Goodbye My Wings01
アルトには何故シエルがそう尋ねてくるのかわからなかった。
また先ほど感じた違和感が胸の奥から込み上げてきて何か聞かなければならないものがあるような気がしたのだが的確な言葉が見つからず、返事にも困っているとすとんとシエルの頭がアルトの膝元に落ちてきた。
「・・・ぉい!」
「やっぱいいや、今の忘れて。で、俺は眠い。ので寝る。」
「寝るってお前・・・っ!」
「いいだろ?お前は俺の下僕なんだから。」
いくら金で雇われているとはいえ流石に異議がある。
「それに・・・お前に触れてると凄く、落ち着くんだ。」
だがそれもシエルのその言葉とともにぎゅっとズボンを握られるともう何も言えなくなる。
だってこうしてシエルに触れていると落ち着くのはアルトも同じだったから。
「仕方ないな。」
ため息交じりにと呟くとすでにシエルは瞳を閉じて寝息を立て始めていた。
ベビーピンクの髪に手を伸ばしそっと撫でてやるとふわふと手に絡み付いて猫のみたいだ、とアルトは思った。
何かもっと聞かなければならないことがあったはずなのに病室の窓から見える夕焼けを最後にアルトも瞳を閉じた。
きっとこのときの俺はまだ何もわかっていなくて。
寝心地なんて決してよくない膝元で子供みたいに眠る彼が愛おしいと思うだけだったんだ。
to be continued...
作品名:Goodbye My Wings01 作家名:kokurou