こらぼでほすと 襲撃5
「わかってます、ムウさん。それより、ママのほうは? 」
「今日は、熱があって寝てるらしいぞ。」
「国際会議が終わった後でよかった。開催中だと哨戒艇の数が半端じゃないからなあ。」
国際会議は、昨日、無事に閉幕した。実務者レベルの会議は、まだ残っているが、その程度なら警護も軽くなっている。カガリも昨日、オーヴに戻った。何人かのカガリン親衛隊は、ラクスの本宅に残留させているが、どうやら、その出番はないようだ。王留美側の動きもないので、陽動でもないと、鷹は判断した。それなら、目一杯、刹那を叩きのめすだけだ。
「遅くなりましたっっ。すぐに発進準備はじめます。」
シンとレイが駆け込んでくる頃に、刹那の機体も補足した。そろそろ大気圏に突入するだろう。
「せつニャンを捕まえてこい、キラ。」
「おっけー。」
キラも作業を終えて立ち上がる。鷹が、ここに残って、他の場所での異変には対処する。シンとレイは、MSでの周囲へのジャミングに持ち場へ発進する。アスランはキラの後方支援で、キラが上空に向けてフリーダムを発進させる。戦争は大嫌いなキラだが、MSでの戦闘は大好きだ。それも、最新鋭機のエクシアだから、やる気満々だ。
ものすごい勢いで下降していた刹那のエクシアが、急ブレーキ状態で、キラからの第一撃を退けた。いきなり、レールキャノンを撃ちこんで来るのは、いかがなものか、と、刹那も思う。
「キラ、アレルヤの居場所は、どこだ? 」
通信は、オープンになっているはずだから、まずは尋ねたいことを質問する。だが、相手は、答えない。
「あのね、刹那、ひとつだけ注意ね? 別荘で、ママは寝込んでるから、絶対に僕を外さないように。そうでないと、ママが怪我しちゃうから。それだけお願い。」
「わかっている。アレルヤの居場所だ。」
そう言いながら、刹那もエクシアを降下させる。キラは、別荘を背にしているから、そのポイントから移動させなければ砲撃ができない。ストライクフリーダムも、それがわかっているから砲撃してくる。常にエクシアの下の位置になるように動いている。機動性ならエクシアのほうが上回るはずだが、大気圏では、それも完全ではない。組み合ってしまえば、上も下もなくなるから、接近戦に持ち込もうと考えた。
「僕らは、きみたちの生命の危険について活動する。アレルヤは、生きてるよ、刹那。きみたちのシステムが完全になったら、わかる場所だ。救出するなら、きみたちがやって。僕らは、処刑命令が出ない限りは救助しないからね。」
オールレンジ攻撃が襲ってくるが、キラの口調は、のんびりしたものだ。
「だから、居場所を教えろっっ、キラ。」
こちらもビームを撃ち込みたいところだが、キラの背後には、まだ別荘がある。避けられたら直撃しそうな場所だから撃てない。
「教えない。・・・・僕らは、きみたちの組織の人間じゃない。だから、組織の活動に参加することはない。生きてるのを教えたのも、サービスなんだよ? 」
「くっっ。」
そのまま突撃体勢でストライクフリーダムに突っ込む。もちろんかわされることは計算のうちだ。そのまま別荘を背後にした瞬間に、ビームを撃ちこむが、これも、くるりとストライクフリーダムが反転してかわす。そのストライクフリーダムの青い羽根が広がって、ドラグーンが打ち出された。それらがエクシアを襲ってくる。あまり高度を下げれば、別荘に直撃しそうだから高度を上げるしかない。回避運動を取りながら、ドラグーンをひとつずつ撃破する。それに気を取られていたら、警戒警報が左手から上がり、突進してくるストライクフリーダムが映る。
ビームサーベルを手にしているから、こちらもビームサーベルを配備しようとして、ドラグーンからの直撃を受けた。
「本気出さないと、蹴散らしちゃうよ? 」
キラは本気だ。種割れモードなので、かなり本気である。バーサーカーまでいってないから、オールレンジ攻撃も外して撃っている。本気のバーサーカーモードだとドラグーンを犠牲にする形で、そのまんまオールレンジ攻撃で撃破しているだろう。一対一なら、刹那より場数を踏んでいるキラのほうが優勢だ。
体勢を立て直すべく、エクシアが急上昇する。そこへのレールキャノンの砲撃が追い駆けてくる。それらを避けつつ、ドラグーンを各個撃破した。
「キラっっ。」
「まだまだだよ、刹那。」
さらに、次のドラグーンが上昇してくる。それと共に、ストライクフリーダムも急上昇に転じている。それは加速が激しくて、大気圏を突破するつもりの加速に近かった。これで、別荘から引き剥がせると、刹那が思った瞬間に、ストライクフリーダムは半回転して制動をかけてビームサーベルでエクシアの腕を薙ぎ払って切り落とした。
・・・え?・・・・
あまりに早くて、対処ができなかった。警告音が腕の消失を知らせて、はっと逃げようとするが、がっちりと押さえ込まれた。これでは逃げようがない。
それから、今度はエクシアの背中から羽交い絞めにするようにして、急降下する。さすがに、そのまま叩きつけはしなかったが、押さえ込んだままで地面に降りた。
「さあ、もう降参して、刹那。」
パワーは互角だが、重量はストライクフリーダムのほうが重い。乗っかられる格好で地面に押さえつけられているから、反撃できない。なんせ、ストライクフリーダムは、まだエンジン全開でエクシアを地面に向けて押しているのだ。
「アレルヤは生きてる。それは、僕らが保証する。ただ、救出は、きみたちがやるべきことで、僕らはしない。それだけはわかってね、刹那。」
組織に加担するような真似は、キラたちには禁じ手になっている。今回のアレルヤロストの通報も、本来はやらないのだが、生死の有無だけは、と、キラが押し通した。だから、これ以上に手伝うことはできないのだ。
「それから、ママは、ここじゃないんだ。季節の変わり目で弱ってるけど、それだけだから。」
「・・・寝込んでるのか・・・」
ようやく、刹那は口を開いた。本当は、一番に尋ねたかったことだ。
「うん、雨がね、ママは雨が降るのと季節の変わり目に体調が不安定になるんだって。」
「・・・アレルヤのことは了解した。正直、ショックだ。現役を外れているキラに、ここまでやられるとは思わなかった。」
「あははは・・・・一応、訓練はしてるもん。それに、刹那、ものすごく別荘を気にしてたでしょ? それが敗因だよ。ああいう場合は、即効で相手を攻撃してから、立ち位置を入れ替えるのが、お。す・す・め。」
そう言って笑っているキラに、刹那も完敗だ、と、太陽炉を止める。かなりの激戦を潜ってきたつもりだったが、自分はまだ未熟であるらしい。エクシアが動きを止めるに伴って、上空から三機のMSも降下してきた。
「キラさん、甘すぎ。」
俺の時は、容赦しなかったのにさ、と、シンも笑っている。かなり余裕をもって刹那には対していたのは、他のものには判っていた。
「とりあえず、ラボへ運びます。刹那、そのまま搭乗していてくれ。」
ディスティニーとレジェンドが、エクシアを起こして運ぶ。ストライクフリーダムの横には、インフィニットジャスティスが降りてくる。その手には、エクシアの腕がある。
作品名:こらぼでほすと 襲撃5 作家名:篠義