こらぼでほすと アッシー1
「あなたは、ゆっくりと養生していてください。」
「何も心配ないからね。ゆっくりしててね? 」
それを、ロックオンに告げた相手は、心から、そう願っての言葉だ。けっして悪意はない。むしろ、本当に、そうして欲しいと願っている。だが、その言葉を告げられるほうとしては、かなり心に刺さる言葉ではある。どちらも、組織へ帰る時に、必死の様子で告げたそれを、うん、と、頷いて微笑んだロックオンは、彼らが搭乗口に消えてから、暗い目をした。誰にもわからないように、そっと目を伏せて、大きく息を吐き出した。きつい言葉だが、相手の気持ちもわかるから、肯定するしか方法がないのだ。
何も関わるな、と、突きつけられている言葉は、言い換えると、「おまえは無力になったのだから、余計なことはするな。」 と、なる。
宇宙にも上がれない身体では、確かに、何か手伝えるということはない。それは解っているのだが、気持ちは辛い。ハイネは、見送りに付き合って、その光景を拝んだ。どちらにも、「言うな。」 とは、ハイネも言えない。ティエリアもフェルトもロックオンが生きていてくれただけで、よかったと思っている、その気持ちは純粋なものだからだ。
アレルヤロストから四ヶ月、ティエリアが降りてきて、ロックオンの付き添いを一ヶ月した。健康管理をきっちりとして、どうにか日常生活を送れる状態には戻した。
それから、間髪をいれず、フェルトが降りてきて、寺へ戻ったロックオンの傍についていた。こちらも、ロックオンの手伝いをして、なるべく無理させないように心を砕いていた。フェルトは二週間して、戻ったが、その後、やっぱり、ロックオンは、ちょっと弱った。そのため、寺へは返さずに、お里と化しているトダカ家に暮らしている。
「シン、レイ、おまえら、洗濯物が溜まってるなら持って来い。それから、メシも、時間があるなら食べにくればいいぞ?」
トダカ家では、ほとんどやることがないのだが、シンとレイが顔を出すので、ロックオンは、その世話を焼く。
「いいの? 」
「ここだと、暇だからいいよ。どうせ、仕事で店に来るんだから、その時に持ってくればいいだろ? 」
「ですが、あなたは、療養しているのに・・・」
「レイ、多少の運動はしないと、身体が余計に弱るんだよ。おまえら、ふたり分くらいなら、なんともないから遠慮しなくていい。」
トダカ家は、『吉祥富貴』のすぐそばにあるから、店へバイトに来る二人にす
れば立ち寄ることは面倒ではない。それに、ここにいると、店で仕事もしないから、俺も時間を持て余すんだと言われれば、素直にお願いしてくる。どっちも、長いこと、ザフトに居たから、そういうことが面倒になっている。軍にいると、ほぼ、そういう雑用というのは、軍の福利厚生部門がやってくれるから、やらなくていいのだ。食事も、戦艦勤務だと、栄養価の考えられたものが用意されている。
「どうせ、レトルトと出来合いが多いんだろ? 適当に作っておくから、それも持ち帰れ。」
「うぁーん、ロックオン。ありがとーーー。」
「ロックオン、あんまり甘やかしちゃダメだよ? 」
「まあ、いいじゃないですか、トダカさん。俺、寺へも配達したいし、ついでです。」
トダカが、あまり動くな、と、嗜めるのだが、これぐらいなら、と、ロックオンも引かない。何もしないでいるのは、ストレスになるので、あまりトダカも止められない。
「俺、荷物持ちするからさ、父さん。」
「トダカさん、俺が寺への配達は請け負います。」
シンとレイも、そう言うので、まあ、それならいいか、と、トダカも認めた。それに、ロックオンがいるとシンとレイも、頻繁に戻ってくるので、それは、トダカにしても有り難いとは思っている。トダカにしてもロックオンが居てくれると、家に人気があって安堵もする。
「引越ししようかな。」
「はい? 」
「いや、シンたちが泊まるところがね。リビングじゃ辛いだろうから、客間が、もうひとつあるほうが便利じゃないかと思うんだ。」
問題点というのは、トダカ家に客間がひとつしかないところだ。以前は、客間にシンとレイが寝ていたのだが、ロックオンが住み着くと、ひとりあぶれてしまう。あぶれたのは、リビングのソファで寝るということになっていて、そこのところでトダカは苦慮していた。のんびりと飲んだら、そのまま泊まりたいだろうし、それなら、ゆっくり寝られるほうがいいし、かといって、具合のよろしくないロックオンをソファに寝かせたくない。となると、解決策としては、客間を、もうひとつとなる。ちなみに、トダカの私室はベットと資料なんかが目一杯、詰め込まれていて、布団を敷くスペースはない。
「いや、トダカさん。俺は、別に、どこでもいいんで。」
