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DMT

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おかしい。

自分は殴られることを期待していたのに。
それからも自分は色々と失敗をしましたが決して雲雀さんは手を上げませんでした。
苦笑とともに頭を軽く叩くだけです。

こんなはずじゃなかったのに!!
と思いますが、痛みを感じないその優しい感触にもなぜが胸にキュンとくるものがありました。

いやいやいやこのままじゃいけない。
家庭教師がこの事を知ったらむしろそのままでいてくれという声が聞こえそうですが
なんとかしなければいけません。

原点に戻ろう。
自分が彼のあの一撃が欲しんだとばかりに再び群れたり遅刻をしたりするようにしてみましたが、
やっぱり彼は自分には攻撃してきません。
群れていた時は山本や獄寺君には攻撃するくせに自分には一言「群れるんじゃないよ」
と言うだけです。

うれしい…でもそれだけじゃ我慢できない。

殴られてもいないのに感じた嬉しいという気持ちに首を傾げながら
雲雀さんとの日々を過ごしていましたが我慢できずにある日とうとう雲雀さんに
問いただしてしまいます。

「雲雀さんはどうして俺の事を殴らなくなったんですか??」

いつもは迷った風もなく質問には即答を返す雲雀さんが珍しく口ごもります。
ようやく言った言葉も
「・・・君、僕に殴られたいとでもいうの?」
という歯切れの悪いものでした。

ツナは直感します。
ここで殴られたくないと答えたらもう二度と殴られることはないと。
こういう時だけ超直感は便利です。
自分は殴られたいんだ、正直に答えてしまえ。

「はいっ俺、雲雀さんに殴られるの好きです!!」

直球です。
剛速球です。

「君、僕に殴られるの好きなの?」
「はいっ」
思わず言葉にも力が入ります。目もキラキラしてしまいます。
だって大好きなんです!我慢できないんです!

それを見てぷいっっと顔をなぜかそむけてしまった委員長が言います。
「でもダメだよ。僕にはもう君を殴れない」
「何でですか!!」
なんて絶望的な言葉でしょう!もう二度と彼の攻撃を受けれないなんて!!

「だって・・・だって好きな子には優しくしたいものでしょ」

へっ・・・・??

雲雀さんの口から理解不能な言葉が聞こえました。
好きな子?
思わず首をことっと可愛く傾げてしまいます。

すき・・・隙・・・鋤・・・好き!?!

「えええええええええええええ!!!!ちょっと待って下さい、
今ちょっとおかしな言葉があったような気がするんですけど!!」

「何がおかしいの?僕が君の事好きだったらおかしい?」

「おかしいです!」

「そんな事言われても好きなものは好きなんだ。だから君をもう殴る事は出来ないよ。
傷つけたくない」

「そんな!!」

「君は僕の事嫌い??僕の事が好きでよくここへ来てくれてたんじゃないの??」

「いや、俺はあなたに殴られに来てたんですけど!」

「何それ。じゃあ殴らない僕は好きじゃないって事?
じゃあ僕は君の事好きなのに、好きになのに殴らないといけないの?」

「うっあっへっっ…」

「ねぇ殴らない僕は嫌い??」

きゅーん。

殴られてもいないのにまた胸が高鳴りました。

そうです。本当はどこかで気づいていたんです。
雲雀さんだから殴られて最高に気持ちがいい。
雲雀さんだから殴られなくても嬉しい。
雲雀さんだから……一緒にいたかった。

そう、最初の一撃をくらった時の胸の高鳴りは初恋の胸の高鳴りでもあったのです。
作品名:DMT 作家名:ケイ