はぴはぴ
ふと視線を流すと、シリウスが先生の頬にキスをするのが見えた。僕は微塵も迷わずシリウスの頭をはたいた。
「なにやってんだエロ執事!」
「なにって、執事はご主人を襲うのがセオリーだろ」
「メイドだってご主人様に襲われるのがセオリーだよ!先生、お願いします!」
「お願いしますって言われても」
「よし、じゃメイドが襲え」
「たまには良いこと言うねエロ執事!では遠慮なく!」
僕は宣言通り遠慮なく先生の頬にキスをした。僕もシリウスも自分勝手でわがままな生き物なのだ。
「お誕生日おめでとうございます」
至近距離で祝辞を口にする。先生はにっこりと笑った。
「ふたりとも朝食抜き」
「わああごめんなさいご主人様!」
「すんません調子に乗りました!」
「あはは、ご主人様ごっこは楽しいねえ」
先生はベッドから降りて、ぱん、と手を叩いた。さあご飯ご飯!と僕たちを急かす。すぐにご用意いたしますと答えて、僕たちはふたりがかりで先生をエスコートした。この良き日に相応しく春の太陽は眩しい。光あふれるダイニングテーブルにこれでもかと先生の好きなものを並べて、今日はいちにち、先生の誕生日を祝う。なんて素敵なスケジュールだろう。この良き日を共に祝える幸運に感謝しつつ、僕は僕と執事とご主人様のために心躍らせた。
この良き日。
あなたに、ありがとう。