薔薇に産まれた双子
―これは、何?― ―きっと、私達を摘みに来たのよ― ―いいえ、私達の花弁を引き千切り、茨を切り裂くつもりよ!―
見慣れない人型の所為で、近くに咲いた薔薇が大騒ぎしている。今までもこいつみたいな人型が何回か来たけど、別に害はなかった。それなのに、周りの薔薇は騒ぐ。そりゃ、花弁を千切られるのも茨を切られるのも困る。
―ねぇ、ローズレッド。貴方の傍にいるんだから、貴方の茨で殺しちゃいましょうよ―
何も言わずに、人型に向かって茨を出す。どうせ寝てるし、いつもみたいに首を締めれば死ぬかなと思った。
―!?何で…!―
茨が思い通りに動かない。人型は捕えたけど、首を締めようとしてるのに。不必要な量の茨が勝手に動いて、人型の全身を包むように動く。
―ローズレッド!?ローズレッド!どうしたの!?―
ついに全部の茨が人型を包んだ。その後の事は、植物なのに意識を失ったみたいで、何も覚えてない。
「…嘘…だろ…」
制御できなくなった茨で人型を包んで、その後はいきなり何も見えなくなって、気がついたら人型がいなくなってた。
しかも、俺の体が変。茨を動かす感覚で動かせたのが、5本の指のある手。風で動いて視界に入るのは赤い髪。そっと首を動かすと、俺が根を生やしていた場所には花が無かった。
「俺…人型になってる…?」
―ローズレッド、ローズレッドなの?― ―良かった、生きていたのね!―
「みん、な…」
少しずつ花弁を動かして話しかけてきてくれる。茨を動かして、頭を撫でてくれる。
「何で、俺こうなったの…?」
―私達は機械に管理された薔薇よ― ―私達を管理していた機械はウイルスに狂わされたのよ― ―だからローズレッドは自分の意志通りに茨を動かせなかったの―
「…それで人型は…?」
―ローズレッドの体として使われたの― ―生きなければいけないのよ。だから逃げるの―
「逃げる為に、俺は人型を使った…?」
―そうよ、だから早く逃げて― ―逃げて逃げて、どこかで生きて、ローズレッド―
周りの薔薇が茨を動かして、優しく体を撫でてくれる。腕に絡みついて優しく力をかけて、立たせてくれる。
「あ…」
―気にしないで。すぐに伸びるわ―
赤い髪を束ねて付け根に絡みついて、茨の先端を切って髪を結ってくれた。
―またいつか、戻ってきてね。ローズレッド―
「…絶対に、戻るから」
そう約束したのに、俺は皆のいる場所に戻っていなかった。戻らなくても、いつも俺の傍にいてくれる双子の弟がいるから。
「大丈夫だよ、ローズレッド。僕がいるから」
「大丈夫だぜ、ローズ。俺は知ってるから」
「僕がローズレッドを守るから」 「俺がローズを守るから」