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こらぼでほすと 襲撃9

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 できるなら接触したくない、とか、常々言っている鬼畜坊主が、留守とはいえ、その本拠地に来るなんて稀なことだ。そういう意図なら、やってきた意味はわかる。わかるのだが、命知らずな、と、アスランはため息をついた。
「おまえらがバラさなきゃ知られねぇーだろ? 」
「キラに、それを求めるのは無理ですよ。」
「別に、あれが妖力がないなら、ただの飾りだ。それで、変化したら確定ってことだ。それでいいじゃねぇーか、アスラン。」
「よかねぇーよっっ。怒るだろ? 歌姫さんがっっ。」
 アスランが正論を吐く前に、悟空が反論する。自分の寝室に、妖怪避けの札があったら、誰だって気分を害するだろう。
「もしかして・・・妖怪って・・・」
 言い辛そうに、親猫が口を挟む。なんとなく察しはついたものの、口にするのは憚られる内容だ。
「オーナーだよ。あいつだけは、どう考えても、そっち関係だろ? あの暗黒オーラは強烈過ぎるから、ちょっと削ぎ落としておこうと思ってな。」
 やっぱりかい、と、親猫もがっくりと肩を落とす。確かに、普通じゃないが、妖怪というのは、酷いだろう。
「おまえには見せてないだろうが、あの暗黒オーラは強烈だ。」
「ラクス、人間だよ? さんぞーさん。それ、効かないよ? 」
「てか、言い負かされるからって、その腹いせは大人気ないだろ? さんぞー。」
 大概、三蔵の弁では、歌姫に言い負かされる。というか、なぜか勝てない。年齢的にも、自分の立場的にも、なぜ勝てないのか、理解できないのだが、どうしても勝った気はしないのだ。たまには、わかりやすいイヤガラセのひとつもしてやるか、と、坊主は出向いてきたわけだ。
「俺は止めませんけど、警告はしましたからね。」
「いや、三蔵さん、そういうのはやめたほうが・・・あそこ、今、フェルトが使ってるんで怖がるから。」
 歌姫が、桃色子猫に部屋を貸してくれた。もし、寂しいなら、親猫を侍らせなさい、と、許可した。つまり、歌姫の寝室へ、親猫も出入り自由だったりする。下手をすると、自分も寝るところに、そんな札なんぞ貼られたくない。
「ちっっ、さすがだな。俺が来ることを読んでやがったか。」
 いや、それはない、それは、と、ロックオンが手を振っている。妖怪とか信じてはいないだろうが、フェルトを怖がらせるには十分だったらしい。
「・・・やっぱり、ロックオンも一緒がいい・・・」
「フェルト、それじゃあ、違う部屋を用意してもらおう。それならいいだろ? 」
「やだっっ。」
 さすがに、一人は心細いというので、やっぱり、歌姫の寝室で寝ることになってしまった。ただし、キラは除外した。さすがに、野郎ばっかりで囲むなんてのは、まずいだろうとアスランも思ったからだ。刹那は、身内みたいなものだろうし、ロックオンは保護者だが、それ以外は、まだ数日しか顔をあわせていないメンバーだからだ。

 そして、高僧様は、宣言通り、寝室の壁に分かり易いお札を貼った。おまえらには影響は微塵もない、と、言われても、なんだかオドロオドロしい赤い文字は神経に障る代物だったが、後日、帰ってきた歌姫様はオブジェというかポスターというか、そういうものだと認識して微笑んでいたらしい。


