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What's about my star?

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言葉を失う、そんなことが本当にあるんだと感心した。
それほど彼は完璧な容貌の持ち主だった。
肩まで伸ばしたブロンドに近いベビーピンクの髪にネイビーブルーの瞳、白い肌、端整な顔立ちは中性的ではあるが、均整のとれた体つきやきりりと整った眉、それになんと言っても本人の全身から溢れる『銀河の帝王』としてのオーラが彼を男性たらしめていた。
いくら世の流行に疎い早乙女アルトでも今銀河中で話題を集めている歌手シエル・ノームの存在は知っていた。
ただ実際自分が銀河のスーパースターにこんな間近で会い、尚且つあんな罵声を浴びせられる日が来るとは思っていなかったが。
"素人が中途半端なまねしたら許さないからなっ!"
リハーサルで自分のライブスタントをパイロット科の学生が勤めると知ったときのシエルの言葉だった。
「くそっ!」
思い出すだけでも腹が立つ。
ライダースーツを装着したまま悪態と共に壁を殴るとガンッと甲高い音がステージに続く廊下で響いた。
ステージからは『俺様の歌を聴きやがれぇぇえ!』というシエルのきめ台詞と共に音楽が聞こえてきた。
ライブが始まったのだ。
「こらこら怒ると綺麗な顔が台無しだよ、アルト姫♪」
「誰が姫だっ!!」
宥めるように肩に置かれたミシェルの手をアルトは振り払うと今にも掴みかからん勢いでミシェルを睨んだ。
この友人はアルトの逆鱗に触れるのを分かっていてそれを楽しんでいるのだがら性質が悪い。
「おーこわ。しかしそう怒りなさんなって。」
「ミハエルッ!お前は腹が立たないのか、あんな言われ方して!?」
「そりゃ、立つか立たないかって言われれば腹は立つけどさ、相手は今をときめく銀河の帝王シエル・ノームだろ?仕方ないちゃあ仕方ないんじゃないの?本当にあんなキツイと思わなかったけどさ。」
”帝王”の名の通りシエル・ノームは一般的にも俺様キャラでファンから支持されていた。
だから顔立ちの端麗さに似合わない言葉がでてくることはある程度は予想できていたのだが、それでもいざ目の前にするとミシェルが驚きを隠せなかったのも事実であった。
生でみるシエルはモニターを通すときの倍の美しさで倍の性格のキツさだったのだ、その差が激しすぎる。
「だけど俺はそんなシエルに楯突いたアルト姫にも驚いたけどな~。」
「だってそれは!言われっぱなしはもっと腹が立つだろ!?」
言い訳をする子供のようにアルトがかっと顔を赤らめる。
銀河の帝王を前にしても引けをとらずそれに言い返したのはアルトだった。
”お前こそ、プロなら俺たちが納得いくようなステージ見せてくれんだろうな!”
「さすがアルトだよ。舞台の血が騒いじゃったかな?」
「茶化すな。」
「茶化してないさ。ホラ出番だぜ、銀河の帝王シエル・ノーム様のお手並み拝見と行こうじゃないか。」
アルトの肩をぽんっと叩いてミシェルはそれで何人の女の子を落としたかわからないお得意のウィンクをしてステージに飛び立った。
「あ、おい!」


(歌は・・・確かに上手いな。)
ステージ上空を飛びながらアルトは本日二回目の感心をしていた。
容姿やキャラだけで名前を売っている歌手なんてザラにいる。
だいたいそういう歌手はレコーディングで機械の力を借りているので生のライブになると声が充分に伸びなかったり、酷いときには音を外したりする。
そしてそういう人ほど自分の実力を勘違いしているので高慢な態度をとったりするのだ。
だからアルトはシエルもその部類なのではないか、と疑ってかかっていた。
しかしそれは飛び始めてすぐに誤解であることを知った。
彼の歌声は人を惹き付ける力があるのだ。
シエルの出身のギャラクシーはインプラントが合法なので容姿も歌声もインプラントのおかげなのでは、と言えるかもしれないが彼の売りはインプラントなしだというところだったはず。
それがもし本当ならシエルの実力は相当なものだ。
(あいつ本当に凄かったんだな。)
そうアルトが感心しているところで不意にステージ上のシエルと目が合った。
シエルは何を思ったのかアルトにウィンクすると手にしたピストル型の空気砲をアルトに向けて発射した。
「なっ・・・!!」
空気砲とはいえ中から発射されたハート型の光線にアルトは一瞬態勢を崩し、危く落下しそうになった。
何をするのか、とシエルを上から睨みつけるとさらに彼はアルトを挑発するかのように手を腰元で振って走り出した。
(あいつっ・・・!!何する気だ?)
ムキになってシエルの走った方向にアルトも飛んで行く。
(まさかっ・・・!!)
悪い予感がして、したときにはもう遅かった。
シエルはあろうことかジャンプ台のように張り出したステージからダイブしていたのだ。
(あんのっ・・・馬鹿!)
客席から悲鳴が聞こえる。
このまま落下すればシエルの即死は確実だ。
気づけば体が勝手に全速力でシエルに向かって飛んでいた。
「!!」
一瞬ライブ会場を包むバックミュージック以外の音が途絶えた。
アルトはなんとかシエルの左腕を掴むことに成功したのだ。
「お前どういうつもりだっ!?」
シエルにしか聞こえない音量で怒鳴るとシエルは不敵に笑い次の瞬間腰に付けたターボジェットで浮上してきた。
「なっ、お前それを持ってるなら持ってるでっ・・・!!」
声を荒げて不平不満を言いそうになったところでシエルの細く長い指がアルトの唇に押し当てられた。
「黙って俺の後についてこい。」
得意げな表情でそう告げると音楽に合わせてシエルは勢いよくサビの歌詞を歌い始めた。


結果的に言ってシエルのどっきりスタントがあった『射手座☆午後九時Don't be late 』は大成功に終わった。
あのあと他のスタントパイロットたちも二人のフォローにまわり、ライブ会場を飛び回るシエルたちに会場中が熱狂した。
「おい・・・そんなもん付けてるなら最初から言っとけよな。」
曲がひと段落ついてベース音がバックミュージックのように流れる会場で次の曲の準備に移るために舞台上の鉄筋に着地したシエルの後ろからアルトが不満の声をぶつけた。
またリハーサルのときのようにすごい剣幕で言い返されるのだろうか、と一瞬構えたがアルトの方向に振り向いたシエルは得意げな笑みを浮かべていた。
「どうだ?スリルたっぷり臨場感溢れるライブ、楽しめただろ?」
ビシリと突き出したシエルの人差し指がアルトをとらえる。
「スリルって…おまえなぁ~!っ…~!?」
かっと頭に血が上って何か叫ぼうとしたところで不意に腰を引かれ舞台衣装の軍服姿のシエルの体にぴったりと密着した。
逃れようと腰を捻ったが歌手という職業に似合わずシエルの力はなかなか強いらしくアルトの腰に回された腕はぴくりとも動かなかった。
今日出会ったばかりの相手に行うスキンシップではないことと、男ということを差し引いてもこの美貌であるこが重なってアルトの鼓動が速まった。
「…っぉい…何の…?」
「お前が言ったんだろプロとして”納得のいく舞台みせろ”って。」
作品名:What's about my star? 作家名:kokurou