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ふうりっち
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novelistID. 16162
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=4.2= プロイセン・ブルー(仮)

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「若き騎士様。今更ですが自己紹介がまだでしたね。私、ホンダと申します。聴こえていますか?」

 悶絶するプロイセンを見つめる双眸には余裕が戻っていた。それは微かに欣喜を孕み、愉しげに揺らぐ。そして、口元が小さく動いた。新たな呪術でも唱えているのかもしれない。

「実はですね…私は東方の國、ジパングから参りました。もし我が国へお越しに際は、是非お立ち寄り下さい」

 礼儀を重んじるよう白き魔導師は、ゆっくり頭をさげる。
 
「しかし、私は最近物忘れが酷いので、貴方様が分からないかも知れませんね…」

 業火でプロイセンの動きを封じ込めながら、ホンダと名乗る魔導師は一人思案にふけっていた。

「お暇を見ていらして下さっても、それでは失礼にあたります。そうだ、貴方様に徴(しるし)をつけておきましょう!」

 子供のようにはしゃぐ青年は陽気に両手をパンと鳴らす。だが、それが引き金となった。
 掌から生み出された魔力は小さな塊と化し、まっすぐプロイセンへと向かっていく。
 事態の異変を本能的に察していたプロイセンは、残り少ない気力を振り絞りバインド・ルーンを唱えてみたが相手の魔力が上回った。瞬間、これまで感じたことがない痛みが右目に走ると、プロイセンの視界が赤く染まる。
 右目には、鋭利な物を刺されたような感覚だけが残った。


『ヴィルヌーッツァ ドヴェーリ』


 <徴>と称しプロイセンへ一撃を与えた青年が新たな呪術を唱えれば、突如、空間がグニャリと歪む。歪んだ空間の中は闇だけが広がり、入口がどこに繋がっているのかさえ分からない。
 秩序を捻じ曲げられた目の前の光景が信じられないプロイセンは、驚きうろたえ、声もなくただ目を瞠るばかりだった。
 そんな彼へ最後に笑みを残す青年と、去る間際、ドイツの右目から涙が伝うのが見えた。だが肉体を封じられたままでは、彼等の後を追う事など出来やしない。

「…ヴェ、スト……」

 赤い夕日。
 懐かしい声。
 そして、必ず護ると約束したのに――

「……オヤジ…、悪ぃ…約束…む、り…だ…」
「プロイセンッ!」

 徐々に意識が遠退くなか、プロイセンの名前を叫ぶ呼ぶ声に意識が微かに浮上する。

「ハハ…ぼっちゃん…か…、そんなに、走ん…なよ、……コケ…る…ぜ……」
「プロイセン!」

 珍しく感情を露に悲痛な声をあげ駆けて来るオーストリアの声を遠くに聞きながら、プロイセンは意識を手放した。





続く→