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暴く者と暴かれる者

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※オリキャラが出てきます。序でとばかりにキスもしてたりします。
 そういうのが苦手な方はご注意下さい。





 気を利かせてくれたのだろう。現にその通りだったのだから、王泥喜には反論のしようもない。
 このままじゃ一生女を作るのは無理だと言われた時には流石に余計なお世話だとも思ったし、何だかんだで充実した毎日を過ごしていた自分には、不要だとも思った。けれども好意を無碍にするのは憚られ、こうして実際来てみると、久々に羽を伸ばせて楽しい時間を過ごせたのもまた事実である。
 然し、今回のこの集りの本当の目的を考えると、どうにも胃の腑が重たくなる。
 友人達が言う様に確かに出会いという出会いは無く、多分これからも期待出来そうにない。更に自分はどうにも友達止まり――早い話がイイ人で終わってしまう事が常であり、本来ならばこういう場を作ってくれた友人達には感謝しなければならないのだろう。寧ろ自身の年齢を考慮すると多少はがっついても良いのかもしれない。
 唯あるまじき事に、色んな意味で、そしてある意味充実し過ぎている毎日は、王泥喜にそういう感覚を根こそぎ取り払ってしまった。そこまで立ち回る程の余裕がないとも云える。
 そんな王泥喜を心配――半分は面白がっていたとしても――した友人達は、秘密裏に計画を練り、断れない状況を作り出した後で連絡を入れるという周到さと連携プレーを見せ、会うだけ会ってみろという身にもならないアドバイスだけを残して早々に消え失せた。実に友達想いな事である。
 そうして王泥喜の目の前には系統的には清純派と云える、ぱっちりとした目が印象的な小柄で可愛らしい女性だけが残され、そのまま放っておく訳にもいかず一日を彼女と過ごす事になってしまった。
 だが王泥喜とて男である。世辞抜きで可愛いと断言出来る、見目の良い女性を隣に連れて歩くのは吝かではない。そして彼女はとても聞き上手であった。お陰で会話が急に途切れるという事もなく、気まずい思いをしなくて済んだ。決して会話のレパートリーが豊富ではない自分にとって、これは救いだった。
 そんな訳で始終和やかな雰囲気で一日を過ごし、気持ち良く互いに帰路へ着こうというその時、予想外の事が起きた。彼女が動いたのだ。
 仄かな温度が熱を分け合う様にやんわりと触れる。重なってすぐ離れたそれは、もう一度その感触を味わう様に再度触れてきた。
 意外と積極的だったらしい。人は見かけによらないものだ。王泥喜は固まったまま、ぼんやりと分析する。
 やわらかな唇が誘う様に王泥喜の唇を甘く食み、軽いリップ音を残して静かに離れた。赤いふっくらとした唇が矢鱈と印象的で目に付く。呆、とそれを眺めていると、彼女が少し恥ずかしげにコトリと首を傾げ、上目で見るその表情に―――何故だか有り得ない人物が重なって見えた。

 そこから先は、余りの衝撃故か、良く覚えていない。気が付けば家のベッドで突っ伏しており、成歩堂の訝しげな視線を頭がきちんと認識した時には、いつの間にか何時もの様に事務所へと勤務していたのである。

 それ程昨日の一件が衝撃的だったのか、と問題の場面を思い起こそうとして――慌てて首を激しく左右に振って打ち消す。王泥喜すら未だ気付いていない、とんでもない事実が掘り起こされそうだったからだ。それは非常に拙い気がする。
 再度ぶるん、と頭を振ったところで、妙な顔をしている成歩堂と目が合った。一連の王泥喜の行動を全て見ていただろう彼は、若干引き気味で窺う様に問うてきた。

「オドロキくん、キミ本当に大丈夫?なんだか調子悪いみたいだけど」

 探る様な視線に僅かに気圧されて、動揺しつつも王泥喜は平静を装い、なんでもないとでもいうように応えを返す。

「いえ、大丈夫です。気にしないで下さい」
「ふうん、なら良いけど。…ああ、そういや昨日はどうだったの?デート」

 これにはさしもの王泥喜も動揺を隠せなかった。目に見えて慌てふためく王泥喜を余所に、成歩堂は如何にも良く分かってませんと云わんばかりの態度で小首を傾げて、無言で次を促してくる。
 ―――なんて性質の悪い男だろうか。王泥喜は内心舌打ちする。流石は恐怖のツッコミ男といったところか、その切り口は容赦が無い上に的を外さない。話題を逸らすのは途轍もなく難儀しそうだ。
 王泥喜は深い溜息を一つ零すと、質問に応えるべく口を開いた。

「まあそれなりに楽しかったですよ。可愛い子でしたし。……って、なんで成歩堂さんがその事を知ってるんですか!」

 話しながらふと浮かんだ疑問をそのまま言の葉にのせる。この件は王泥喜自身、ギリギリになってから聞かされたものであり、成歩堂はおろか、彼の娘であるみぬきにさえ話していないし、話す暇すらなかったのだ。仮令その機会があったとしても、ひた隠しにしていただろうことは明白だが、それはさておき、それを何故彼が知っているのだろうか。
 疑念は顔に出たらしい。苦笑を携えた成歩堂が、眉間に皺、というどうでもいいお節介を焼いた後、更にどうでもいい口調で見たんだよ、とだけ告げた。

「見た?」
「うん、いつもの店に例のヤツが置いてなくてさ。でも何故かその時は無性に飲みたくてね。ちょっと遠出になるけど、まあ最近動いてないし、散歩がてら良いかと思って出掛けたら――」
「俺が、居た」
「そう。声を掛けようと思ったんだけど、楽しそうに話してたみたいだから、邪魔したら悪いかなと思ってその場をそのまま去ったけど」

 可愛い子だったよね、とにこやかに笑いながら話されて、どうにも居心地が悪い。尻の辺りがむずりと疼いて、王泥喜は僅かに身動ぎする。

「それで?どうなの?」
「―――は?」
「あの子。チラっとしか見てないけど、結構レベル高かったよね。オドロキくんもスミに置けないなあ」

 ああいうのが好みなんだ、と茶化す様に言われて、カッと血が上る。戦慄いた唇は中々思う様に言葉を発せなかったが、それでも王泥喜は口を開いた。

「違います。あれは、俺の友達が勝手にセッティングしただけであって。俺はギリギリになってその事を聞かされて、だから放って置く訳にもいかなくて、だから…その、好みとかそういうんじゃ…」
「違うの?」
「いや、確かに俺には勿体無いくらい可愛い子だな、とは思いましたけど。でも、そんなんじゃないです」
「でも一応好意はある訳だ。じゃあ別に良いじゃないか。経緯はどうであれ、向こうも来たって事は、それなりにキミに興味を抱いてる訳だろうし。良かったね、オドロキくん。可愛い彼女が出来て」
「だからっ!違いますって!…本当、そういうの止めて下さいよ。俺が苦手なの、知ってるでしょう?……っ大体!成歩堂さんこそどうなんですか!」

 ビシリと突き付ける様に人差し指を向けると、対して言われた相手はきょとりとした顔を王泥喜に向ける。僕?と自身を指差しぽかんとしている成歩堂を見て、今だと云わんばかりに畳み掛けた。

作品名:暴く者と暴かれる者 作家名:真赭