Chocolate fairy 【春コミ新刊サンプル】
【チョコレート・エンカウント】
帝人が来てから一週間。
昼食のパスタを食べ終え、帝人はおやつと言うより最早ノルマになりつつある本日のデザートチョコ・チロルチョコを食べ始めた。自分の顔くらいの大きさのあるチョコを両手でしっかり持ちかぶりつき、もぐもぐと頬袋を膨らませ咀嚼する帝人の姿は『可愛い』の一言である。
チョコを買い占め、帝人成長計画の為に最初の三日程は臨也も付き合って毎食デザートにはチョコを食べていたのだが、流石に飽きてしまったらしく、今では帝人がチョコの消費係になっている。もっとも、食べる必要があるのは帝人なので、最初から臨也が付き合う必要はなかったのだが、それも気まぐれだったのだろう。
帝人的にはチョコだけでなく普通のご飯も食べさせてもらっているので、別に不満はないらしく、順調にチョコレート生活は続いているようだ。
「今日はちょっと外へ出かけようか」
「お出かけですか?」
「帝人君もね」
「僕もですか!」
思いがけない提案に帝人は嬉しそうに臨也を見上げた。
帝人とこれまで過ごしてきて、臨也は気付いたことがある。それは帝人がとても好奇心が強く、人間の世界について物凄い興味を持っていること。
テレビから流れる情報には常に釘付けだし、臨也の家も隅々まで歩きまわり、知らないものがあれば名前から使い方、臨也が知っていればその物の成り立ちまで楽しそうに聞いてくる。情報屋としての仕事道具の一つであるパソコンにも強い関心を抱き、最近ではキーボードを両手で支えたペンを使って器用に押し、ネットサーフィンするのが日課だ。
今日までは臨也の家の中だけで過ごしていたので、実際に帝人は外を見たことはない。というわけで、臨也は帝人の初めてのお出かけを実践することにした。
そして、今回のお出かけには帝人に街を見せる他に、もう一つ目的があった。
「実はね、俺の友人の同居人が妖精なんだよ」
「本当ですか!」
「お菓子の妖精ではないけど、デュラハンって言って、池袋の都市伝説って噂されてる奴なんだ。まぁ……本人に会った方が手っ取り早いね」
食べ終わった?と臨也が問いかければ、最後の一欠けらを口に入れ手に溶け残ったチョコを舐めた帝人が大きく頷いた。
【一部抜粋 以下本編に続く】
作品名:Chocolate fairy 【春コミ新刊サンプル】 作家名:セイカ