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ユキナ・リュカ ~この世界~

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夜光杯



フラッと珍しく立ち寄った酒場では酒盛りでも始まっているのか、にぎやかだった。

「お、リュカじゃないか。こっちにこないか?」

その姿に気づいたフリックが声をかけてきた。

「ああ、うん。何?今日は一段とにぎやかだね。」

リュカは酒を注文してからフリックの横に座った。ああ、とフリックは答える。

「あいつがいるからな。」
「あいつ?」

リュカはコテンと首をかしげ、聞き返す。
従業員がお酒を運んできたので礼を言って、フリックを見ながらそれに口をつけた。

「ああ。ユキナだよ。」

人気者のユキナがいるだけでよくその場はにぎやかな楽しそうな場所になっているようであるが。

「彼?前から思ってたんだけど。あの子って未成年でしょ?飲ませていいの?」
「うーん、まあほんとはだめなんだろうがな、あいつ、けっこう強いし、なんか誰も気にしてないな・・・。」

その時、ビクトールがやってきた。

「ああ、笑ったぜ。おお?リュカじゃねえか。めずらしく喉でも乾いたかぁ?」
「やあビク。ていうか、あの子、お酒強いんだ。」
「ああ、まあな。といってもこの熊にはかなわんがな。」
「熊って言うなや。まあ、あいつの年で俺にかなおうなんざ10年は早えよ。」
「お前、どんだけユキナを飲ませてきたんだよ。」
「いや、まあ、そんなでもねえよ。」
「?どうしたの?」

ビクトールとフリックの会話にリュカがまた首をかしげた。

「ちょっとな。向こうで飲み対決をな。」
「ビク、お前とか!?彼は大丈夫なの?」
「ああ、まあ大丈夫みたいだぜ。ちょっと酔ってるがな。」

その酔っているらしいユキナの声がこちらに聞こえてきた。

「あーっ、マクドールさん、発見!!」

その声がしたかと思うと、即座にユキナがこっちにやってくる。
そして少し赤くなった顔をニヘラとさせてリュカに抱きついた。

「ちょっ・・・」
「マクドールさぁーん」

リュカは赤くなりつつも引きはがそうとする。まわりでは指笛や口笛やはやし立てる声が聞こえた。

「いいぞーユキナっ。」
「もうそのまま告っちゃえっ。」
「ていうかキスしてしまえー。」

なんて事言うんだ、とリュカは声のした方をジロリと見る。それからまた引きはがそうとするがどうにも離れない。
「ちょっと、離して」
「えーやだー。離したくないですー。」
「裁くよ?」
「えーなんで?」
「なんでって・・・」

周りではキスしろとうるさい。

「もーみんなうるさいなー。分かったってー」
「は!?」

次の瞬間、やわらかい感触がリュカの口に触れた。
おおーと言っている声が周りから聞こえる。
リュカの脳にそれが何かという事がしみこむ前に、全身冷たい感覚にとらわれた。

「な・・・」
「ユキナのバカっ。」

そこには怒りとショック、それとお酒でだろうか、顔を赤くした少女が立っていた。

(えーと、確か・・・アイリ、だったけ・・・?)

アイリは今にも泣き出しそうな、もしくは殴りだしそうな表情とでもいおうか、そんな顔をしており、もう一度バカ、と叫んでから店内から出ていった。
ありゃあ酔ってるな、という声が聞こえた。

(ていうか・・・僕もろとも水をかけられたって事か・・・?)

リュカもユキナもびしょぬれであった。

「さい・・・あく・・・」

それにしてもユキナが静かすぎる。
リュカがユキナを見ると、どうもそのまま眠りこんでいる様子であった。

(あんな事しておいて、しかも水までぶっかけられたってのに、いったいどの段階で眠れるって訳!?)

呆れてものが言えないとはこのことである。

「あー・・・大丈夫か?」

フリックが心配そうに声をかけてきた。ビクトールが仕方ないなぁといった顔をして言った。

「とりあえず風呂行ってこい。風邪ひいちまう。」
「・・・そうだね・・・。分かった。このバカも連れていってくるよ。」

低い声でリュカは言い、ユキナを担ぐ。
心配そうなフリックと、苦笑いのビクトールに見送られつつ店を出る。
ユキナは軽いはずだろうが、今は完全に眠っている為体重がのしかかり重い。
くそ、と言いつつリュカは急いで風呂に向かった。

風呂場はかなり暖かい。
リュカはとりあえずユキナの濡れた服をぬがせ、適当すぎるくらい適当に濡れた髪や顔などを拭いてやると、暖かい脱衣所に放置したまま湯に入りに行った。
風呂場から出ると、風呂屋が善意で置いている簡単な羽織りものを借りてそれを着た。

「もう、ほんとにバカ。もう、知らないからね。面倒見きれない。そこで転がってるといいよ。」

そう言いつつ、いちおう羽織ものを横になっているユキナの上に被せてから出て行った。

朝、目覚めるとそこは脱衣所だった。
首を傾げつつ、頭の重みに耐え、ユキナは起き上がった。

「・・・俺、何してんだ??」

見れば自分は下着姿で横たわっている。しかも脱衣所で。
考えてみるが、まったく思い出せない。
すっきりしたら分かるかな、と風呂に入ってみるがそれでも思い出せない。
自分の服を探したが、なんだか嫌な感じに濡れていたので、自分の上にかぶさっていた羽織りものを着て、とりあえず一旦自分の部屋へ戻った。
新しく服を着替えてると、ナナミが起こしに入ってきた。

「おはよー、ユキナ!!」
「おはよ・・・ナナミ。なぁ、俺って昨日何してたっけ?」
「へ?朝っぱらから何寝ぼけてんの?もうーやだなーっ。」

そう言いつつ、バシッと一発、ユキナにくらわした。

「ってっ。なんかさーちょっと色々記憶になくて・・・。」
「なぁにー、大丈夫?そういえば昨日って、ユキナ、いつもお姉ちゃんがやめときなさいって言ってるのに酒場に行ってたでしょっ!!」
「酒場?・・・ああ、そういえば・・・。」

横でナナミが何やら言ってるのを聞き流し、ユキナは思いめぐらせた。

(そういや昨日は酒場で飲んだくれてたよなぁ。途中でなぜか熊と飲み比べする羽目になっちゃって・・・えっと、それからどうしたっけ?)

肝心なところが思い出せない。
なぜ脱衣所にいたんだろう。
ふとリュカの顔が過った。

「とにかく、さっさとしたくしちゃいなさいよー。」

ハッとして我にかえった。

「え?ああ、うん。分かった分かった。じゃあね、またあとで、ナナミ。」

ナナミが部屋から出ていった後も考えめぐらすがやはり思い出せない。
首をまたかしげつつ、下に降りた。ここはやっぱ熊に聞くのが早そうだ。
酒場を覗いてみたが、さすがにあのビクトール達でもこんな朝からはいない様子。
次に訓練所に行ってみた。
するとなぜか色々な人からはやしたてられたりする。さらに首をかしげていたが、次の言葉で固まった。

「いやーそれにしてもほんとにリュカさんにキスしちゃうなんてねぇ。」

今、なんと!?
言った兵士のほうに、油でもさしたくなるような感じでギギギ、と顔を向けると、ユキナは言った。

「俺が・・・マクドールさんに、キスゥー!!??」

青くなってそう言ったユキナに周りがまたわいわい言う。

「え、覚えてないのかよ?」
「あらーもったいないですねー。」

口をパクパクさせているところにビクトールとフリックが入ってきた。