二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Goodbye My Wings01

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
いつからなんてわからない。
いつの間にか彼から目が離せなくなっていた。



早乙女アルトとシエル・ノームが出会ったのは数週間前。
シエルは同性のアルトから見ても衝撃的な容姿の持ち主だった。
ブロンドに近いベビーピンクの髪、肌理の細かい肌、通った鼻筋、ネイビーブルーの瞳に釣り上がった眉は挑戦的で少しキツイ印象も与えるが逆に彼の魅力を一層際立たせる。
すらっと長い手足にしなやかな体のラインは決して華奢ではなく程よい筋肉が模り、形容し難いほど整った容姿を強調する。
しかしアルトがシエルから目が離せない理由はただその容姿だけではなかった。
性格は確かにスター特有の傲慢な部分もあるが彼の場合実力が伴っているので納得せざる終えない。
それよりも普段はその才能と人気で暴君のように振舞うくせに時々見せるしおらしい態度や自信に満ち溢れた瞳にふとした瞬間に浮かべる寂しさ、それが普段は決して誰にも見せないシエルの脆さのような気がしてアルトの胸にわだかまりとして残った。
そしてそんなシエルの表情を見るたびにアルトの中に何か込み上げてくる感情があったのも確かだ。


「シエルッ!」
病室の扉を開けるとちょうど点滴を通したシエルがベットの上で上半身を起してグレイスと何か話しているところだった。
「お前っ大丈夫なのか!?ライブ中に倒れたって!」
戦闘からマクロス・フロンティアに帰還した途端にその知らせを聞いて急いでここまで来たアルトの息は絶え絶えだった。
「五月蝿い、下僕アルト。」
「な・・・!!俺はお前の下僕じゃないって言ってるだろ。」
しかしそんなアルトの様子にも関わらずいつも通り憎らしい言葉を投げつけてくるシエルに対して内心アルトはほっとため息をついた。
「それじゃシエル、今日は安静にしてるのよ。」
シエルの脇でパイプ椅子に腰掛けていたグレイスが傍らのブレラの袖をひっぱって退出を促すとちょうど今病室に入ってきたばかりのアルトとすれ違いになる。
「シエルがベットから抜け出さないようにちゃんと監視しててね。」
グレイスに念押しされるが不満そうな目で訴えてくる本人を目にしてアルトは少し言葉を詰まらせる。
するとグレイスの後ろを歩いてきたブレラにガンッと肩をぶつけられた。
「・・・っぃた!」
ブレラは何も言わなかったがその行為がわざなのは明らかで、さらにブレラは蔑むよな目でアルトを一瞥してドアの方へ向かう。
アルトはイラっとして思わずブレラを制止しようとしたが、それよりも早く病室のドアがパタンと閉まった。
(何なんだよあいつ・・・!!)
「ブレラには構うな。あいつ俺様の下僕が二人もいるのが気に食わないんだ。」
シエルの声にアルトははっと振り返り、彼のもとに歩み寄る。
「お前もう起き上がって大丈夫なのか?」
それは今日マクロス・フロンティアで開かれたライブ中に倒れたこと指していた。
「あー、こんなのただの貧血だ。」
「ただの貧血で血は吐かないだろ!?」
何でもないと飄々と言い切るシエルに対して思わず語尾が強くなるのを止められなかった。
倒れたシエルの舞台衣装は紅い血に染まっていたと、ここに来るまでのニュースで聞いていたのだ。
それに本人や関係者は疲労と言い張っているが実は何か重い病気なのでは、ということも。
「血?あー、それがせネタ。次の曲に使おうと思ってた血糊を間違ってばら撒いただけなんだけど、それを血と間違ったスタッフが大騒ぎしちゃってさ。」
「血糊って・・・それホントかよ?」
半ば信じられないと眉を顰めるとシエルは面白がるようにニッと口を三日月に曲げた。
「あれ、もしかして俺の心配とかしてくれちゃうのー、アルト君が?」
「からかうなよ!心配して悪いかよ!?」
ここに来るまでの間アルトは気が気ではなかった。
一部の報道では意識不明の重態だという話さえでていて背筋がぞっと凍るのを止められなかったのだ。
病院までの道のりがやけに遠く感じられて、その間嫌な想像ばかりが膨らんで、ふと自分の母親が亡くなったときのことを思い出していた。
そしてこのまま彼を失うのではないか、とさえ思ったのだ。
だから幸い何もなかったにしろそれをネタにからかわれると大声を出さずには居られなかった。
「・・・ごめん。」
そんなアルトの様子に目を見開いて驚いたシエルは一瞬言葉を失っているようだったが、すぐに視線を落としそう言った。
シエルの手がぎゅっと掛け布団を握り締めたのを見てアルトも言葉を詰まらせた。
「・・・心配、したんだ。本当に。」
「うん。だから、心配かけてごめん。」
俯いたまま謝ったシエルの表情は見えないがきっと彼は母親に怒られた子供のような表情をしてるに違いない。
普段は王様気取りでアルトを振り回してばかりなのにたまにシエルのこうした意外な一面を見せられるからアルトはシエルを憎めなかった。
だから言ってこういうときのシエルにどう声を掛けるべきかアルトにはまだわからず、二人とも言葉を詰まらせるようにじっと黙りこんでしまった。
「突っ立ってないでさ、ここ座れば?」
それから暫く沈黙が続いて幾分空気が重くなったときそう切り出したのはシエルだった。
アルトがシエルの指示したとおりベットの脇に腰掛けると二人の肩が触れるか触れないかの位置まで距離が縮まりシエルの長い睫毛が横からちらりと見えた。
「でさ、お前貧血で倒れたんだろ?働きすぎじゃないのか?」
「そんなことはない。けど、今回は体調管理ができてなかった俺の失態だ。」
二人の身長はシエルが少し高いくらいであまり変らない。
だからアルトのすぐ傍でシエルの落ち込んだ横顔が見える。
まただ。
今日のシエルはどこかおかしい。
そうは思うのにその原因がいまいち掴めない。
だから何と声を掛ければいいのかわからず言葉に迷っているとふとアルトの肩にシエルの頭が乗せられた。
「・・・どうしたんだよ?」
初めて出会ったときからそうだが、シエルはスキンシップが多い。
何かに付けては誰かに触りたがるのだ。
だからグレイスが座っていたパイプ椅子ではなくすぐ隣に座るようにシエルに指定されたときからこうなることは予想できていたので、シエルの頭がアルトに預けられても特に驚きはしなかった。
最初の頃こそ人にべたべた触られるのが慣れない上、同性にしては綺麗すぎるシエルにアルトは戸惑ったものだが今はもうそれも慣れっこだった。
シエルと一緒にいるうちに彼がこうして人肌を恋しがるのはその出生や周りの環境に関係しているのではないかと納得もできた。
それにこうしてシエルに触れられるのは不快な感じはしない。
寧ろ肩越しに伝わるシエルの体温がアルトには心地よかった。
「お前は死ぬのが怖いか?」
「何だよ?突然。」
唐突に投げかけられたシエルの質問の意図がわからずアルトは怪訝そうに聞き返す。
「だってお前はパイロットで軍人だろ?戦闘に出ればいつ死ぬかなんてわからないだろ?」
「それは・・・まぁそうだな。」
「戦闘に出るたびにいつも死と隣合わせで怖くないのかよ?」
作品名:Goodbye My Wings01 作家名:kokurou