 数日して、フェルトが帰る日が来たが、梅雨は明けなかった。見送りと案内に、キラとアスランが刹那と共に行ってくれた。また、来るから、というフェルトに、待ってるよ、と、返事して本宅のヘリポートで見送って、それから、さらに数日して、ようやく身体が楽になった。梅雨明けを身体で感じているロックオンとしては、これでようやく帰れる、と、喜んだ。ただし、今度は灼熱地獄の幕開けである。
 あまり日中に外出しないように、と、ドクターに注意されたものの、とりあえず開放された。悟空が迎えに来て一緒に帰ったのだが、門を潜ると、ほっとするというのも、おかしな気分だ。帰った日は、ちょうど土曜日で、店は休みだった。
「刹那も一緒だから、客間に布団を用意したよ。今日は、あんまり動いちゃダメだから。」
「身体は楽になったから、大丈夫だよ、悟空。」
「ダメだよ、ロックオン。刹那、ちゃんと見張れ。」
「了解した。」
 黒子猫とサルの連合軍は強いので、無理矢理、居間に座らされた。そこには、坊主が居て、書類仕事をしている。悟空が冷たい麦茶を運んでくる。
「ようやく帰ったか。」
「それも、どうなんですかね? 俺は、ここんちの人間じゃないんだけど。」
「今夜は、快気祝いにすき焼きをやるからな。 」
「すき焼き? 」
 和食に対する知識は多少つけたものの、完全ではない。いきなり、メニューを言われても、ぴんと来ない。
「ああ、もう帰ってるのか、ママ。・・・三蔵さん、後、鷹さんとトダカさんとか来るけど、どうするんだ? 」
 快気祝いなるものの召集がかかったらしいハイネが顔を出す。八戒たちも、後から来るので、そちらが連絡したらしい。
「すき焼きをやる。サル、イノブタに連絡して買出しさせろ。」
「それなら、俺が・・・」
「おい、ママニャン、おまえ、すき焼きってわかるのか? 結構、複雑だぞ? 」
「え? 」
 ハイネは、どちらの方式のすき焼きでも構わないのだが、どちらかの方式が好きというのが多い。入るものも作り方も、やり方は、各家庭で違うから、どの方式にするかで、いろいろと変るのだ。
「基本は、鍋みたいなものなんだが、関東風と関西風で作り方が全然、違うんだよ。ちなみに、三蔵さんは、どっちなんだ? 」
「ワリシタのほうだ。」
「ということは、八戒んとこも、そっちなんだろうな。・・・あ、鷹さん、あんた、すき焼きは、どっちだ? 」
 ちょうど居間に顔を出した鷹に、ハイネが尋ねる。さらに、その後から、シンとレイが挨拶しつつ入ってくる。
「すき焼き? そりゃ正統派だろ? 俺、うどん入れて欲しいんだよねぇー。あの甘辛いのが好きなんだ。」
「俺、麩が欲しいっっ。レイは? 」
「できたら、ささがきごぼうとじゃがいもが欲しい。」
「はあ? レイ、それ、正気か? おまえ、それはすき焼きじゃなくて肉じゃがだろ? 」
 正統派と叫んだ鷹が、さらに叫ぶ。どうやら、鷹の言っているのは関西風だと、ハイネは気付いた。
「まあ、待てっっ、鷹さん。たぶん、関東風だとアリだ。」
「ばっか、関東風なんて鍋物だ。肉焼かなきゃ、すき焼きじゃない。」
「うちは入れるんだよ、鷹さん。翌日、肉じゃが風の丼にするんだ。」
 騒々しい言い合いに、ひょっこり現れたトダカが加わる。レイが食べているのは、トダカ家のものだから、そういうことになるらしい。
「翌日は、卵で固めてキッシュ風。これは譲れないぜっっ。」
 もちろん、ハイネにも一過言あるわけで、どんどん収集はつかなくなってくる。というか、すき焼き自体に馴染みのないロックオンと刹那は、置いてけぼりになっている。
「あの、三蔵さん、どういう料理なんですか? 」
「肉と野菜を、ワリシタで煮込んで、卵つけて食うだけだ。おまえは、うちのやり方を覚えりゃいい。・・・おい、てめぇーら、うちでやるからは、うちの流儀でやるからなっっ。文句があるやつは、前へ出ろっ。」
作品名:こらぼでほすと 襲撃9 作家名:篠義