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こらぼでほすと 襲撃9

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体調が、あまりよろしくない親猫を、ゆっくりさせてやるには、子猫たちとキラを、ここから引き剥がすのが、一番なのだが、これがなかなか難しい。それに、これだけ大雨だと出かける場所も限定されてしまう。かといって、ゲーム三昧というのも、なんだか物悲しい。
 さて、どうしたものか、と、アスランが朝から考えていたら、ハイネと交代で鷹が顔を出した。
「どうしたよ? 浮かない顔だな? 」
「いかにして、子猫たちを親猫から引き離すかということを考えているんですが、これが難しくて。」
 今は、ドクターが治療しているので、子猫とキラは居間のほうで、テレビを見ているのだが、終わったら戻ってしまうので、それまでに本日の行動予定を立てたいのだと、アスランが言う。なるほど、と、鷹も苦笑する。
「この雨だからな。」
 梅雨明け前の集中豪雨というやつで、ものすごいことになっている。これで、外出というのも考えものだ。
「一日くらい、のんべんだらりでもいいんじゃないのか? 」
「昨日がそうでした。そろそろ、キラが暴れます。」
 ある程度は、情報チェックなどもあるから、仕事はあるのだが、そればかりやらせていると、キラはキレる。せっかく、お気に入りの子猫がいるのだから、あっちこっち遊びに行きたいからだ。
「三蔵さん、暇にしてるだろ? 寺へでも顔を出してくれば、どうだ? それとも、悟空を呼び出して、ホテルのプールへでも泳ぎに行ってくれば? ママは、俺が看ててやるからさ。」
 じめじめとしているので、外出には不向きな時期だが、ホテルの屋内プールなら設備もしっかりしているし、水着なんかも借りられて便利だろう、と、鷹が教えてくれた。ラクスの関係しているホテルは、特区内にも何軒かあるので貸し切るのも簡単だ。
「いいですね。早速、手配します。」
 予定に見合うものがみつかったので、アスランは手配に走る。それを見送ってから、フラガのほうは携帯端末を開けた。おもむろに登録している番号へ連絡する。
「三蔵さん、暇かい? ・・・・ああ・・・そういうことなら、ちょっと手伝ってくれよ。ママニャンの話し相手してくれないか? ・・・ああ・・・子猫たちとキラは連日、出かけてる。・・・まあ、暇つぶしにさ。・・・あんたのとこのおサルちゃんも誘えばいい・・・・歌姫さんは仕事で渡欧したから留守だよ・・・うんうん・・・二、三日、滞在してくれ・・・ああ・・・・」
 今回一番楽をしている坊主に、ちょっくら働いてもらうとしよう、と、連絡をした。それから、シンとレイにも招集をかける。あまり親猫のところに子猫たちを侍らせるのも、親猫が辛いだろうという配慮だ。それに、坊主が、親猫の側に陣取れば、子猫たちは追い出してくれるはずだ。


 鷹が考えていたより、坊主が来ることには効果があった。金曜日の夜から悟空と一緒にやってきたのだが、マイペースであることに変りはない。
「おい、いい加減に帰って来い。そろそろ、サルの単純なメシは飽きたぞ? 」
 顔を出した途端の台詞が、これで、ドクター頬を引き攣らせているが、それすら無視だ。
「梅雨明けしたら、帰ります。・・・俺の携帯見つかりましたか? 」
「知らねぇーよ。おい、お茶ぐらい入れろ。喉が渇いた。」
 はいはい、と、ロックオンは起き上がって動こうとするので、慌てて、ドクターが押し留める。
「三蔵さん、ロックオン君は、体調が良くないので使わないでください。」
「そうやって、甘やかすから回復しねぇーんじゃないのか? ドクター。」
 気圧変化だの季節の変わり目の寒暖差なんてものは、慣れるしかない代物だ。起き上がれないなら、坊主も無茶は言わないが、座っていられるなら、働けであるらしい。
「ドクター、これぐらいは、大丈夫ですから。・・・三蔵さん、ここ、ほうじ茶とかないんですが、紅茶でもいいですか? 」
 自分の部屋に用意されているのは、紅茶だけだから、それでもいいか、と、尋ねたら、「ほうじ茶にしろ。」 と、坊主は一刀両断する。内線で、そういうものがあるのか尋ねたら、準備してくれることになった。
「すいません、それと灰皿をお願いします。」
 付け足された言葉に、ドクターは、え? と、驚いているが、坊主は、「早くしろ。」 なんて、タバコを取り出していたりする。で、その一連の行動を眺めていた悟空が背後から、蹴りをかます。
「無茶ばっか言うと、叩き出すぞ? さんぞー。」
「うるせぇーな、サル。てめぇーは子猫の相手でもしてろ。」
 扶養者のまともな意見もスルーだ。だが、刹那が、フギャアーと、その間に割って入って威嚇すると、大笑いした。
「やるか? ちび。なんなら、もう一匹の子猫も来い。」
「さんぞーさん、フェルト、女の子だよ? そういうのダメだからね。」
 部屋には、年少組が勢揃いしているので、もちろんキラもいる。異様に存在感のある坊主に、フェルトはアスランの背後から覗いている状態だ。
「おまえらが、騒ぐより、俺のほうがマシだ。・・・おい。」
 ようやく届いたお茶セットを準備していたロックオンは、差し出された坊主の手に、茶器を載せる。ちゃんとしたセットだから、茶托もついている。
「なんだ? 仰々しいな。」
「うちと同じってわけじゃありませんよ。たぶん、うちのより高級品だから美味いんじゃないですか?」
 ほら、おまえたちも飲むか? と、ちゃんと人数分のお茶を入れて、年少組にも渡してやるのが、おかんというものだ。具合は、あまりよくないはずだが、こうなってくると状景反射的に動けるものなのか、ロックオンはドクターが驚くぐらいに動いている。
「フェルト、日本茶は初めてだろ? 紅茶みたいなもんだが、飲んでみるか?」
 桃色子猫は、親猫が呼ぶと、そちらに移動する。刹那も、三蔵を睨みつつ、親猫から茶器を受け取る。
「悟空、煎餅もあるぞ? 」
「おうっっ。」
 年少組の相手も慣れたものだ。全員に、お茶を回して、やれやれとベッドに座り込む。アスランが、その親猫に残っていたお茶を渡して、全員が一瞬静かになる。
「寺は留守にしていいんですか? 」
「一日くらいはかまわねぇーよ。ちょっと用事を思い立ってな。」
「オーナーは留守ですが? 」
「だから来たんだ。お札貼ってやろうと思ってな。」
「札? 」
 鷹から連絡を貰って、思いついた。そうでないなら、ここには来ない。なんせ、最強最悪の暗黒歌姫の本拠地だ。
「ここには、えげつない妖怪がいるからな。多少、妖力を削ぎ落としてやろうと思ったんだ。キラ、後で歌姫の寝室へ案内しろ。」
「ふえ? ラクスの?  あそこに妖怪居るの? 」
「ああ、とんでもないのがいるんだよ。」
 その言葉で、全てを理解したアスランと悟空は、お互いに顔を見合わせた。大人気ないの一言に尽きるので、呆れるしかない。
「珍しいと思ったんだよな。でも、ママがいるからだろうと俺は思ったんだけどさ。」
「悟空、俺も、そう思ってた。・・・三蔵さん、それ、反撃されること前提で言ってますか? 」
作品名:こらぼでほすと 襲撃9 作家名:篠義