陽だまり
元親は、自分の例えに可笑しいといった顔で笑う小十郎を見て、呆れながらも釣られて笑った。
それから少し、二人は明日の予定を話し合った。
そして、小十郎は政宗の元に戻るべく見張り台を降りる。
小十郎は梯子に手を掛けながら元親に言う。
「てめえも、何時までも其処にいると、政宗様と同様に寝込んでしまうぞ」
まるで、子供を叱るような言い方に元親は苦笑いの顔でニヤニヤと返す。
小十郎の姿が見張り台から見えない位置にまで降りる。
元親は、何故だかほんの少しだけ寂しさを覚えた。
元親は、見張り台にゴロリと転がると目の前に広がる月夜の空を眺める。
その時、下に降りた小十郎が元親に声を掛けてきた。
「長曾我部」
元親はその声に下を覗き込む。
「今、いい例えを思いついたぞ、てめえは『陽だまり』だ。」
どうだ、と云わんばかりの自信に溢れた顔でそう言うと小十郎は船室に戻っていった。
「なんだぁ?兄さん」
元親はそんな小十郎を不思議なものを見たように見送る。
そして、またゴロリと転がりなおすと、月を見ながら言った。
「はぁ、『陽だまり』かぁ・・・・まぁ、・悪くはねぇなぁ・・・はは・・」
寒さの緩んだ空気が心地よい、しばらく目を瞑り波の音に包まれる。
だが、元親はスクッと立ち上がると梯子に手を掛けた。
「ずっとここに居ると、叱られるからなぁ」
そう、1人呟くと梯子を降りながら、小さく笑った。