「けど、何日も、シンたちが泊まったら、連日、ソファというわけにもいかないだろ? 」
シンたちが泊まるのは、以前からあったことだ。トダカーズラブの面々も、泊まることがあるし、それなら、もう一部屋あったほうがいい、と、早速、オーナーにお伺いを立てる。もちろん、オーナーも、そういうことでしたら、と、ふたつ返事で、同じマンションの間取りの広い場所を提供してくれた。
すぐに、トダカーズラブの面々がやってきて、瞬く間に引越しは完了した。ひと部屋は完全に、ロックオンの部屋ということにしたので、広い和室の客間が、シンとレイの泊まり部屋になった。
「これで、ゆっくりと飲めるよ。みんなも、泊まりに来てくれていいから。」
引っ越し祝いの蕎麦を食べながら、トダカが嬉しそうに言うので、手伝った親衛隊もシンやレイも、「はい。」 と、元気良く返事した。
・・・・やっぱり、寂しいんだろうな・・・・
その横顔を眺めつつ、ロックオンも苦笑する。シンたちが帰って来るとトダカは、ご機嫌になる。長いこと、ヤモメだから寂しいとは思わない、と、言うトダカだが、どこかで、そういう気分もあるのだろう。だから、わざわざ、自分なんかのお里になってくれているのだろうとも思う。
「ロックオン、今年は、こちらで過ごすといい。たまには、私と年越ししてくれないか? 」
「ええ、それは構いませんが・・・・刹那が戻らなかったら、ということでいいですか? 」
刹那が梅雨時に、世界放浪の旅に出て、そろそろ五ヶ月だ。エクシアの整備のことを考えたら、半年ぐらいで戻るだろうと予測している。そうなると、刹那とマンションで過ごすことになるだろう。
「刹那くんか・・・そういえば、そうだな。そろそろ戻るかもしれない。別に、私にとったら、刹那君は孫みたいなものだから、一緒でもいいさ。」
「いや、人数的に無理ですって。」
年越しには、シンは、こちらに戻って来るだろうし、親衛隊の独り者たちも戻って来る。レイは実家のあるプラントへ戻るかもしれないが、それでも客間は満杯になる計算だ。
「寝るのは、あちらでもいいけど、年越しは一緒にしよう。それなら、いいだろう? 」
「手伝いはさせていただきます。お里ですからね。」
それだけの大人数だと、いろいろと準備も大変だから、それには参加するつもりだ。
「トダカさん、孫にはお年玉です。」
アマギが冗談で、そう言うと、「そうだな。」 と、トダカも笑っている。
「何も心配ないからね。ゆっくりしててね? 」
それを、ロックオンに告げた相手は、心から、そう願っての言葉だ。けっして悪意はない。むしろ、本当に、そうして欲しいと願っている。だが、その言葉を告げられるほうとしては、かなり心に刺さる言葉ではある。どちらも、組織へ帰る時に、必死の様子で告げたそれを、うん、と、頷いて微笑んだロックオンは、彼らが搭乗口に消えてから、暗い目をした。誰にもわからないように、そっと目を伏せて、大きく息を吐き出した。きつい言葉だが、相手の気持ちもわかるから、肯定するしか方法がないのだ。
何も関わるな、と、突きつけられている言葉は、言い換えると、「おまえは無力になったのだから、余計なことはするな。」 と、なる。
宇宙にも上がれない身体では、確かに、何か手伝えるということはない。それは解っているのだが、気持ちは辛い。ハイネは、見送りに付き合って、その光景を拝んだ。どちらにも、「言うな。」 とは、ハイネも言えない。ティエリアもフェルトもロックオンが生きていてくれただけで、よかったと思っている、その気持ちは純粋なものだからだ。
アレルヤロストから四ヶ月、ティエリアが降りてきて、ロックオンの付き添いを一ヶ月した。健康管理をきっちりとして、どうにか日常生活を送れる状態には戻した。
それから、間髪をいれず、フェルトが降りてきて、寺へ戻ったロックオンの傍についていた。こちらも、ロックオンの手伝いをして、なるべく無理させないように心を砕いていた。フェルトは二週間して、戻ったが、その後、やっぱり、ロックオンは、ちょっと弱った。そのため、寺へは返さずに、お里と化しているトダカ家に暮らしている。
「シン、レイ、おまえら、洗濯物が溜まってるなら持って来い。それから、メシも、時間があるなら食べにくればいいぞ?」
トダカ家では、ほとんどやることがないのだが、シンとレイが顔を出すので、ロックオンは、その世話を焼く。
「いいの? 」
「ここだと、暇だからいいよ。どうせ、仕事で店に来るんだから、その時に持ってくればいいだろ? 」
「ですが、あなたは、療養しているのに・・・」
「レイ、多少の運動はしないと、身体が余計に弱るんだよ。おまえら、ふたり分くらいなら、なんともないから遠慮しなくていい。」
トダカ家は、『吉祥富貴』のすぐそばにあるから、店へバイトに来る二人にす
