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ユキナ・リュカ ~この世界~

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「お、ユキナじゃねえか、こんな朝から珍しい。」

またもやギギギ、と音が鳴りそうな感じで振り向くユキナに2人はぎょっとする。

「な、なんだ?」

フリックが聞くと、それでも少しの間ポカンとあけていた口を一旦閉じてからユキナは聞いた。

「ねぇ、俺、マクドールさんに・・・マジで!?」
「は・・・?・・・ああ、昨日の。」
「ああーマジでしてたぞぉ。」

殺される・・・おもわずフラッとなるユキナ。

「お前さん、そうとう酔ってたんだなあ、覚えてないとはな。」

そうしてビクトールが昨日のいきさつを説明した。

「俺・・・かかえられちゃったんだ・・・。」
「まあな。」
「ってゆうかどうしよう!?キスなんかいきなりしちゃって、しかもびしょぬれにさせちゃってー。殺される、てゆうか、ああー絶対嫌われたよな?怒ってたから脱衣所に放置されたんだよな!?」
「って、脱衣所に放置されてたんか!?」

ユキナは青い顔のままその突っ込みのような質問には答えずふらふらと訓練所から出ていった。

「あいつ、大丈夫か?」
「まあ、なるようになるんじゃねえかぁ?」
「お前も原因の一つだろうが、ビクトール。」

相変わらずのほほんとしているビクトールに、フリックが呆れたように言った。
一方ユキナは青い顔のままふらりとホールまで出てきた。

「ちょっと、何珍しく不景気な顔してんのさ。」

階下から風使いの声が聞こえて、ユキナはそこから下に飛び降りる。

「・・・いつも思うけど、普通におりなよ。」
「そんなんはどうでもいいんだよー、ルックーどうしよー俺、嫌われたかなー。」

それはそれは泣きそうな顔で、ユキナはルックに抱きついた。

「ちょっと、離れてくれない!?なんだって言うのさ?」

まわりでは呆れたような、非難のような目でルックを見ている気がする。
ちょ・・・僕のせいじゃないよ!?
ルックは少しムッとしながらそのまま瞬間移動した。

「で、なんなのさ?ちょっとほんといい加減離れてくれない?」

気づけば庭園にいた。朝だからか、人気がない。

「うんー。」

ぐずぐず言いながらもユキナはいきさつをルックに説明した。

「あーそりゃ嫌われるね。」
「えーーー」
「ちょ、もう鬱陶しいから泣くのやめてくれない!?起きてしまった事はしかたないだろ。とりあえず謝ってくれば。」
「うん・・・そうだね・・・。あ、ルックてマクドールさんがどこにいるか分かる?」
「なんでそんな事まで・・・ああ、でも今回だけ教えてやるよ。」
「マジで?わぁ、ルックサンキュー」
「だって後ろにいるし。」
「・・・え?なんですと?」

今度はルックは黙って杖でユキナの後ろの方を指す。
もう何度そう振り返ったか分からないと思いつつ、ギギギ、とまたユキナは振り返った。
確かにリュカは庭園のテーブル席についていた。お茶を飲んでいたようである。
気まずそうにこちらを見ていたが、ユキナが振り返った為かフイ、と顔をそらした。

(わーん、ルックの馬鹿ーっ、いつから気づいてたんだよっ)

そう思ってルックを見たらすでに彼はいなかった。
ユキナはまた泣きそうな気分になりながら、ぎくしゃく、とリュカの方へ歩いていく。

「あ・・・あの・・・」

近づいて恐る恐る声をかけると、最初は顔をそらしていたが観念したのかリュカはユキナを見た。

「・・・何?」
「う・・・。えっと、あの・・・酔ってたとはいえ、ほんとにすみませんでしたっ。」

一気に言うと、ユキナは勢いよく頭を下げた。

「・・・まったく・・・。君は未成年なんだからね。飲むなとは言わないが無茶な飲み方はしない事。それと、女の子は泣かせない。」

ため息をついてからリュカは言った。ユキナは頭を上げる。

「はい・・・すみませんでした・・・って、え?アイリ、泣いてたんですか?」
「うん、てゆうか彼女も酔ってるようだったけどね。」
「そうですか。後で謝りに行きます。」
「謝るって、理由は分かってるの?」
「え?ああ、いえ、これといっては・・・ああ、でも彼女、どうやら俺の事好きらしいんで。」
「冷静だね。」
「まあ、俺はその気持ちには答えられないから・・・。第一俺が好きなのはマクドールさんですから。」
「っ、そ、それは別に言わなくていいから・・・とにかく、二度とごめんだからね。」
「はい、すみませんでした。・・・て、そのー二度とごめんて言うのは俺が酔う事がですか?それともキスした事ですか?俺のせいで災難にあった事ですか?」
「いちいち聞くな。」
「あ、すみませんっ。」

ユキナはもう一度頭を下げて謝ったが、少しだけすっきりしなかった。

でも、まあいいか。
気長にいくし。

「あっ。」
「え?何?」
「あーくそっ、俺としたことが!!せっかくキスしたのにまったく記憶にないなんてーっ!!」

庭園に軽く裁きが落ちました。