こらぼでほすと 襲撃11
誰かに、そう言ってもらえたら、そういうもんだとティエリアは思うだろう。ロックオンは、それでも、気持ちの折り合いをつけるのに二ヶ月もかかったが、ティエリアは、その点では単純だ。側で支えてやれないが、こういうフォローはしてやれる。そして、この言葉を口にすることで、自分も実感していけると思った。
「そうだな。それは、いいかもしれない。・・・一ヶ月ほど滞在するつもりだから、その間に、さんざん噂してやろう。」
「おう、してやれ、してやれ。・・・そしたら、あっちも噂して、おまえさんもくしゃみをするかもしれないぜ? 」
そう言うと、ティエリアもおかしそうに笑った。そして、ロックオンも自分の言葉が、腹にストンと落ち着く。
アレルヤはどこかで生きている。
ただ、逢えないだけだ。
いつか、また、戻って来る。
この呪文を唱えていればいい。以前だって、マイスター全員が揃っていないことも多かった。各人が、単独で動くことも多かったから、顔を揃えないのが半年なんてこともあったのだ。
ぎゅっと抱き締めあって、それから、ティエリアは横に座り込む。部屋に来る前に、ドクターから経過の説明は受けた。ようやく落ち着いたところで、まだまだ予断は許せないと言われた。精神的に参ってしまった親猫は、その所為で、ずっと寝込んでいたのだ。「できるなら、こういう事態は知らせないようにして欲しい。」 と、言われた。組織内部のことは、楽しいことや日常だけ知らせればいい、それ以外のことは、何も伝えないようにしようと、ティエリアも決めた。アレルヤは、いつか取り戻す。無事だったことを報告できれば、親猫も安心する。
テーブルには、コスモスが溢れるように飾られている。季節ごとの花が、心を和ませるな、と、思った。たぶん、この気持ちは、帰れる場所だからだ。
「フェルトが心配していた。」
「適当に誤魔化しとけよ、そういうことは。」
「歌姫のメールは、組織宛だから誤魔化しようがない。・・・たぶん、フェルトも、俺の後で休暇を申請するだろう。」
「・・やれやれ・・・まあ、いいよ。今度は、俺が連れ出して楽しませてやれるだろう。そういや、おまえさんも、だな。」
「俺は、あなたの監視に降りて来たんだ。」
なぜ、うちの子猫たちは似たようなことを言うのだろう。そういう名目で降りて、休暇を楽しめばいいのだが、その融通がない。降りて来たことは、スタッフもわかっているから、適当に連れ出してくれるだろう。
「あなたが日常生活を送れるまで回復させますからね。覚悟してください。」
「なんの覚悟だよ? 」
俺の指示に完璧に従う覚悟ですよ、と、紫子猫が笑いながら睨むと、お手柔らかに、と、親猫も笑っている。
作品名:こらぼでほすと 襲撃11 作家名:篠義