れば立ち寄ることは面倒ではない。それに、ここにいると、店で仕事もしないから、俺も時間を持て余すんだと言われれば、素直にお願いしてくる。どっちも、長いこと、ザフトに居たから、そういうことが面倒になっている。軍にいると、ほぼ、そういう雑用というのは、軍の福利厚生部門がやってくれるから、やらなくていいのだ。食事も、戦艦勤務だと、栄養価の考えられたものが用意されている。
「どうせ、レトルトと出来合いが多いんだろ? 適当に作っておくから、それも持ち帰れ。」
「うぁーん、ロックオン。ありがとーーー。」
「ロックオン、あんまり甘やかしちゃダメだよ? 」
「まあ、いいじゃないですか、トダカさん。俺、寺へも配達したいし、ついでです。」
トダカが、あまり動くな、と、嗜めるのだが、これぐらいなら、と、ロックオンも引かない。何もしないでいるのは、ストレスになるので、あまりトダカも止められない。
「俺、荷物持ちするからさ、父さん。」
「トダカさん、俺が寺への配達は請け負います。」
シンとレイも、そう言うので、まあ、それならいいか、と、トダカも認めた。それに、ロックオンがいるとシンとレイも、頻繁に戻ってくるので、それは、トダカにしても有り難いとは思っている。トダカにしてもロックオンが居てくれると、家に人気があって安堵もする。
「引越ししようかな。」
「はい? 」
「いや、シンたちが泊まるところがね。リビングじゃ辛いだろうから、客間が、もうひとつあるほうが便利じゃないかと思うんだ。」
問題点というのは、トダカ家に客間がひとつしかないところだ。以前は、客間にシンとレイが寝ていたのだが、ロックオンが住み着くと、ひとりあぶれてしまう。あぶれたのは、リビングのソファで寝るということになっていて、そこのところでトダカは苦慮していた。のんびりと飲んだら、そのまま泊まりたいだろうし、それなら、ゆっくり寝られるほうがいいし、かといって、具合のよろしくないロックオンをソファに寝かせたくない。となると、解決策としては、客間を、もうひとつとなる。ちなみに、トダカの私室はベットと資料なんかが目一杯、詰め込まれていて、布団を敷くスペースはない。
「いや、トダカさん。俺は、別に、どこでもいいんで。」
「けど、何日も、シンたちが泊まったら、連日、ソファというわけにもいかないだろ? 」
シンたちが泊まるのは、以前からあったことだ。トダカーズラブの面々も、泊まることがあるし、それなら、もう一部屋あったほうがいい、と、早速、オーナーにお伺いを立てる。もちろん、オーナーも、そういうことでしたら、と、ふたつ返事で、同じマンションの間取りの広い場所を提供してくれた。
すぐに、トダカーズラブの面々がやってきて、瞬く間に引越しは完了した。ひと部屋は完全に、ロックオンの部屋ということにしたので、広い和室の客間が、シンとレイの泊まり部屋になった。
「これで、ゆっくりと飲めるよ。みんなも、泊まりに来てくれていいから。」
引っ越し祝いの蕎麦を食べながら、トダカが嬉しそうに言うので、手伝った親衛隊もシンやレイも、「はい。」 と、元気良く返事した。
・・・・やっぱり、寂しいんだろうな・・・・
その横顔を眺めつつ、ロックオンも苦笑する。シンたちが帰って来るとトダカは、ご機嫌になる。長いこと、ヤモメだから寂しいとは思わない、と、言うトダカだが、どこかで、そういう気分もあるのだろう。だから、わざわざ、自分なんかのお里になってくれているのだろうとも思う。
「ロックオン、今年は、こちらで過ごすといい。たまには、私と年越ししてくれないか? 」
「ええ、それは構いませんが・・・・刹那が戻らなかったら、ということでいいですか? 」
刹那が梅雨時に、世界放浪の旅に出て、そろそろ五ヶ月だ。エクシアの整備のことを考えたら、半年ぐらいで戻るだろうと予測している。そうなると、刹那とマンションで過ごすことになるだろう。
「刹那くんか・・・そういえば、そうだな。そろそろ戻るかもしれない。別に、私にとったら、刹那君は孫みたいなものだから、一緒でもいいさ。」
「いや、人数的に無理ですって。」
年越しには、シンは、こちらに戻って来るだろうし、親衛隊の独り者たちも戻って来る。レイは実家のあるプラントへ戻るかもしれないが、それでも客間は満杯になる計算だ。
「寝るのは、あちらでもいいけど、年越しは一緒にしよう。それなら、いいだろう? 」
「手伝いはさせていただきます。お里ですからね。」
それだけの大人数だと、いろいろと準備も大変だから、それには参加するつもりだ。
「トダカさん、孫にはお年玉です。」
アマギが冗談で、そう言うと、「そうだな。」 と、トダカも笑っている。
作品名:こらぼでほすと アッシー1 作家名:篠義