、ロックオンと接触できなくて不安も感じている。だが、それでもマイスターのリーダー代理として考えて行動しようとしている。以前より強くなった分と弱くなった分が同等に存在している。
「フェルト、ロックオンに逢いたいか? 」
「逢いたい。」
作品名:こらぼでほすと 襲撃5 作家名:篠義