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こらぼでほすと 襲撃11

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 鬱憤は、肉体労働で解消とばかりに、『吉祥富貴』のMS組も、やっぱり参加している。それで、ヒルダたちの持分が軽くなったのだ。これで、オモテとウラ社会両方での王留美の信用は失墜した。しばらくは、静かにしているだろう。いい見せしめにもなったので、こちらも、これで沈黙する。ラクス・クラインに手を出すと、こういう目に遭うというデモンストレーションにはなったからだ。ウイルス自体は、愉快なおちゃらけだから、本気でないとわかっているだろう。本気なら、殺人ウイルスでもシステムクラッシャーでも、思いのままのものを送ることは可能だし、それは、世界も理解しているからだ。
 唯一、こちらで被害者だったのは、ハイネで、「イネイネちゃんって・・・俺、そんなねちっこい性格じゃねぇーよ。」 と、飲んだくれていたぐらいのことだ。



 不眠で体力を削られて、しばらく医療ポッドに入っていたロックオンが、ようやく落ち着いたのは、すでに秋の初めだった。とはいっても、まだ、体調は戻らないから、本宅で寝込んでいる。毎日のように、誰かが顔を出しているが、顔色はよくない。こればかりは、自分で乗り越えるしかないから、じじいーずも顔を出すだけで説教しているわけではない。
「うちで静養するかい? 」
「いいえ、まだ無理みたいです。・・・すいません。」
「謝ることじゃないさ。気持ちの整理がつくまで、ゆっくりしておいで。」
 アレルヤは、今も、行方不明のままだ。それが、気持ちを落ち着かせない。生きているとはわかっているが、どういう状態かわからないのが、不安だ。
「どっかで、単独ミッションをこなしているとでも思えればいいんだがね。」
「いや、頭では分かってるんですよ。・・・どうせ、組織にいても何ヶ月かに一度しか逢わないんだから、そう思ってればいいんだけど。」
「うん、そういうことだね。」
 トダカは穏やかに、そう諭すだけで、それ以上の事は言わない。マイスターだとバレるヘマをしたのは、アレルヤで、その責任はアレルヤが負うものだ、と言いたいところは抑えている。動ければ、自分でどうにかするだろうロックオンにとっては、それは慰めにならない。
「アマギが来週、顔を出すよ。そろそろ、梨の季節だから、それを持ってくるんだ。」
「梨ですか。・・・そうか、もう、そんな季節なんですね。」
 梅雨明けから、秋まで季節を、ひとつ飛ばしてしまったんだな、と、ロックオンは笑う。歌姫との会話は覚えているが、それ以降が、かなり怪しい。あの後、安定剤と催眠剤の世話になっていたから、記憶があやふやで時間経過も把握できなかった。回復が遅いのは仕方がないが、ここまで神経がぐだぐたになるのは意外だった。
「起きたいと思ってるんですが、なかなか。」
「そりゃ、食事すら摂れないのに起きられるわけがない。・・・今までなら、行動することで解消させていた不安が、解消できなくて眠れなくなるんだろう。折り合いをつけるのは、自分だ。そこまでは、日にち薬だからね。」
 そろそろ、出勤だから行くよ、と、トダカは立ち上がる。こんなふうに、じじーいずたちは焦らず、気持ちの折り合いをつけるようにと諭していく。どうしたって動けないのだから、そうするしかないのだ。こればかりは、即効で効く言葉も薬もないから、時間をかけるしかない。



 そろそろ、秋も終わりそうだという頃に、珍しい客がやってきた。どうにか食事も少し摂れるようになって気持ちも落ち着いてきたところで、今日は加減が良くて、ソファに座って差し入れの雑誌を捲っていた。
 扉が開いたから、そちらに顔を向けたら、紫子猫が立っていた。つかつかと歩み寄って来て、じっと顔を睨んでいる。きっと、悩んだり不安になったり大変だったろうな、と、ロックオンは、その表情を見て思う。
「大丈夫か? 」
「それは、俺の台詞だ。・・・歌姫から、あなたが寝込んでいると報告されて・・・」
 時間がかかったのは、ティエリアのほうの事情だった。歌姫は、ロックオンにロストの説明をして、すぐに連絡したのだが、組織の仕事が忙しくて時間を作れなかったのだ。だが、やれることはやってきたから、次の段階に移るまでの時間を休暇にできた。
「俺は、なんともないよ。・・・それより、大変だったな? 何も助けてやれなくて申し訳ない。」
「なんともないだと? その顔色で、それを言うのか? あなたはっっ。」
 明らかに痩せて顔色も良くないのに、なんともない、と、言われたって納得できない。きっと、アレルヤのことを聞いて心配した結果だ。あれから三ヶ月もして、この状態ということは、どういうことか、ティエリアにはわかる。
「いや、回復がな。遅いからで、気持ちとしては落ち着いてんだよ。おまえこそ、痩せてるじゃないか。メシぐらい、ちゃんと食え。」
「その言葉、そっくり、あなたにお返ししますっっ。どうせ、あなたのことだ。あの男のことを心配して眠れなくなったに違いないっっ。」
「おまえさんだって、そうだろっっ? 一人で仕事にかまけてたんだろうがっっ。」
「忙しいのは事実だ。俺がやらなきゃ、誰がやるって言うんですっっ。刹那は、放浪の旅に降りたし、あのバカは行方不明だ。トドメに、あなたはリタイヤときている。俺しかいないんですっっ。」
「だからって、そんなになるまでやるこたぁねぇーって言ってんだよ。」
「うるさいっっ。あなただって、そんなになるまで心配しなくてもいいんですっっ。」
 どちらも声を荒げて怒鳴りあったら、息が切れた。はあはあと肩で息をしている相手を見ると、今度は笑いがこみ上げてくる。
「それだけ怒鳴れりゃ上等だ、ティエリア。」
「あなたこそ、もっと酷いのかと思ってました。」
 いや、もう限界と、ロックオンはソファに凭れこむ。久しぶりに大声を出したから目の前がクラクラしているが、気分はいい。
「おかえり、ティエリア。」
 そう言って両手を広げたら、躊躇なくティエリアも飛び込んでくる。どちらも、同じように心配したのだ。それがおかしくて笑えてしまう。
「ただいま、ロックオン。・・・刹那は、どうしていますか? 」
「梅雨頃に出て行ったきりだ。おまえのほうに連絡はないのか? 」
「こちらにはありません。緊急回線のみ応答するということですから。」
「あんのぉ鉄砲玉は・・・一人で大変だっただろ? 」
「いえ・・・・まあ、フォローしてくれるバカが居ないので、仕事が増えて大変でした。あなたにも、心配をかけてしまった。」
「バカ、心配ぐらいさせてくれ。」
 強くなったな、と、ティエリアの言葉に微笑む。以前なら、こんなふうに言わなかっただろう。だが、その呼び方はいただけないな、と、提案する。
「なあ、ティエリア。この間、悟浄さんがいいこと教えてくれたんだけどな。・・・居ないヤツのことを噂していると、当人がやってきたりするんだと。だからな、バカとか呼んでないで、アレルヤって呼んで、ここで悪口言ってやろうぜ。そしたら、ひょっこり戻って来るかもしれないからな。・・・あいつ、きっと、俺らが噂ばっかしてたらクシャミするぜ? 」 
「・・・ロックオン・・」
「居ないだけだ。そのうち、逢える。だから、ミッションで離れてるんだと思ってればいいんだ。」
作品名:こらぼでほすと 襲撃11 作家名:篠義