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光彩トッカータ

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「オイオイ、ツナ。なんか酷いこと考えてねぇ?」
 困ったように笑いながら山本がオレの顔を覗き込む。
「ああ、うん……一瞬、全部山本の妄想なんじゃないかって」
「ツナ、容赦ないなー、やっぱおもしれぇ」
 バシバシとオレの肩を叩きながら笑う山本は昔から見てきた山本で、こういう所は全然変わらなくて安心する。するけどさぁ。
「まぁ、それが本当だったとしてもさ、けっきょく獄寺君が心配なことに変わりはないよ、ってかむしろ余計心配って言うか何て言うか……」
「何か、ツナ、そこだけ獄寺に甘くねぇ?」
 言いながらも山本は不満げに眉を寄せる。その仕草が少しだけ獄寺君とダブって見えて、ああ、そうなのかなって初めて思えた気がした。
 獄寺君はオレに自分のそういう話を全然しないけど、京子ちゃんの話を聞いてもらったりはわりとする。いつだって獄寺君はオレに対して真剣だけど、そういう時もやっぱり真剣に答えてくれる。でも、そういうのって自分の考えとか体験談が元になったりするよね? 獄寺君との会話の端々から、大事なひとに対する姿勢みたいなものが垣間見える気がして獄寺君の恋人になるひとはいいなぁと思ってたんだ。山本との対比でそう思ってたってのもあるけど、その羨ましいひとがまさかその山本本人になるなんて誰が思うんだよ。
「もしオレに妹がいて、山本か獄寺君どっちかと付き合うって言うなら、オレは獄寺君を推すね。そういうことだよ」
「流石ツナ、見る目あるなー。その辺の奴等に百人インタビューしたらオレ勝つ自信あるのになぁ」
「何年一緒にいると思ってるんだよ。まぁ、普通は獄寺君と山本が並んでたら、山本に妹を託したくなるよねぇ。知らないって怖いよねぇ」
「まーなー」
 うわ、認めたよこの人。こういう所がリボーンが気に入る理由の一つなのかもしれないなってたまに思う。一瞬、脳裏に傍若無人な赤ん坊の姿を思い描いて、慌ててかき消した。
「でも、妹が居ても獄寺は駄目だぜツナー」
「え、なんで?」
「だって、獄寺オレのだもん」
「……………………………………へー」
 山本がこいう話するのって、珍しいっていうか、実は何気に初めてじゃないかな? でもその初めてがオレの右腕で友達で獄寺君っていうのは、どういう因果なんだろうと思わずにいられない。
「あっ、信じてないだろツナ」
「いや信じるも信じなにも……あれ、でも山本って獄寺君のこと、ちゃんと好きなの……?」
「オイオイ、ツナ、いくら何でもそりゃないだろ」
「だって、獄寺君が山本のこと好きだから付き合ってるみたいな感じだったじゃん」
「誤解だって。まぁ、獄寺のがオレのこと好きだろうなーとは思うけど、オレだってちゃんと獄寺のこと好きなんだぜ」
 胡散臭い。いつもだったら、山本の言うことはあらかた信じられるし、山本の大丈夫だって言葉に何度も助けられてきた。でも、今はあんまり信憑性がない。日頃の行いって大事なんだなー、オレも気をつけよう。
「ホントに〜……?」
「んー、オレ高校ぐらいから獄寺のこと好きだったぜ」
「えっ、そうなの!?」
「うん」
「でも女の子に手当たり次第………………ああ、逆にだからなの?」
 まぁ、それならあの山本のご乱交も分からないでもない……のかなぁ? なんせ相手はあの獄寺君だもんなあ。
 女の子達は気の毒だったけど、そうかと納得する。山本もそう言えば繊細だったんだよな、なんて山本とこうして話すきっかけになったことまで遡ってしみじみとする。
「いや、それは別。色々試したい年頃だったんだよ。ほら、俺も若かったしさ」
 ――――前言撤回。
 山本ってこういう奴だよね。疑惑いっぱいの目で見てるオレに山本は笑いかける。
「まーまー、ツナが心配することないって。案外大丈夫だよオレ等」
 やっぱり山本の言葉にいつもの信頼感はないんだけど、いつも通りであって欲しいなぁとは思う。やっぱりどんな形でも親友達には幸せでいて欲しい。


「いやー、でもまさかツナと獄寺の話する日が来るなんてなぁ」
 グラスに入った氷をカランカランと回しながら話す山本は嬉しそうだった。
「オレの方がびっくりだよ」
「これからも話していい? ってかノロケていい?」
「…………あんまり生々しい話以外なら。あと、獄寺君が憤死しない程度なら」
「いやー、ツナにこんなに思われてるって知ったら獄寺泣いて喜びそうだよな」
「まぁ、この話題に関してだけだけどね」
「でもこの話題は獄寺が嫌がりそうだよな。ははっ、アイツつくづく報われないよなー」
 ……やっぱり獄寺君がオレに傾倒してるの、山本面白くないんじゃないの? ってこういう山本を見ると思ってしまう。口にしたら冒頭に戻っちゃうから言わないけどさ。
 でもそうすると山本は獄寺君のことがちゃんと好きってことなのかな、山本はどの方面にも独占欲を示すことってなかった気がするし。だけどもしそうだとしたら、山本曰くもっと凄い獄寺君ってどうなるんだろう。
 親友の恋愛話はそれなりに聞いてみたいけど、親友達の恋愛話になると微妙だなぁ。ここに至って迂闊な約束をしてしまったかもしれないと思うオレなのだった。





2009.04.14
作品名:光彩トッカータ 作家名:高梨チナ