覚えてていいよ
音楽聴きながらとか、人がざわつくファミレスかなんかで勉強しても頭に入りっこないという主張をオレは絶対信じない。信じないったら信じない。言ったのは阿部で、ついでに「そういう奴の気が知れない」とまで吐き捨てた。だから放課後マックかどこかで阿部と勉強しつつ、明日の数学のヤマを教えてもらおうというオレの浅ましい目論見は簡単に崩れ去った。
「水谷は人に頼りすぎ」
「だってオレ一人じゃなできないしぃ〜」
軽々と言ってのけたオレを眉間にしわを寄せた阿部が一瞥し、「じゃあな」というぞんざいな別れの言葉を投げかけ教室から出て行った。
数学なら別に誰かに聞かなくても何とかなるけど、問題はあさっての古典だ。居眠りしながら文字を書くと傾く頭の動きに合わせてシャーペンも揺れ、オレの古典のノートには無数のミミズが這っている。後で見返してもミミズは何も語らないし、授業の内容もそりゃ寝てるんだから当然わからない。
けど栄口は阿部と違って二つ返事で古典を教えてくれることを快諾してくれた。「うん、いいよ」だって。隣の肩を抱き寄せて「栄口愛してるぅ〜」とおどけてみせたら、栄口は「弟帰ってくるとうるさくて勉強できないと思うから、それまで」とオレが絡ませた腕を素っ気無くのけた。
栄口が教えてくれるのなら赤点はなんとか免れそう。なら明日の数学+2科目に集中すべきなんだろうけど、大体半分は取れるかなってくらい勉強したらオレの集中力はさーっと引いていった。いつもは風呂から上がると眠くて眠くて仕方ないのにテスト週間で練習がないことでオレにはまだ起きていられる体力が残っている。これからまたひとがんばりすれば少しはマシになるんだろうけどなんだか面倒で、それよりつけっ放しのテレビが映し出す水着のお姉さんたちが気になって仕方ない。オレはその、意味の薄いクイズ番組にまったく水着である必要性を感じない、ありがちな深夜放送を結局最後まで見て、明日あさってしあさってと続くテストの心配などさっぱり忘れて眠りについた。
そういうわけで今日のテストの手ごたえは微妙だった。でも微妙ってことはオレの経験上半分程度は取れてるってことだろう。我ながら嫌な体感だなぁ。それよりも今すっごい眠い。多分昨日調子に乗って深夜放送を見たからだけど、オレはその過去を悔やみたくない、だってお姉さんの胸の谷間は素晴らしかった…… あっ、今オレ意識がなくなってた。やばいやばい。…………。
ホームルームが終わり開け放たれたドアから続々と1組の生徒が出てきてもオレは廊下の壁に背を預けたままで、栄口から声を掛けられるまで目を閉じてゆるゆる惰眠を貪っていた。
「もしかして寝てた?」
「ううん、ぼーっとしてただけ」
つかなくてもいい嘘を苦し紛れにつぶやいて隣を歩く。これから栄口んちで古典教えてもらうのにこのザマはよろしくない。
「水谷は人に頼りすぎ」
「だってオレ一人じゃなできないしぃ〜」
軽々と言ってのけたオレを眉間にしわを寄せた阿部が一瞥し、「じゃあな」というぞんざいな別れの言葉を投げかけ教室から出て行った。
数学なら別に誰かに聞かなくても何とかなるけど、問題はあさっての古典だ。居眠りしながら文字を書くと傾く頭の動きに合わせてシャーペンも揺れ、オレの古典のノートには無数のミミズが這っている。後で見返してもミミズは何も語らないし、授業の内容もそりゃ寝てるんだから当然わからない。
けど栄口は阿部と違って二つ返事で古典を教えてくれることを快諾してくれた。「うん、いいよ」だって。隣の肩を抱き寄せて「栄口愛してるぅ〜」とおどけてみせたら、栄口は「弟帰ってくるとうるさくて勉強できないと思うから、それまで」とオレが絡ませた腕を素っ気無くのけた。
栄口が教えてくれるのなら赤点はなんとか免れそう。なら明日の数学+2科目に集中すべきなんだろうけど、大体半分は取れるかなってくらい勉強したらオレの集中力はさーっと引いていった。いつもは風呂から上がると眠くて眠くて仕方ないのにテスト週間で練習がないことでオレにはまだ起きていられる体力が残っている。これからまたひとがんばりすれば少しはマシになるんだろうけどなんだか面倒で、それよりつけっ放しのテレビが映し出す水着のお姉さんたちが気になって仕方ない。オレはその、意味の薄いクイズ番組にまったく水着である必要性を感じない、ありがちな深夜放送を結局最後まで見て、明日あさってしあさってと続くテストの心配などさっぱり忘れて眠りについた。
そういうわけで今日のテストの手ごたえは微妙だった。でも微妙ってことはオレの経験上半分程度は取れてるってことだろう。我ながら嫌な体感だなぁ。それよりも今すっごい眠い。多分昨日調子に乗って深夜放送を見たからだけど、オレはその過去を悔やみたくない、だってお姉さんの胸の谷間は素晴らしかった…… あっ、今オレ意識がなくなってた。やばいやばい。…………。
ホームルームが終わり開け放たれたドアから続々と1組の生徒が出てきてもオレは廊下の壁に背を預けたままで、栄口から声を掛けられるまで目を閉じてゆるゆる惰眠を貪っていた。
「もしかして寝てた?」
「ううん、ぼーっとしてただけ」
つかなくてもいい嘘を苦し紛れにつぶやいて隣を歩く。これから栄口んちで古典教えてもらうのにこのザマはよろしくない。