こらぼでほすと 襲撃5
「これ、うちでは無理だよ、キラ。モルゲンレーテのほうでやってもらわないと。」
「エリカさんにお願いしないとね。」
「無茶するんだから。肺は大丈夫か? 」
「ちょっと痛い。アバラのどっか折れてるかもね。」
重力下での急制動は諸刃の剣だ。それができるだけの耐ショック装置がなければ、肺を潰す可能性もある。ストライクフリーダムには性能のいい耐ショック装置があるが、それでも、あれはヤバイだろう、と、アスランは心配した。急加速に急制動と連続だから、かかるGも倍増している。
「もうちょっと刹那が実戦に慣れたら、ヤバイかも? 」
「本気でやることは、もうないと思うけどね。」
ラボにMSを戻して治療してもらおう、と、アスランが言うと、キラも、それには従った。ちなみに別荘は、ただいま無人になっている。アレルヤロストから、こちら、刹那の急襲を予想して、別荘の管理をしている人間たちは避難してもらっていたからだ。
「刹那の弱点って、ママだよね? 」
「そりゃそうだろう。それがあるから、強くもなるんだからさ。」
心理戦なら、まだ、どうにかなりそう、と、キラは笑っている。いや、あいつも、相当な経験しているから、それも危ないぞ? と、アスランが答えて、ラボへと機体を進めた。その後から、周囲を警戒していたハイネのオレンジの機体も降りてきた。どうやら、外には漏れなかった様子だ。
敵ではないので、刹那をエクシアから降ろしたら、休憩室でお茶にした。刹那捕獲の連絡はしたから、ようやく、計画の終了になる。エターナルは、そのままプラントのドックへ帰港し、歌姫の本宅の警戒態勢も通常モードに戻す手配をした。
それから、刹那に『吉祥富貴』の活動目的を説明して、親猫の容態についても説明した。
「今、心配させると、本気で寝込むからやめてほしいんだ。体調が落ち着いたら、こちらから情報は与えておく。」
それらの説明をアスランがする。
「それでも、おまえらのママは寝込むんだろうけどな。今よりはマシだろう。その頃に、誰か降ろしてもらえると有り難いんだが、おまえ、来てくれるか? 」
刹那かティエリアが顔を出してくれれば、親猫も少しは気が紛れるだろう、と、鷹は説明した。こういう場合は、じじいーずより子猫が適任だ。
「ティエリアを降ろす。俺は、これから放浪するから戻れるかどうかがわからない。」
そして、刹那も放浪することを伝えた。世界の変革は、平和をもたらしたとは、まだ言える状態ではない。不穏な一団が活動をしているのは、『吉祥富貴』でも情報を掴んでいる。
「エクシアの修理をしてからだね。それまでは、ママの世話をしてあげてね。」
エクシアをモルゲンレーテへ運んで修理だけしてもらうことにした。ただし、本社ではなく、オーヴの秘密ファクトリーだ。そこは、キラたちの機体のオーバーホールやエターナルの定期点検なども引き受けているところで、オーヴ本国より、この特区に近い島にある。刹那の組織は地上にも、待機所はあるのだが、本格的な修理なんかのできるファクトリーは有していない。
「あちらに依頼を出しておくから、エクシアの定期点検とかオーバーホールには使っていいぞ。いくら太陽炉は永久機関だといっても、その他の部品は磨耗するからな。」
そういことなら、と、鷹が、そう提案した。世界を放浪するなら、そういう定期点検は重要だ。組織が再始動する時に、よろよろになった機体では意味がないからだ。そういう意味の技術提供は惜しまない。刹那が無事でいるためには必要だと判断する。
「フェルトが降りてくる。ロックオンと逢わせて欲しい。」
最後に、今現在、こちらに向かっているだろうフェルトについても説明した。寝込んでいるから、アレルヤのことは話せないだろうが、一応、釘だけ刺してくれるなら問題ない、と、鷹が許可する。
「ピンクのお嬢ちゃんだったな。」
「ああ、あの子か。可愛かったな? レイ。」
「俺は、あまり覚えてない。」
宇宙へ出向した面々は、フェルトのことを覚えている。刹那より年下の無口な女の子だ。任務というより、親猫の顔が見たいのだと、刹那が説明すると、鷹が、「ママは、一体、何人の子猫持ちなんだ? 」 と、冗談をかました。
作品名:こらぼでほすと 襲撃5 作家名:篠義