こらぼでほすと 襲撃7
出かける時にティエリアが、詳しい地図を作成してくれた。到着時刻が、ちょうど、店の開いている時間だから、ひとまず、『吉祥富貴』へ行けば、誰かが対応してくれると言われたものの、交通機関というものまでは教えてもらえなかった。軌道エレベーターから特区への乗り継ぎは、スムーズだったが、エアポートからの移動が、ちょっと心配だ。
アライバルゲートを抜けたら、そこに、見知った顔があって、フェルトはほっとした。以前、出向していた悟浄と刹那が居たからだ。
「刹那。」
「迎えに来た。」
どちらも無口なんで、これで挨拶は終わりだ。あのな、と、悟浄が声をかける。
「せつニャンよ、こういう場合は荷物を持ってやるのが、基本のエスコートだ。・・・やあ、フェルトちゃん、久しぶり。俺のことは覚えてくれてるかな? 」
「・・・はい・・・あの、ロックオンは? 」
「うんうん、ママは無事なんだけど、元気とは、ちょっと言い難い。すぐに、案内するからな。それから、これがうちのかみさんで、猪八戒だ。覚えてくれ。」
荷物は持つよ? と、悟浄がフェルトからミニカートを預かって、八戒を紹介する。
「こんにちは、フェルトさん。」
「・・・こんにちは・・」
「ここから、ヘリで移動します。さあ、行きましょうか? 」
詳しいことは、ヘリで話せばいいだろうと、とりあえず、移動する。エアポート内のヘリポートから、四人は歌姫の個人用ヘリに乗り込んだ。離陸して、十分ほどで到着するので、手短に、ロックオンの容態については教えた。
「まあ、申し訳ないんですが、アレルヤ君のことは口外しないということでお願いします。今、教えると、余計に体調を崩すと予想されますんでね。」
それまで無言だった刹那が、その八戒の説明に、さらに付け足した。
「ロックオンには、アレルヤがいないことは気取られるな。」
「でも、刹那。」
「無事、生きてるというのは事実だ。それで押し通せ。」
と、言われても、フェルトには難しい。刹那たちマイスターは、そういう演技の訓練も受けているが、フェルトは、そこまではやっていない。それに、話題になるのは、組織のことだ。
「あのですね、フェルトさん。ティエリア君のことを話す時に、必ず、『アレルヤと』 と、付け足して喋るというのは、どうですか? 」
だいたい、セット扱いになっているのだから、そういうふうに言えば、アレルヤが居ないことはわからないのではないか? と、八戒は提案した。こちらにいる時も刹那がロックオンにくっついているから、必然的に、ティエリアとアレルヤが一緒に行動していた。たぶん組織でも同じようなことなんじゃないのか、と、八戒は思ったのだ。
「ああ、はい。それなら。」
フェルトにしても、それは理解できる。マイスターたちは、機動性の高い機体と後方支援の機体でワンセットで活動する。その組み合わせが、まさに、それだからだ。
「それじゃあ、それでお願いします。僕らも一緒に顔を出しますから、フォローはできますからね。」
「ていうかな、フェルトちゃん、ロックオンを説教してくれよ。あいつ、大人しくしてられない性格なんでさ。ふらふらとするから、なかなか体調が安定しねぇーんだ。そこのところは、しっかり管理してやってくれな?」
いや、そういうもんでは・・・と、悟浄の言葉を止めようとしたが、フェルトのほうが、「わかりました。」 と、元気に返事した。
「そうそう、メシも食わねぇーから、ちゃんと食わせて、昼寝もさせてさ。あと、なんだ? ああ、クスリも飲ませてやってくれ。それから、話し相手。こ
れ、重要だから。べらべら喋るとかじゃなくてもいいから、とりあえず、顔は見せてフェルトちゃんが笑ってやってくれたら、ロックオンも安心すると思うぜ。」
刹那より若いフェルトに、難しいことを言っても仕方がない。女の子なんだから、そういう用事を頼むほうがいいんだろうと、悟浄は大袈裟に吹き込んだ。
ラボから、ようやく開放されたキラは、ルンルンと外出の準備をしている。ようやく、外へ出られたのだから、今日はアスランとデートするつもりだ。
「僕って、晴れの因子が強いよね? 今日から、しばらく雨じゃないんだって、アスラン。」
これから二週間の休暇を、いかに楽しく過ごすかが、一番重要なことだ。さすがに、何かあったら困るから遠出はできないが、特区の近くなら泊まりでもオッケーだ。
「でもね、キラ。ロックオンのお見舞いには行くよ? フェルトが降りて来たから、顔も見たいしね。」
アスランも出向していた時に顔を合わせている。おとなしい子だが、しっかりした女の子だ。せっかくだから、どこかへ連れ出してあげたいとも思っている。
「うん、僕も会ってみたい。刹那みたく可愛いんでしょ? 」
「可愛いよ。キラには負けるけどさ。」
「今日、降りてるんだよね? 僕、刹那とも出かけたいし、一緒してくれるかな? 」
純粋培養テロリストというに相応しい経歴の持ち主なのは、キラも知っている。ここ一年は、きっと、組織の建て直しで忙しかっただろうから、気晴らしに街へ繰り出して遊べばいい、と、キラも思う。まだまだ、先は長いのだ。自分たちと、せっかく繋がったのだから、そういうことはやってあげたい。
「誘えば来てくれるだろう。刹那も一緒なら、緊張されなくて済む。・・・でも、その予定は少し先だよ。俺たちは、プラントから帰ってくるんだから、今日明日ってわけにはいかない。」
それに、王留美からのイヤガラセがありそうなので、アスランは少し警戒している。経済力では、小国一国分の財力がある王家は、こちらが協力しなかったことに対する報復は考えるだろう。そうなると、キラと自分が対抗するしかない。だから、ラボと携帯端末はリンクさせてままにしてある。鷹が、あそこでチェックはしてくれているから、何がしかの報復があれば、すぐに対応するつもりだ。
「わかってる。・・・もういっそ、うちから仕掛けるって、どう? 」
「ダメだって、キラ。何もしてない人に、悪戯したらいけないだろ? 」
「でも、なんか、ごちゃごちゃ動いてるよ? ラクスのほうへ被害があったら問題じゃないの? 」
もちろん、キラも、そのことは把握している。こちらへの王家からのアクセスが、ひっきりなしにかかっているのだ。どこか、とっかかりを探していると見ていい。丁寧に、いくつものサーバーやらマザーやらを経由してのアクセスだが、そんなことをするのは王家だけだ。
「ラクスに直接被害っていうのは、逆に難しいぞ。」
「そうでもないよ。ラクスに、テロをぶつけるとか簡単じゃない。連合創設にかこつけると、平和の使者は邪魔なんだよ? 」
「ヒルダさんたちが護衛してるのにか? 」
「アスランは、すごく小規模なことしか考えてないでしょ? そうじゃなくて、会議場一個丸ごと爆破とか、そういうヤツ。」
ラクスのスケジュールというのは、意外と簡単に手に入る。なんせ、宇宙規模に有名な歌姫様だから、コンサートだの講演だのの予定は、先にわかってしまう。確実に、その時間は、そこにいるのだから狙うのは簡単だ。一応、ラクスにも、それは知らせてあるが、場所の特定だけは、どうしようもない。
アライバルゲートを抜けたら、そこに、見知った顔があって、フェルトはほっとした。以前、出向していた悟浄と刹那が居たからだ。
「刹那。」
「迎えに来た。」
どちらも無口なんで、これで挨拶は終わりだ。あのな、と、悟浄が声をかける。
「せつニャンよ、こういう場合は荷物を持ってやるのが、基本のエスコートだ。・・・やあ、フェルトちゃん、久しぶり。俺のことは覚えてくれてるかな? 」
「・・・はい・・・あの、ロックオンは? 」
「うんうん、ママは無事なんだけど、元気とは、ちょっと言い難い。すぐに、案内するからな。それから、これがうちのかみさんで、猪八戒だ。覚えてくれ。」
荷物は持つよ? と、悟浄がフェルトからミニカートを預かって、八戒を紹介する。
「こんにちは、フェルトさん。」
「・・・こんにちは・・」
「ここから、ヘリで移動します。さあ、行きましょうか? 」
詳しいことは、ヘリで話せばいいだろうと、とりあえず、移動する。エアポート内のヘリポートから、四人は歌姫の個人用ヘリに乗り込んだ。離陸して、十分ほどで到着するので、手短に、ロックオンの容態については教えた。
「まあ、申し訳ないんですが、アレルヤ君のことは口外しないということでお願いします。今、教えると、余計に体調を崩すと予想されますんでね。」
それまで無言だった刹那が、その八戒の説明に、さらに付け足した。
「ロックオンには、アレルヤがいないことは気取られるな。」
「でも、刹那。」
「無事、生きてるというのは事実だ。それで押し通せ。」
と、言われても、フェルトには難しい。刹那たちマイスターは、そういう演技の訓練も受けているが、フェルトは、そこまではやっていない。それに、話題になるのは、組織のことだ。
「あのですね、フェルトさん。ティエリア君のことを話す時に、必ず、『アレルヤと』 と、付け足して喋るというのは、どうですか? 」
だいたい、セット扱いになっているのだから、そういうふうに言えば、アレルヤが居ないことはわからないのではないか? と、八戒は提案した。こちらにいる時も刹那がロックオンにくっついているから、必然的に、ティエリアとアレルヤが一緒に行動していた。たぶん組織でも同じようなことなんじゃないのか、と、八戒は思ったのだ。
「ああ、はい。それなら。」
フェルトにしても、それは理解できる。マイスターたちは、機動性の高い機体と後方支援の機体でワンセットで活動する。その組み合わせが、まさに、それだからだ。
「それじゃあ、それでお願いします。僕らも一緒に顔を出しますから、フォローはできますからね。」
「ていうかな、フェルトちゃん、ロックオンを説教してくれよ。あいつ、大人しくしてられない性格なんでさ。ふらふらとするから、なかなか体調が安定しねぇーんだ。そこのところは、しっかり管理してやってくれな?」
いや、そういうもんでは・・・と、悟浄の言葉を止めようとしたが、フェルトのほうが、「わかりました。」 と、元気に返事した。
「そうそう、メシも食わねぇーから、ちゃんと食わせて、昼寝もさせてさ。あと、なんだ? ああ、クスリも飲ませてやってくれ。それから、話し相手。こ
れ、重要だから。べらべら喋るとかじゃなくてもいいから、とりあえず、顔は見せてフェルトちゃんが笑ってやってくれたら、ロックオンも安心すると思うぜ。」
刹那より若いフェルトに、難しいことを言っても仕方がない。女の子なんだから、そういう用事を頼むほうがいいんだろうと、悟浄は大袈裟に吹き込んだ。
ラボから、ようやく開放されたキラは、ルンルンと外出の準備をしている。ようやく、外へ出られたのだから、今日はアスランとデートするつもりだ。
「僕って、晴れの因子が強いよね? 今日から、しばらく雨じゃないんだって、アスラン。」
これから二週間の休暇を、いかに楽しく過ごすかが、一番重要なことだ。さすがに、何かあったら困るから遠出はできないが、特区の近くなら泊まりでもオッケーだ。
「でもね、キラ。ロックオンのお見舞いには行くよ? フェルトが降りて来たから、顔も見たいしね。」
アスランも出向していた時に顔を合わせている。おとなしい子だが、しっかりした女の子だ。せっかくだから、どこかへ連れ出してあげたいとも思っている。
「うん、僕も会ってみたい。刹那みたく可愛いんでしょ? 」
「可愛いよ。キラには負けるけどさ。」
「今日、降りてるんだよね? 僕、刹那とも出かけたいし、一緒してくれるかな? 」
純粋培養テロリストというに相応しい経歴の持ち主なのは、キラも知っている。ここ一年は、きっと、組織の建て直しで忙しかっただろうから、気晴らしに街へ繰り出して遊べばいい、と、キラも思う。まだまだ、先は長いのだ。自分たちと、せっかく繋がったのだから、そういうことはやってあげたい。
「誘えば来てくれるだろう。刹那も一緒なら、緊張されなくて済む。・・・でも、その予定は少し先だよ。俺たちは、プラントから帰ってくるんだから、今日明日ってわけにはいかない。」
それに、王留美からのイヤガラセがありそうなので、アスランは少し警戒している。経済力では、小国一国分の財力がある王家は、こちらが協力しなかったことに対する報復は考えるだろう。そうなると、キラと自分が対抗するしかない。だから、ラボと携帯端末はリンクさせてままにしてある。鷹が、あそこでチェックはしてくれているから、何がしかの報復があれば、すぐに対応するつもりだ。
「わかってる。・・・もういっそ、うちから仕掛けるって、どう? 」
「ダメだって、キラ。何もしてない人に、悪戯したらいけないだろ? 」
「でも、なんか、ごちゃごちゃ動いてるよ? ラクスのほうへ被害があったら問題じゃないの? 」
もちろん、キラも、そのことは把握している。こちらへの王家からのアクセスが、ひっきりなしにかかっているのだ。どこか、とっかかりを探していると見ていい。丁寧に、いくつものサーバーやらマザーやらを経由してのアクセスだが、そんなことをするのは王家だけだ。
「ラクスに直接被害っていうのは、逆に難しいぞ。」
「そうでもないよ。ラクスに、テロをぶつけるとか簡単じゃない。連合創設にかこつけると、平和の使者は邪魔なんだよ? 」
「ヒルダさんたちが護衛してるのにか? 」
「アスランは、すごく小規模なことしか考えてないでしょ? そうじゃなくて、会議場一個丸ごと爆破とか、そういうヤツ。」
ラクスのスケジュールというのは、意外と簡単に手に入る。なんせ、宇宙規模に有名な歌姫様だから、コンサートだの講演だのの予定は、先にわかってしまう。確実に、その時間は、そこにいるのだから狙うのは簡単だ。一応、ラクスにも、それは知らせてあるが、場所の特定だけは、どうしようもない。
作品名:こらぼでほすと 襲撃7 作家名:篠義